Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    @t_utumiiiii

    @t_utumiiiii

    ・オタクの二次
    ・文章の無断転載・引用・無許可の翻訳を禁じています。
    ・Don't use, repost or translate my Fanfiction Novel without my permission. If you do so, I ask for payment.

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🍰 🎈 🎁 🍮
    POIPOI 127

    @t_utumiiiii

    ☆quiet follow

    ※謎時空探偵パロ(1990年代を想定)
    Mr.ミステリーが男やもめのレオ・ベイカーの依頼を受けて失踪した娘の行方を探す二次妄想です(還…パロ)

    リサちゃんがお父さんに連れてこられた礼拝所で、礼拝所のおじさんとちょっと喋ったときの話

    🌷🌷お父さんは、リサの頭が痛くなったり動けなくなったりしたときには、リサを連れて、病院のかわりに教会に行く。
    階段を下へ下へ下っていく“礼拝所”への道は、そのまま地獄に繋がっているような気がして怖いけれど、そこに行くときはいつも、お父さんがリサを抱っこして連れて行ってくれるので、リサは、本当は行きたくないのを我慢している。
    お母さんは時々、リサをちゃんと病院に連れて行くべきだと言ってお父さんと喧嘩をする。お母さんはそんな風に、お父さんみたいにここの人のことを信じていないから、ここに来るときはいつも、お父さんと二人なの。
    リサもお母さんと同じでここにいる人たちのことは信じていない。でもお父さんが信じたいのなら、それは半分くらいは本当のことかも知れないと思うこともある。ここに来て「お祈り」をしたり、「お告げ」を貰ったりするには一人あたりのお金が必要だからリサはいつもここにいるだけだけど、もしお金があったら、リサもここでお祈りをしてみようかな、という気分にもなる。リサのお願いごとは、「お父さんとお母さんに仲良くして欲しい。」それで、みんなで晩ごはんを一緒に食べるの。喧嘩はなしで!

    地下の礼拝所に来ると、リサはまるで病院で検査を受けるときのように、硬い簡易ベッドに寝かされて放ったらかしで、お父さんは何をしてるかというと、あまりきれいな格好をしていない、髭のおじさんとお話をしている。彼の周りはいつもお香の臭いが強すぎて、リサは鼻がツンとして気分が悪くなるし、頭がぼうっとしてしまう。
    「おじさんは、リサのことを治せないでしょう」
    強すぎるお香の臭いで頭がぼうっとしているから、こんなことを言ったら失礼だってお父さんに怒られるのをわかっていても、リサはついそんなことを言ってしまう。
    幸いなことに、お祈りを始めたお父さんには、ベッドに座ったままタイクツをしているリサの失礼な言葉は聞こえなかったみたいだけれど、お父さんが小さく丸まって、まるでのみみたいに背中を丸めてお祈りしているのを退屈そうに眺めていた黒服のおじさんには聞こえたみたい。いつもただでさえ口をひん曲げて、なんだか怖い顔をしているおじさんは、眉を片方だけ引き上げてリサを見下ろしてくる。
    「そ、それで、おっ、おま、お前は、せ、せい、精神病院、に、は、入りたいってか?」
    お父さんは“羊飼い”と呼んでいるそのおじさんは、リサに向かってそう言うと、大人がするにしてはあまりにあけすけに、子供っぽくリサを馬鹿にして、それでも、お父さんがすぐそこでお祈りをしていることを忘れてはいないみたいで、押し殺した声でクツクツ嗤う。それで、「あ、あんな、とっ、ところに、は、入ったら、お、お前の人生なんか、お、おしまいだぜ」とか、「くく、くす、薬漬けにされて、今に、じっ、自分のこともわかんなくなって、クソも何も、垂れ流しになるに決まっている」と、やたらにリサを怖がらせるようなことをつっかえながらぼそぼそ続けた後に、「む、無駄にしてやるなよ」と、そこばかりは、妙に落ち着いた大人らしい態度で続けた。
    「み、見ろよ、ハハッ……あ、あんたの、お、親父さん、親父さんはさ、お前のために、っこ、こんな、は、這いつくばってさ、祈ってるんだから……」
    呆れているのか馬鹿にしているのかの笑い混じりながらにそう言われると、大きな体を小さくして床の上で祈っているお父さんがなんだか可哀想になるけれど、リサは自分の“病気”の治し方を本当は知っている。

