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    @t_utumiiiii

    @t_utumiiiii

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    @t_utumiiiii

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    パンダのゆりかご家具の面倒を見てたウッズさんがセクハラを受ける内容です ※ご都合設定の荘園 ※リサはピアソンが経営していた頃のホワイトサンド孤児院に収容されていたという仮定の上の二次

    ゆりかご(泥庭) 荘園主の命で試合の再現の繰り返しを強いられている招待客(サバイバー)らが、試合以外の時間を仕方なく思い思いに過ごしている居館の一角に、ゆりかごが置かれるようになった。人間の子供に使うようなそれであるが、中には人間ではなく、白黒で毛むくじゃらな子熊が三匹入っている。何でも、荘園主の趣味らしい。今更それに目くじらを立てる程好奇心の強いものは、サバイバーの中でそう多くなかった。
     それに対するサバイバーの反応というのはまちまちで、それこそ本物のテディベアの、幼体らしいずんぐりとした体形を可愛いと言って手を差し出してみるものも居れば、動くぬいぐるみのようなそれの始末がわからない故に、遠巻きにして見ているだけのものや、そもそも興味がないものもいる。
     幸運児が言うには、それはパンダという生き物で、クマの親戚のようなものらしい。しかしサバイバーとして屋敷に留め置かれている者は誰も「パンダ」という種名の動物を知らなかったので、中には幸運児がその子熊に対して「パンダ」という個体名を付けたのだろうと理解している者も居た。

     庭師のエマ・ウッズは、小さなパンダが転がったり寝そべったりしているそのゆりかごを、サバイバーの中でも特によく気にかけていた。生きているテディベアのようなそれが覚束なげに二本足で立ち上がったかと思うと、自分の頭の重みに耐えきれずに背中から転がりぽてんと尻もちをついている様を彼女は可愛らしいと思っていたし、何より、彼女はそれ――パンダのモチーフの衣装を荘園主から与えられていた、という事情もある。
     「森の動物たちに注目しよう」というタグ付きで彼女に贈られたその衣装は、ふわふわの毛皮を持つ子パンダのぬいぐるみをそのまま被るような形の帽子に、明らかにパンダを模したデザインのオーバーオール、子犬にしてはずんぐりとした体格ながら身のこなしのしなやかな、赤毛の愛らしい動物(これも幸運児が言うことには、レッサーパンダという名前らしい)が出たり入ったりするリュックサックのそこかしこ、腹部のポケットや編み上げブーツのストラップに至るまで、パンダのモチーフやそれを模した可愛らしいキャラクターがあしらわれていた。
     「パンダ保育員」という題をつけられた衣装一式を荘園主から贈られていた彼女は、荘園主から特別何かを言い付けられた訳では無いが、ゆりかごの中の子パンダを、自分が管轄する庭の植物と同じようによく気にかけていた。
     ゆりかごの中の子パンダが何を食べているのかを気に掛けた彼女が、荘園主にその旨尋ねる手紙を送ってみたところで、ナイチンゲールに持たされて返ってきた手紙によると「それは家具なので、気にかける必要はない」とのことだが、ゆりかごの中で寝そべったり転がったりしている子グマのようなぬいぐるみのような小さなパンダを、「動く家具」と割り切って見るのは、最初から興味がないのならば兎も角、一度それを可愛いと思ってしまうと並大抵のことではない。まして、彼女は「保育員」であった(無論、衣装だけの話ではあるが)。

     かくしてエマは、ゆりかごの中の子パンダたちをよく気に掛け、ベッドの上で放置されているだけでは体に良くないだろうと慮ってそこから子パンダを抱き上げて“外出”させると、「最後の試合」が終わるまで誰一人出ることのできない閉じられた場所であるとはいえ、ゆりかごの内部よりは広い居館の中を歩かせたりもした。
     子パンダの方は、彼女に懐いているのかどうかは判然としない(というのも、荘園主からの通知曰く「家具」の判定になるらしいこの子パンダについて、彼女のようにいちいち面倒を見ようとするサバイバーはいないので懐き具合の比較対象がないし、子パンダは常にどこかボーっとしたような、ただ可愛いだけで他に能のない、どうにも小動物めいた態度を取っていた。)が、彼らは保育員の衣装を着たエマの手で抱き上げられると時折、彼女の帽子の上に載っているぬいぐるみのパンダが零している笹を気にしているのか、ふわふわした黒い手を、彼女の帽子の鍔に向かって伸ばしたりした。


     ある日のエマが、保育員の工具箱として渡されている編み籠の中に詰められたたけのこを子パンダに渡してみるものの、相変わらず食べようともしないその様子を思案げに観察していると、不意に人影が近づいてきて彼女の隣に立ち、パンダのゆりかごを覗き込んだ。
     子パンダらから食用として認識されず、程よい腰掛けにされ始めていたたけのこを回収しながら、エマは自分の隣に立った人影を伺ってみる。すると、彼女から見られていることに気づいたらしいピアソンは、わざとらしいぐらいの真顔のままゆりかごの中にいるパンダに視線を逸らすと、ゆりかごを小突いて揺らしてから顔を両手で隠し、子パンダに向かって、これみよがしにいないいないばあ(Peek-a-boo)をして、あやすように見せていたりする。

