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    Ugaki_shuuu

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    Ugaki_shuuu

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    小峠さんと久我くんがご飯を食べに行く話② いろいろ片付いた未来の話だと思っていただければ幸いです。和中の兄貴の激おこシーンが始まる前に書き逃げしておこうと思い、急ピッチで進めました。鷹橋くんの話を書きたかったのと、野田ニキが早く復活してくれることを願って書いています。いろいろ捏造も甚だしいですが、どうぞお許しください。

    #小峠+久我
    kotoge+kugo

    小峠さんと久我くんがご飯を食べに行く話②フロント企業での業務を終えて帰宅しようと階段を降りると、どういうわけかそこに、久我虎徹の姿があった。
    俺は小峠華太。本日はサラリーマンのごとく一日中パソコンとにらめっこしていたせいで、目も肩も腰もバキバキになった武闘派()極道である。

    思ってもみない来訪者に、俺は思わず身構える。

    「テメェ…何しにここに…」

    ドスを効かせた声で相手を威嚇…しかけたところで、なんと久我の目がじわりと水気を帯び始めた。まるでチワワが乗り移ったかのような艶々潤々とした瞳を向けられ、俺は思わずたじろぐ。えっ、何、俺、そんなに怖かった…?

    訳が分からずこちらがアタフタしている間に、久我はグイ、と、袖口で目元を拭った。そして、今にも嗚咽が零れそうなのを必死で堪えているのか、押し殺したような声で、

    「…っ、小峠パイセン、っ飯食いに、行きませんかっ…」

    と言った。え、いきなり何いってんのコイツ、と、俺は思わず目を丸くする。いくら今は戦争していないと言え、もとは敵対していた組に所属している者同士だぞ。
    いきなりの申し出にすぐには答えを出しかねていると、2階の事務所の窓から下の様子を見ていたのだろう、和中の兄貴が降りてきて、「どうした」と問うてくる。どう説明していいものか分からず、とりあえず今しがた起きたことをそのまま話す。と、「ふむ」と指先を顎のところに当てて、和中の兄貴はすこし考え込むようだった。

    「不易流行。一緒に行ってきてやってはどうだ」

    思ってもみなかった兄貴の言葉に、俺はたいそう驚く。俺も兄貴も、京極組の連中には散々な目に合わされたクチだ。しかも相手はその京極組の、中核を担う若手構成員。
    納得がいかないという思いが、俺の顔にありありと表れていたのだろう。兄貴は更に「食は皇帝のごとく偉大なり、とも言う」と付け加える。そして犬でも追い払うように、こちらに向けてしっしっと手を振った。
    兄貴の意図するところはよくわからなかったが、上からのお達しとあっては、引き下がることはできない。俺は仕方なく、長髪のオレンジ髪の男を引き連れて空龍街の街へ繰り出すことにした。


    ---------------------------


    「……おまえ、何食いたいの」
    「……なんでもいいっす」

    久我虎徹を引き連れて、俺は空龍街のメインストリートを歩く。今は夜。一大歓楽街である空龍街は、夜の帳が降りてなお、昼のように明るい。否、夜の帳が降りたからこそ、ネオンサインに照らされて、きらめきを増すといった方が正しいか。
    道の左右では、キャバクラの客引きの男どもが、道行く酔っ払いに声をかけている。と、その中の一人が俺がいるのに気が付いたのか、こちらに向かってペコリと頭を下げた。挨拶しようと思ってか、客をその場にほっぽらかして寄って来ようとするのを、軽く手を挙げて制す。この街の治安を守るべきものが、仕事中のやつらの邪魔をしては申し訳ない。なにせこちらは、本来であれば今は勤務時間外なのだ。
    その勤務時間外の時間を食いつぶしてくれた相手はと言えば、控えめにも俺の半歩後ろを歩いている。悄然とした表情を浮かべてとぼとぼと後を付いてくる相手に、ちょっとは景気のいい顔をさせてやろうかと、

    「……酒にするか? それともきれいなオネエチャンか?」

    と尋ねると、

    「いや、今日はそういうのはちょっと……」

    と、馬鹿正直な答えが返ってきて、ため息をついた。チッ、どうせなら派手に金を使って、空龍街の経済を回すのに一役買ってくれりゃ可愛げもあるのに。
    どうにも煮え切らない相手の態度に若干イライラして、路上喫煙禁止条例が適用されるエリアであるにも関わらず、俺は思わず口に煙草をくわえてしまった。あれも嫌これも嫌、テメェはいやいや期の赤ん坊か、我儘な彼女か何かか。