    「リサのことをお祈りしたって、仕方がないの」
    リサが思わずそう言うと、“羊飼い”のおじさんは、リサが言ったことを咎める具合に、リサの肩を掴んで軽く揺さぶった。でも、本当のことだもの。それに、馬鹿にするみたいにお父さんのお尻を見下ろすこの人だって、自分のしていることが真実だとは思っていないんだわ。
    「お父さんは、リサが元気になるようにお祈りをする代わりに、お母さんと喧嘩をしないようにお祈りした方がいいの。二人が喧嘩してるのが、私、本当に嫌だわ! 頭が痛くなってきちゃう……」
    「……そっ、そそ、それは、」
    思わず思うままのことを口にしてしまったリサに、“羊飼い”のおじさんは怒ったりはしなかったけど、あろうことか「気の持ちようじゃないか」と、まるで知ったことのように言い始めるので、リサは目を尖らせて無礼なおじさんを睨んだ。
    けれど、それまでリサを足蹴にでもしてやろうか、という具合に上から見下ろしていた大人が、その時に急に屈んで、硬い診療台みたいなベッドに座っているリサと目線の高さを合わせてきたので、リサは、それまでお父さんがお祈りしているお尻を並んで眺めていた距離は変わらないのに、急に不躾に近づかれた気分になって、びっくりして口を閉じてしまった。
    「そ、そこにいるのが、自分じゃないと思えばいい、っか、簡単だろう? “フリをする”んだ」
    「そんなの、いつもやってるの……二人が喧嘩してるときは、リサはリサじゃないの。エマが喧嘩を聞いてるの」
    それでもリサは天井に浮いているだけで、二人が喧嘩してるってことには何も変わりがないから、頭が痛くなるの。とリサが説明してあげると、“羊飼い”のおじさんは疑り深い顔つきで「わけのわからんことをいうガキだな……」とぼやくと、よいしょ、と掛け声をかけて立ち上がる。
    それで彼は、お父さんがまだお祈りをしているのも尻目に部屋の奥に引っ込んでいった。けれど、お祈りの時間の区切りを知らせる鐘も鳴らない内からお父さんに帰ろうとも言えないリサが立ち竦んでいると、奥の部屋に引っ込んでいた“羊飼い”のおじさんはまた戻ってきて、「さっきのさ、も、もっと上手く気を紛らわせるんだな」と言いながら、リサの手のひらに収まるぐらい小さくて、紫色の安っぽい布巾着を渡してきた。中身を見ようとすると、毛の絡んだおじさんの手に遮られる。何でも、それはいけないことらしい。


    その場では気付かなかったけれど、お家に帰ってから、リビングでの言い争いを聞きながら、ごわごわした布の手触りの内側に、乾かした植物のような何かが入っている、みたいな、パサパサした音のするその巾着を仕方なく握っていると、内側から甘ったるいお香のーー礼拝所の臭いがしてきた。あそこでお祈りのときに焚いているお香の欠片が入ってるみたい。この臭いを嗅いでいると鼻がツンとして、気分が悪くなって、頭が痺れてきて、段々眠たくなってくる。「上手く気を紛らわせる」って、こういうことなのかしら。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    @t_utumiiiii

    DOODLE弁護士の衣装が出ない話(探偵と弁護士) ※荘園設定に対する好き勝手な捏造
    No hatred, no emotion, no frolic, nothing.(探偵と弁護士) 行方不明となった依頼人の娘を探すため、その痕跡を追って――また、ある日を境にそれ以前の記憶を失った探偵が、過去に小説家として活動する際用いていたらしいペンネーム宛に届いた招待状に誘われたこともあり――その荘園へと到達したきり、フロアから出られなくなってしまった探偵は、どこからが夢境なのか境の判然としないままに、腹も空かず、眠気もなく、催しもしない、長い長い時間を、過去の参加者の日記――書き手によって言い分や場面の描写に食い違いがあり、それを単純に並べたところで、真実というひとつの一枚絵を描けるようには、到底思えないが――を、眺めるように読み進めている内に知った一人の先駆者の存在、つまり、ここで行われていた「ゲーム」が全て終わったあと、廃墟と化したこの荘園に残されたアイデンティティの痕跡からインスピレーションを得たと思われる芸術家(荘園の中に残されたサインによると、その名は「アーノルド・クレイバーグ」)に倣って、彼はいつしか、自らの内なるインスピレーションを捉え、それを発散させることに熱中し始めた(あまり現実的ではない時間感覚に陥っているだけに留まらず、悪魔的な事故のような偶然によって倒れた扉の向こうの板か何かによって、物理的にここに閉じ込められてもいる彼には最早、自分の内側に向かって手がかりを探ることしかできないという、かなり現実的な都合もそこにはあった。)。
    2791

    recommended works

    @t_utumiiiii

    DOODLE #不穏なお題30日チャレンジ 1(2).「お肉」(傭オフェ)
    ※あんまり気持ちよくない描写
    (傭オフェ) ウィリアム・ウェッブ・エリスは、同じく試合の招待客であるナワーブと共に、荘園の屋敷で試合開始の案内を待っていた。
     ここ数日の間、窓の外はいかにも12月らしい有様で吹雪いており、「試合が終わるまでの間、ここからは誰も出られない」という制約がなかろうが、とても外に出られる天候ではない。空は雪雲によって分厚く遮られ、薄暗い屋敷の中は昼間から薄暗く、日記を書くには蝋燭を灯かなければいけないほどだった。しかも、室内の空気は、窓を締め切っていても吐く息が白く染まる程に冷やされているため、招待客(サバイバー)自ら薪木を入れることのできるストーブのある台所に集まって寝泊まりをするようになっていた。
     果たして荘園主は、やがて行われるべき「試合」のことを――彼がウィリアムを招待し、ウィリアムが起死回生を掛けて挑む筈の試合のことを、覚えているのだろうか? という不安を、ウィリアムは、敢えてはっきりと口にしたことはない。(言ったところで仕方がない)と彼は鷹揚に振る舞うフリをするが、実のところ、その不安を口に出して、現実を改めて認識することが恐ろしいのだ。野人の“失踪”による欠員は速やかに補填されたにも関わらず、新しく誰かがここを訪れる気配もないどころか、屋敷に招かれたときには(姿は見えないのだが)使用人がやっていたのだろう館内のあらゆること――食事の提供や清掃、各部屋に暖気を行き渡らせる仕事等――の一切が滞り、屋敷からは、人の滞在しているらしい気配がまるで失せていた。
    3412