     エマは敢えて、それに気が付かなかったフリをした。何せ、こちらから話しかけてしまうと、話しかける大義名分が生まれたとでも勘違いしたこの男に延々と、それこそ自分の部屋まで付き纏われる可能性だってある。この男は、そういう幽霊のようなものだ(迂闊にも「見えている」ことがわかると、延々と付き纏われる。)。
     心ここにあらずといった様子でパンダをあやしているフリをするピアソンを無視して、エマが工具箱、もとい編みカゴに入れて持ってきたりんご――保育員のリュックを根城にしているレッサーパンダを餌付けした残り――を子パンダに差し出してみようとすると、それまでリュックの中で丸まり、大人しくしていたはずのレッサーパンダがごそごそと出てきたかと思うと、鮮やかな身のこなしでエマの腕を伝い、彼女が持っていたりんごを咥えると、エマの手から取り上げた。
    「あっ!」
     エマが声を上げる頃には、既にレッサーパンダはエマの足首のあたりに蟠り、キュイキュイと可愛らしい鳴き声を上げている。
    「もう! あなたはさっき食べたでしょう?」
     彼女が窘めるようにそう言ってみたところで、レッサーパンダはまるで聞く耳を持たない。エマが手を伸ばして捕まえようとすると、それは先っぽだけ白いふわふわの尻尾を揺らしながら身を翻して躱す。

     エマがその場に蹲ってレッサーパンダを捕まえなかったのは、見たところイタズラをしたい気分らしいレッサーパンダに、無闇に走り回ってほしくないからだった。ここに、ピアソンさんさえいなければ、ちょっとした追いかけっこをしてあげてもいいけれど、機嫌が悪いときのピアソンさんは、「子供が目の前で走った」というだけで、乱暴に蹴り転がすこともあったから。レッサーパンダは、かわいそうなあの子どもたちよりも、もっと小さいし、身軽だけれど、もし蹴りが当たったら……。
     エマの懸念など露知らず、彼女の足元でりんごをしゃくしゃくと囓って満足げなレッサーパンダを果たして捕まえようとしているのかどうかはっきりしない距離で手をオロつかせているエマから、彼女自身は大して自覚しないまま、それとなく様子を窺われていることに気がついたピアソンは、パンダのゆりかごを惰性っぽく片手で揺するのを止めると、彼もまたエマの心配事をよそに、何食わぬ顔で手を伸ばし、レッサーパンダの首後ろをむんずと掴むと、ぶら下げるように持ち上げた。あくまでエマの様子に注意を向けていたレッサーパンダは、死角から急に掴み上げられてキョトンと大人しくなり、咥えていたリンゴをその場にぽとりと落とす。

    「その……ありがとうございます、なの。」
     齧りかけのリンゴを回収して、とりあえずオーバーオールの腹ポケット――パンダの顔型をしている――の中に入れた後、エマがおずおずとお礼を言いながら、ピアソンに首後ろを捕まえられてぼんやりとしているレッサーパンダを受け取ると、ピアソンはそれに対して、ひどくどもりながら(彼はエマを相手に話すときだけ、やたらと吃るところがある)何かを言おうとしている。
     本当なら、これを聞こえなかったことにして作業に戻るか、ここから立ち去るかしたほうがいい。けれど、結果的には、確かに手伝ってくれたわけだしと思い直しながらエマが、「ええっと、まだ何か?」と聞き直すと、ピアソンは酷く緊張して赤らんだ顔を、みすぼらしく潰れたキャスケット帽の鍔を引き下げて隠そうとしつつ「その、し、しょう、将来、将来のはな、話、なんだが、ウ、ウッズさん、は、こ、ここっ、子供は、な、な、何人ほしい、ほしいんだい?」と、聞き取れる程度にぼそぼそと続ける。
    「……何の話なの?」
     そう返すエマの顔が呆れと言うには強張ったのを知ってか知らずか、彼は気味の悪い薄ら笑いをいっそう深めた。
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    🐼🐼🐼
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    Replies from the creator

    @t_utumiiiii

    DOODLE弁護士の衣装が出ない話(探偵と弁護士) ※荘園設定に対する好き勝手な捏造
    No hatred, no emotion, no frolic, nothing.(探偵と弁護士) 行方不明となった依頼人の娘を探すため、その痕跡を追って――また、ある日を境にそれ以前の記憶を失った探偵が、過去に小説家として活動する際用いていたらしいペンネーム宛に届いた招待状に誘われたこともあり――その荘園へと到達したきり、フロアから出られなくなってしまった探偵は、どこからが夢境なのか境の判然としないままに、腹も空かず、眠気もなく、催しもしない、長い長い時間を、過去の参加者の日記――書き手によって言い分や場面の描写に食い違いがあり、それを単純に並べたところで、真実というひとつの一枚絵を描けるようには、到底思えないが――を、眺めるように読み進めている内に知った一人の先駆者の存在、つまり、ここで行われていた「ゲーム」が全て終わったあと、廃墟と化したこの荘園に残されたアイデンティティの痕跡からインスピレーションを得たと思われる芸術家(荘園の中に残されたサインによると、その名は「アーノルド・クレイバーグ」)に倣って、彼はいつしか、自らの内なるインスピレーションを捉え、それを発散させることに熱中し始めた(あまり現実的ではない時間感覚に陥っているだけに留まらず、悪魔的な事故のような偶然によって倒れた扉の向こうの板か何かによって、物理的にここに閉じ込められてもいる彼には最早、自分の内側に向かって手がかりを探ることしかできないという、かなり現実的な都合もそこにはあった。)。
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