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    CPP

    第11話「ワタシとわたし」窓から覗く光が明るく、外の世界の息を知らせる賑やかな音が聞こえてくる。
    旅行を終えて帰ってきた後、疲れからかいつもより長く眠ってしまっていたようだ。
    少し赤くなった目を軽くさする。
    「うん。もう大丈夫。」
    「ポコ!おはよー!」
    小さな同居人へ元気いっぱいに挨拶をする。

    「なしな?!」
    小さな同居人がその1つのつぶらな大きな瞳を驚きによりさらに大きくさせる。
    「なしなが2人なんだポコ!!」
    「へ?」
    ポコと一緒にクッションへと腰を下ろし、トーストもなにもされていない食パンをむしゃむしゃと頬張るのは紛れもなく自分の姿。

    「ポコ!信じてワタシがホンモノよ!」
    「わ、わかってるポコ!」
    「実は1回言ってみたかったのよね。」

    もう1人のなしな?はポコとなしなが茶番のようなやり取りをしている間もその動かす口を止めない。
    「とりあえずジャムくらい塗りなさいよ。」
    その姿を見たなしなが呆れた様子で冷蔵庫からマーマレードを取り出し一言を告げる。
    なしなが食パンにその黄色い艶々したジャムを塗り、不思議そうに眺めていたが渡されたそれにもう一度かぶりつく。


    ーーーーーーーーー
    「絶対敵の仕業アル。ソイツは倒した方がいいネ。」
    そう共ポジが早々に拳を構えようとする。

    「待ってって!ほら何もしてこないし!静かだし何よりワタシのこと殴れないでしょ?可愛すぎて!」
    共ポジは殴った。なしなを。

    「殴ったわね!お父さんにもはたかれたことないのに!」
    いつも通りなしながうるさく叫ぶ。

    「こんにちは!私セレナーデって言うの!あなたお名前は?」
    セレナーデがなしな(仮)へと声をかけるが視線を返すだけで何も答えることはない。
    「なしなは実は双子だったんだポコ……。」
    「双子なんだフガ?じゃあお姉さんぽいフガ!」
    「たしかになしなと同じ顔なのに大人っぽいかも。」

    「ワタシ一人っ子なんですけど!ばかめだは後で説教よ!!」
    いつも通り楽しい仲間たちをセレナーデが笑顔で眺める。

    「錠前うるさいネ。コイツを倒さないならどうするつもりアル。」
    共ポジはなしなの姿をした何かを既に敵と認定し、拳を1度収めたものの警戒は解かない。
    「なしな…はワタシだし、あっ、じゃあ、この子の名前みかん!みかんジャム美味しそうに食べてたから!!」
    共ポジの質問には掠りもしないなしな提案に共ポジが怒りを通り越して呆れる。

    ひとまずは様子を見るがもしみかんが他に危害を加えようとした時はなしなが責任を持って戦うこと、それを条件に共ポジが変身を解く。

    「えーっとじゃあ、なにする?」
    「私帰っていい?」
    「はい、ダメです!」
    「あほなしな。」
    珍しく何も予定のなかった休日に呼び出されたわかめだの問になしなが即答で返し、わかめだが悪態をつく。
    そんな2人のやり取りの中。
    チャララララ〜ン♪
    セレナーデのスマートフォンから小さく音が鳴る。
    「え〜〜!?はい…はい……。」
    ぐすんとセレナーデがこちらに顔を向ける。
    「今日までの宿題…間違ってるから学校来なさいって……。」

    え〜〜ん!私だって遊びたいのに〜〜〜!そう言葉を残しセレナーデが走り去る。
    「なんだか可哀想だからフガもついて行くんだフガ!」
    そのセレナーデのリュックにフガが入り込んでいった。

    「帰っていい?」
    「ダメです。」
    ーーーーーーーーーーーー

    「なんだかんだ言って共ポは帰んないんだ。それ日本でなんて言うか知ってる?ツンデレって言うんだよ。」
    「我は監視してるだけアル。わねかだ、バカなこと言ってると錠前みたくなるネ。」
    先程共ポジにちょっかいをかけ返り討ちにあったなしなの右頬は小さく赤くなっている。
    「共ポみかん…まで殴ったの?」
    「何言ってるアル?我が仕置きしたのは錠前だけネ。」
    わかめだが後ろから指さす先はなしなと並ぶみかんの左頬。そこにはなしなと似たような小さな赤が見える。
    2人の言葉が止まる。

    「わかめだー!共ポ!はやくはやく!」
    なしなの声にその沈黙が途切れる。

    『私もうやだよ。戦いたくない。』
    『あなたはヒーローなのよ。逃げるなんてそんなの許されない立ちなさい戦うの。』


    「悪くなかったネ。」
    「でもなんか思ったより話重かった……かも。」
    「あんな小さい女の子達が戦うなんてポコぉ…あっ、おいしいポコ。」
    ポコが涙を流してキャラメルポップコーンをなしなに詰め込まれている
    「なしなが観たいって言ったんだからね。」
    「だって〜〜!ね、みかんも面白かった?」
    悪い敵と戦う幼い魔法少女のお話。
    それぞれが感想を言い合う中なしながみかんに声をかける。
    みかんは何も答えずそのなしなによく似た顔の表情も変えることはない。

