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    @t_utumiiiii

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    @t_utumiiiii

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    ※謎時空探偵パロ(1990年代を想定)
    Mr.ミステリーが男やもめのレオ・ベイカーの依頼を受けて失踪した娘の行方を探す二次妄想です(還…パロ)
    レオ・ベイカーが“羊飼い”に失踪した娘の行方を聞く回です。

    🔥『娘の行方をその“羊飼い”に聞いたのか』という探偵の言葉に背を押されるようにレオが電話をかけると、吃音の男が電話を取った。その男こそが“羊飼い”である。
    羊飼いは身の回りの仕事を、もっぱら自分が養っている孤児にやらせているのだが、レオが電話を掛けたのは夜遅くと言ってもいい時分だった。あの子供らは眠っているのだろう、と、レオは何気なく思い、それから、胸が張り裂けるような心地になって、「なっ、な、何の、っよ、用だ? いっ、いたずらか!?」と、電話越しからも、訝って顔を顰める仕草が思い浮かぶほどありありと怪訝な声が聞こえてきているのにも関わらず、刺すような胸の痛みのあまり、数秒言葉が出なかった。

    リサは、俺の娘は、どこに行ってしまったのか、今どこで何をしているのか、雨露を、冬の霜を凌げる場所にいるのか、恐ろしい思いをしていないか、リサ、リサは、
    「リサが、いなくなったんだ、俺の娘が……先生、リサの居場所を……どうか、どうか…………」
    レオがどうにか声を絞り出した瞬間、電話の向こうは不気味なほど静まり返った後、「それはそれは、一刻を争うでしょう。すぐに、き、祈祷所に、御出ください」と、先刻の拙い吃音の男とはどうにも似ても似つかない調子の、詰まりながらも奇妙に流暢な響きで言葉が続く。
    それは、今となっては前後もわからない暗闇に――最愛の娘の姿が見えず、それがいつから続いているのかもわからない――放り出されたようなレオにも唯一見える、白く輝く糸のようだった。


    生暖かい雨に泥濘む道を、不惑も過ぎたというのに年甲斐もなく小走りに駆け抜けたレオが、ひどい息切れに喘ぎながら、ホワイトサンドストリート59号の狭い階段を降りた先の扉を開けると、芳香剤とも煙ともつかない、甘たるく苦味のある香の臭いが噎せ返るような部屋の真ん中に、団体シンボルの“羊飼い”の十字架が聳えている。
    部屋の隅に置かれたベンチで足を大きく開いて座っている黒い祭服の男は、背を丸めたまま顔をあげると、「っや、やっと、やぁっと来たか」と、黄ばんだ歯を見せて、サルの威嚇のように嗤った。

    続けて「ま、待ちくたびれましたよ」とぼやく“羊飼い”は、いかにも聖職者めいた祭服を着て、それらしいベレー帽を被っていなければ、昼間から街の角でのんだくれてトランプゲームに興じるたぐいの、いかにも素行の悪いごろつきやチンピラにしか見えない。しかし、常に吃るその男が、何かの役に入り込んだように流暢に喋り始めるとき、レオはそこに「神の導き」というものを感じていた。
    過去に、表面ばかりよく取り繕ったキツネ――もとい、ビジネスパートナーを名乗る者から裏切られた経験を持つレオにとって、「それらしくない風体」をしているということは、むしろ信頼の一要素にすら成り得た。しかもこの男は、医者が匙を投げたリサの頭痛を治してみせたのだ。故に、少なくともレオにとって、この“羊飼い”は一流の祈祷師であり、本物の預言者だった。
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    @t_utumiiiii

    DOODLE弁護士の衣装が出ない話(探偵と弁護士) ※荘園設定に対する好き勝手な捏造
    No hatred, no emotion, no frolic, nothing.(探偵と弁護士) 行方不明となった依頼人の娘を探すため、その痕跡を追って――また、ある日を境にそれ以前の記憶を失った探偵が、過去に小説家として活動する際用いていたらしいペンネーム宛に届いた招待状に誘われたこともあり――その荘園へと到達したきり、フロアから出られなくなってしまった探偵は、どこからが夢境なのか境の判然としないままに、腹も空かず、眠気もなく、催しもしない、長い長い時間を、過去の参加者の日記――書き手によって言い分や場面の描写に食い違いがあり、それを単純に並べたところで、真実というひとつの一枚絵を描けるようには、到底思えないが――を、眺めるように読み進めている内に知った一人の先駆者の存在、つまり、ここで行われていた「ゲーム」が全て終わったあと、廃墟と化したこの荘園に残されたアイデンティティの痕跡からインスピレーションを得たと思われる芸術家(荘園の中に残されたサインによると、その名は「アーノルド・クレイバーグ」)に倣って、彼はいつしか、自らの内なるインスピレーションを捉え、それを発散させることに熱中し始めた(あまり現実的ではない時間感覚に陥っているだけに留まらず、悪魔的な事故のような偶然によって倒れた扉の向こうの板か何かによって、物理的にここに閉じ込められてもいる彼には最早、自分の内側に向かって手がかりを探ることしかできないという、かなり現実的な都合もそこにはあった。)。
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    recommended works

    @t_utumiiiii

    DOODLE #不穏なお題30日チャレンジ 1(2).「お肉」(傭オフェ)
    ※あんまり気持ちよくない描写
    (傭オフェ) ウィリアム・ウェッブ・エリスは、同じく試合の招待客であるナワーブと共に、荘園の屋敷で試合開始の案内を待っていた。
     ここ数日の間、窓の外はいかにも12月らしい有様で吹雪いており、「試合が終わるまでの間、ここからは誰も出られない」という制約がなかろうが、とても外に出られる天候ではない。空は雪雲によって分厚く遮られ、薄暗い屋敷の中は昼間から薄暗く、日記を書くには蝋燭を灯かなければいけないほどだった。しかも、室内の空気は、窓を締め切っていても吐く息が白く染まる程に冷やされているため、招待客(サバイバー)自ら薪木を入れることのできるストーブのある台所に集まって寝泊まりをするようになっていた。
     果たして荘園主は、やがて行われるべき「試合」のことを――彼がウィリアムを招待し、ウィリアムが起死回生を掛けて挑む筈の試合のことを、覚えているのだろうか? という不安を、ウィリアムは、敢えてはっきりと口にしたことはない。(言ったところで仕方がない)と彼は鷹揚に振る舞うフリをするが、実のところ、その不安を口に出して、現実を改めて認識することが恐ろしいのだ。野人の“失踪”による欠員は速やかに補填されたにも関わらず、新しく誰かがここを訪れる気配もないどころか、屋敷に招かれたときには(姿は見えないのだが)使用人がやっていたのだろう館内のあらゆること――食事の提供や清掃、各部屋に暖気を行き渡らせる仕事等――の一切が滞り、屋敷からは、人の滞在しているらしい気配がまるで失せていた。
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