    「……なら、中華でいいか」

    タバコをふかしながら問うと、久我はようやっと、こくり、と頷いた。まあ、相手の様子から察するに、理由はわからないが俺と飯を食えればなんでもいいのだろう、とは思った。それで、最近天羽組が出店に協力した、台湾料理の店に足を運ぶことにした。オープンしたての店だが味はなかなかで、売り上げも好調だと聞く。これを機に京極組のやつらにでも口コミが広がって、売り上げに貢献してくれりゃ万々歳だ。

    木とガラスで出来た引き戸を引くと、カウンターの奥で料理を盛り付けている店主と目が合った。店主はニカッと笑って「歡迎歡迎(いらっしゃい)」と言ってよこす。こちらも軽く会釈して「陳さん、邪魔するよ」と声をかけた。
    店のテーブル席には、幾ばくかの客が腰かけて、料理に舌鼓を打っている。辛気臭い顔をした男とトイメンで飯を食う気になどなれないので、俺は迷わずカウンター席に腰掛けた。相手のことなど構わずさっさと席に座る俺の後について、久我も左隣の席に座る。右手の方にメニューが置いてあったので、それを目の前に突き出してやると、久我は「……っス」と言って軽く礼をする。が、本日のおすすめのページに視線を這わせたところで、そのまま動かなくなってしまった。
    俺は相手のそんな様子を見、ガリガリと頭をかくと、「……蚵仔煎、蛤蜊絲瓜、蔥爆牛肉、五更腸旺、酸辣湯……あとライス二つ」親父や兄貴たちが注文していたものを思い出しつつ、店主に告げていく。店主が店の奥の方に消えていくのを見ると、御絞りで手を拭きながら、「……で、」と話を切り出した。

    「……テメェ何しに俺のところへ来た」

    久我は少しの間黙って自分の手元を見ていたが、やがてポツリ、ポツリと話し始めた。

    「……弟分が、死んだんです」

    意外でもなんでもないその言葉に、俺は「ふーん」と相槌をうつ。この世界に身を置くからには、ありふれた話だった。俺は久我の話に耳を傾けながら、目の前に置いてあったコップに、二人分の冷水を注いだ。一つは久我の前に置いてやり、もう一つの方はくい、と自分で呷る。冷たい水が、のどを滑り落ちてく。
    その話は、俺の耳にも届いていた。京極組の高橋修也が、羅威刃の城ケ崎に殺された。この情報は、特に業界内で広く知られているというわけでもなかった。俺はたまたま野田の兄貴が襲撃された件でいろいろ調べているうちにこの件を知った。知った時の感想はと言えば「へぇ、死んだのか」くらいのものだった。
    高橋修也もまた、相良颯誠とともに、俺たち天羽組の冨樫の兄貴を殺している。殺した奴が、今度は殺される。そうして恨み、恨まれる。俺たちだって北岡と冨樫の兄貴を殺した京極組の連中を、今でも恨んでいるし、京極組だってこちらを恨んでいるだろう。そうしてお互いに恨みあっているからこそ、俺たちは自分が同じように誰かに殺されたとしても、決して文句は言えないのだと弁えている。
    ただぼんやりと、相良の野郎は死ぬ間際に鷹橋の命を救って欲しいと嘆願していたが、それが無駄になっちまったな、とは思った。でもそれぐらいだ。それは久我も分かっているようで、だから気のない返事を返す俺にも、突っかかってくることはなかった。ただ静かに、言葉をつづけていた。

    「あいつ……、俺の、高校の時からの後輩で……」

    言葉を紡いているうちに、徐々に、湿り気を帯びていく。

    「だからスゲー、悲しくて……っ」

    そしてあとは、言葉に詰まるようだった。メソメソと泣きながら、俺がさっき目の前に置いてやったお冷のコップを、ぐい、と呷っている。どうでもいいがお前、それ、組の内部事情に関することなんじゃねーの。別の組の俺なんかに話して京極組のコンプライアンスに引っかかったりしねぇか、俺はそっちの方が気が気じゃなかった。

    「あいつ、最後の最後に、テレビ電話で城ケ崎の情報を送ってくれたんです」

    そんな俺の心情などお構いなしに、久我は訥々と話を続ける。「そんなことしてる暇があったら、逃げりゃよかったのに」と、そこまで言って、ぐっと奥歯をかみしめるようだった。
    俺はじっと、そんな久我の様子を眺めていた。お前、俺にそんなこと話して、それでどうしたいの。醒めた口調でそう言ってやろうとして、口を開きかける。と、そこに久我の言葉が重なった。

    「城ケ崎に刺されたせいで、あいつ、スマホを落としちまったんすけど」
    「音声だけはずっと、聞こえてたんです」
    「あいつ、最後に城ケ崎に一発食らったとき、相手の体のどこかを掴んだみたいだった」
    「多分、それで、相打ちに持ち込もうとしたんです」