    2色の混ざったソフトクリームを食べる。
    みかんは食べることは嫌いではないようで差し出された食べ物をもぐもぐ素直に口にする。
    「おんなじ顔って不思議な感じ。」
    「いまさらポコ?」
    「しずかに!」

    「ジャーン!双子コーデ!」
    腕を互いに組み色違いのサマーニットを着てわかめだ達へドヤ顔と無表情で見つめるなしなとみかん。
    「なんかなしなの方足短くない?」
    「一緒よ!ばか!」

    「ワンちゃーん!」
    はふはふと息をするカフェの柴犬へ腕を広げるなしなを通り過ぎ、犬たちが寄るのはみかんの足元。
    「どうして……同じ顔なのに!!」
    「犬は賢いネ。中身の差なのかもしれないアル。」
    「共ポ!!」
    課金アイテム(オヤツ)をちゃっかり両手に装備した共ポジがなしなを見て笑う。

    遊び疲れたポコをカバンに寝かしつけ真っ暗になってまう前に帰ろうと4人で歩く。

    「は〜〜もう!いっつもいいタイミングで来るわね!嫌がら」
    顔をしかめ心底嫌そうな声色のなしなの言葉が終わることなく途切れる。
    「なしな?!」
    わかめだが後ろを振り返るがなしなとみかんの姿はない。
    「皆さん、ごきげんよう。」
    挨拶の言葉と共にウヅゥが姿を表す。
    「ウヅゥ!」
    微笑むウヅゥを共ポジが睨む。

    ーーーーーーー
    何かに吸い込まれたような、その静かな一瞬の衝撃を受けなしなが瞳を開ける。
    「鏡…?」
    目の前に見えるのは自分の背をも超えるいくつもの大きな鏡。
    共ポジもわかめだはさっき目の前に現れたウヅゥと相対してるはず。ワタシもはやくここから出ないと。
    そうおそるおそる目の前の1つに手を伸ばす。

    「だ、め。」
    誰かの冷たい手によってその伸ばした腕を抑えられる。
    その声に起伏はなくただ自分によく似ている。
    闇が暗くその顔を見ることは出来ない。

    「みかんなの?」
    「なしな、ずっ、とみて、た。」
    みかんはその手を離さない。
    「なしな、わらかおすき。いく、なく、たたか、う、かなし、いだ?め?」
    「だから、ね、にげよ?」
    冷たい手がなしなが進もうと足を進めた先とは逆方向にその手を引く。
    冷たい体温がなしなにも伝達していく、けれどそこに悪意は感じられない。
    「そうね、怖いこと嫌なこと全部逃ちゃうのもいいかも。」
    なしながその手を1度握り返す。
    (あ、笑った気がする。)
    顔が見えなくても、その本来瞳があるであろう場所へなしなが自身の瞳を向ける。
    「ありがとう、ワタシの事を想ってくれて。悲しいこと辛いことから逃がしてくれようとして。でもね。今はだめ。」
    (きっと今、どうして?って顔して拗ねてる。)

    「やっぱり戦うのは怖いし、泣いて逃げたいなって思っちゃう時はあると思う。でもねまだワタシ全部途中だから。まだ前を向きたいの。だからね、みかん。」


    ーーーーーーーーーー

    「いい!加減!自分の力で戦ったらどうアル!」

    「え〜私が本気なんて出したら共ポジさん達なんてポイっですよ?それに疲れちゃうので嫌です。」
    ウヅゥはその美しい白い手からいくつもの不気味な人形を放り捨て共ポジ、クレソンへと攻撃を仕掛ける。
    「そろそろ諦めてもらえませんか?どれだけ時間を稼いでも錠前さんは帰ってきませんよ?」

    「なしなは!帰って来る!」
    クレソンがウヅゥへ向かい盾に力を込めて振りかざすがぬいぐるみに阻まれそのままカウンターを受け吹き飛ばされる。
    「わかめだ!」
    共ポジがクレソンの名前を呼ぶ。
    「わかめだ〜熱くなってらしくないんじゃない。もしかしてワタシのこと心配しちゃった?!」
    わかめだを受け止めピースとその黄色い顔隠しの隙間からうざいと称される笑顔を浮かべた錠前の姿がそこにはあった。
    一緒に消えていたみかんと共に。

    「なしな大遅刻ネ。」
    「そーねこれはナシバ奢り確定。」
    「えぇ??!」
    「みかんも何飲むかちゃんと考えておくアル。」
    クレソンと共ポジがいつも通りの軽口を錠前に対して叩き、共ポジが後ろに立つみかんに話しかける。

    「ポコのおすすめはくりーむたくさんなんだポコ!」
    「う、ん。」
    ポコその一言にみかんが声を出し小さく頷いた。





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