眠れぬ夜が続きますように 「村雨礼二は許容されることを経て弱くなった」。その言葉が嘘であるのはその後の試合が如実に表していたし、自らも許容を覚えた村雨が強さを揺るぎないものにしたのは明らかであった。
身体に起きる反応を根拠として、さらにそこへ感情の機微をも上乗せする。文字通り全ての人間は村雨の前では丸裸も同然だった。
二十九にして医師、村雨礼二の観察眼は新たな境地へと辿り着く。
(獅子神は乳首が性感帯だ)
そう、他人の性感帯が一瞬にして見抜けるようになったのである!
感情を隠すのに慣れきった者から読み取るのは至難の業だったが、こと村雨の狭い友人関係に於いて、未だ良くも悪くも染まりきっていない獅子神は一目見ただけで丸わかりだった。
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