    あんたが、あの時、俺にしたみたいに。久我が紡ぎ出した言葉に、さすがに俺は、今まさに吐き出そうとしていた言葉を飲み込んだ。それでこいつは、俺のところへ来たというのだろうか。
    どう反応していいものかわからず、俺はまた「へぇ……」と腑抜けた相槌を打った。そして少し考えてから、

    「根性のある、いい舎弟じゃねぇか」

    と続ける。俺の言葉に、久我は弾かれたように、こちらに顔を向けた。と、その顔が急速にくしゃりと歪む。こちらにそれを見られまいとするのか、今度は上背のある背中を丸めて、顔を俯向けた。スラックスにぽたり、ぽたりと雫が垂れている。俺は何も見ていないふりして、ただ、料理を作る陳さんの背中を見つめていた。


    ---------------------------


    陳さんの作る料理が、カウンターの上奥でほこほこと湯気を立てている。

    「民は食を以て天と為す。慢慢吃(ごゆっくり)」

    人のよさそうな店主はそう言って本日のお通しである鴨血と皮蛋豆腐をテーブルの上に置き、また奥の方へ引っ込んでいった。カウンターには、台湾から来たばかりでまだ日本語のおぼつかない店員が、一人で洗い物をしている。店の回転などを気にせずのんびり料理が食べられる、いい店だった。

    久我は長いことぼたぼたと涙をこぼしていたが、そこはやはり裏の世界に身を置く者。いつまでも泣いているわけにはいかないと思ったのか、しばらくすると、立ち直ったようだった。ちょうどそれくらいのタイミングで、店長の陳さんが俺たちの前に、出来上がった料理の皿がどんどん置いてくれた。一品、また一品と置かれてい巨大な皿に、最初はしんみりとしていた久我の顔が、徐々に引き攣っていくのが行くのがわかる。たとえ台湾料理といえども、食べ方はやはりいわゆる中華料理方式だ。2-3人前の大皿に山盛りの料理がのせられていて、それを取り分けて食べる。

    「これ、全部食うんすか……」
    「なんだテメェ。陳さんの作ったご馳走を無駄にする気か」
    「いえ……」

    食う前からすでに胸やけしていそうな相手の顔を見ながら、俺は内心ほくそ笑む。実は台湾料理には大体「打包」というテイクアウトのシステムがあって、食べきれなかった料理を紙の容器に入れて持ちかえらせてくれる。が、久我はどうやらそれを知らないようだった。死ぬほど食わせてやって、限界だというところでネタ晴らししてやろう。

    「ところでお前、さっきの話は京極組の極秘情報なんじゃねぇの」

    蚵仔煎を箸でつつきながら、俺は何とはなしに、久我に聞いてみる。と、相手はこともなげに、

    「だってどうせもう、小峠サンの耳には入ってんでしょ」

    さもありなんと返して寄越した。この意識の違いというか、合理性というか、はたまた甘ったれからくるものか、同じ極道だというのに、ずいぶん違うのだなと思う。俺は野田の兄貴の身に起きたことに関しては、外部の者には絶対に漏らす気はない。情報はすでに相手の耳にも入ってはいるのかもしれないが、それはそれ、これはこれだった。自分の組の事情を、おいそれと他の組のものに話したりはしたくない。
    そしてそれが簡単にできてしまうこいつは、人に腹の内を晒してしまうことができるこいつは、久我が自分の力に絶対的な自信をもっているからこそできるのだろうな、と思う。俺にはそれは、とてもできそうになかった。俺にとってはどんなに些細なことも、命綱であり、また脅威でもあった。自分の手の内を、腹の内を、おれはこうも簡単には人に晒せない。
    そう思うと、なんだか無性に悔しかった。悔し紛れに「まだまだあるぞ。どんどん食え」と相手に勧めてやる。久我は苦笑いを浮かべながら「そんなにいっぱいは食えないっすよ」と頬を掻いた。

    「ところで小峠パイセン、台湾料理なのにショーロンポーは無いんっすか」
    「莫迦おまえ、ショーロンポーもとはと言えば浙江料理だよ」

    もちろん、メニューの中にはさまざまな種類のショーロンポーもあったのだが、俺はそれを久我に教えてやることはなかった。食い終わったら帰り際に、教えてやろうと思う。食いたかったら舎弟共を連れて、またここへ食いに来やがれ。


