「…なんか。先輩、変わったわね」
唐突に教科書から顔を上げたと思うと、窓の外を見て口を開いた。
校庭で咲き誇っていた桜の姿はとうに消え、緑の葉が野薔薇の頬に影を落としている。まだ5月も序盤だと言うのにワイシャツ姿の野薔薇は、タイツに覆われた足を組み替える。光を反射する白と薄い黒のコントラストが眩しい。
「変わった。なんで?」
頬杖を着いて、そのまま視線だけを向かいに座る五条に向けた。
高専は閑散としていて、校舎棟には今五条と野薔薇の二人しか居ない。だから、その問いが向けられているのは、家入でも夏油でもなく必然的に五条になるのであって。
言ってやれよ。変わったのは自分じゃない、俺を孤高にしておいて、そのまま俺だけを残して周りが勝手に変わっただけだって。そしてそれ以上の会話を拒絶して、野薔薇との関わりを断てばいい。情なんて持つだけ無駄なんだから。どうせいつかは、野薔薇も自分の所から離れるのだから。誰も自分について来れないことくらい、嫌という程知っていた。
睨んでいた机の端のシミから野薔薇まで視線を上げて、その拍子にずり落ちたサングラスを人差し指で持ち上げる。
口が開く。
言えよ。
「…知らね」
頭で考えていた答えを無視するように、口から言葉が突いて出た。拒絶ではなかった。野薔薇は退屈そうに五条を見た。
──悲しいような、虚しいような。そして、野薔薇の新しい表情を愛しいと思うような。形容し難い感情に襲われる。
このままそれだけ言い残して部屋を出ても良かったのにそうせずに、これからの会話を、数分にも満たない交流を選んだことを後悔する暇もなく、野薔薇は少しだけ語気を強める。
「考えてよ」
「やだ。」
指に触れる黒いガラスが冷たい。最近どうにも目が疲れやすい。きっと術式と永続的に呪力を回すことの影響だろうからいつの間にかつけている事が当たり前になっていた。要求を軽くあしらったことが癪に触ったのか、野薔薇は腰を上げ手を伸ばし、静かにサングラスを奪った。
ああ。
何も隔てずに見る世界は酷く眩しかった。
「…そもそも。あんた、卒業したでしょ?なんでいるのよ」
「別に、たまには顔出さないとって思ったから。ああ、あと野薔薇寂しがるでしょ?」
別に、とスカートの襞を気にしながら椅子に座、野薔薇はサングラスを弄ぶ。
五条は去年卒業し、生徒ではなく呪術師として高専に関わる立場となっていた。五条の卒業と同時に二年生に進級した野薔薇の髪は少しだけ伸びて、肩に着いた毛先が跳ねている。
「…来ない方が良かった?」
「んー、別に。あんたが来ようが来まいがあんまり関係ないし」
「冷たいな。生存確認くらいしてよ」
「五条が死ぬわけないでしょ」
「五条悟は死なないけど五条先輩は死にます~」
仕返しと言わんばかりに冷たくあしらうのに少しむっとして言い返す。野薔薇も呆れたように鼻を鳴らして、
むりむりむりもう進めないで~~~~すたったここまでに1年半かかってま~~~~~~す✌️✌️✌️✌️
何を書きたかったのかすらわかんないからもう絵でも文でも漫画でもいいからヨ~誰か続き作ってくれャ(強欲)