    ---------------------------


    事務所に戻ると、事務所のソファの上には刀の手入れをしている和中の兄貴と、それから胴の部分を包帯でぐるぐる巻きにされた、野田の兄貴の姿があった。

    「和中の兄貴、今帰りました。野田の兄貴、お加減はもうよろしいんで?」

    ソファの横に立って、兄貴たちに向かって挨拶をする。と、それぞれ、「うむ」という和中の兄貴の答えと、「いいわけあるかいボケェ、痛くて口から内臓出そうじゃい!」という野田の兄貴の答えが返ってくる。野田の兄貴は一見元気そうには見えるが、アイスピックを持ち出して来ないあたり、本当にまだ傷が痛むのだろう。

    「台湾料理屋の陳さんから差し入れです。これ食べて元気だしてください」

    機嫌の悪い野田の兄貴に、俺は店主に包んで貰った料理を差し出す。袋の中に入っているのは、もちろん、久我と俺の食残しなどではない。菜脯蛋という沢庵の入った卵焼きと、麵線(煮込み素麺)、虱目魚粥(サバヒーがゆ)、そして豆花という豆腐でできたプリンである。怪我人でも食べられそうな消化に優しいものを選んで、陳さんがわざわざ包んでくれたのだ。
    持ち帰ってきた手土産を事務所のローテーブルに広げながら、俺は和中の兄貴にふと、疑問に思ったことを聞いてみる。

    「和中の兄貴、俺がここを出る前に仰ってた、“不易流行“というのは、どういう意味でしょうか?」

    豆花のカップを手に取って、ちょうど一口目を含んでいた和中の兄貴は、とっさに話すことができないようだった。しまった、タイミングの悪いときに声を掛けちまった、とダラダラと冷や汗を流していると、その横で粥にレンゲを差し込んだばかりだった野田の兄貴が、和田の兄貴に代わって答えてくれる。

    「不易流行。本質を忘れずに、かつ新しい変化を取り入れていく必要があるという意味なのだ」

    そして続けて「で、京極組のあのガキはどうだったァ?」と、問いかけられる。なんだか含みのある言い方だ。が、久我との会話の中で取り立てて弱みのようなものを握ったわけでもなかったので、俺はただ、台湾料理屋であった大体の出来事を話すことしかできなかった。そして「思ったより、甘ったれで子供っぽいやつでした」と自分の感想を少しだけ、付け加えておく。

    「あんな風に弱っているのを誰かに見せたり、腹の内を晒したりは、俺にはできそうにありません」

    そう告げると、野田の兄貴と和中の兄貴は、そろって顔を見合わせた。

    「カブトちゃん、お前もまだまだヒップの青いガキだねぇ」
    「杓子定規。お前は時々まじめすぎる。肩の力の抜き方も覚えろ」

    口々に言われ、おれは思わず狼狽してしまう。兄貴の言いようだと、まるで———久我の態度の方が正しいようにも聞こえる。でも、俺にそれはできそうにはないのだ。
    どうにも納得しきることができず、困った顔でただ「ハァ……」と返事をする。と、その心持が表情に現れていたのだろう、はや豆花を食い終えた和中の兄貴が、空のカップをテーブルの上に置きつつ「別に責めているわけではない」と、話を続けた。

    「不易流行。お前の本質を忘れぬまま、新しい者からもまた学べということだ」

    言いながら、テーブルの横に立ったままになっていた俺に、豆花のカップを手渡しする。そうして、ソファの向かいを顎で指した。同席して相伴にあずかっていいものか、少し困って野田の兄貴の方をちらりとみやる。と、和中の兄貴の隣に座っていた野田の兄貴は、こちらの様子など目に入っていないかの如く、これ見よがしにサバヒーの粥を掬って口に運んでいた。

    「失礼します……」

    俺は両手でカップを受け取ると、ソファに腰を下ろす。和中の兄貴と、野田の兄貴の向かい側に。
    薄いプラスチック製のレンゲで口に運んだ豆花は、さきほど店で食べた時よりも、ほんの少しだけ甘みが増している気がした。
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    俺は小峠華太。本日はサラリーマンのごとく一日中パソコンとにらめっこしていたせいで、目も肩も腰もバキバキになった武闘派()極道である。

    思ってもみない来訪者に、俺は思わず身構える。

    「テメェ…何しにここに…」

    ドスを効かせた声で相手を威嚇…しかけたところで、なんと久我の目がじわりと水気を帯び始めた。まるでチワワが乗り移ったかのような艶々潤々とした瞳を向けられ、俺は思わずたじろぐ。えっ、何、俺、そんなに怖かった…?

    訳が分からずこちらがアタフタしている間に、久我はグイ、と、袖口で目元を拭った。そして、今にも嗚咽が零れそうなのを必死で堪えているのか、押し殺したような声で、
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