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    ikura_trr

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    ikura_trr

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    如城が死んで数百年後の世界線です。
    如城が妖怪(神様)化、小学生の葉月とカヤって子がいます。
    書き殴りナオしじょっぽいやつ。切なさ目指したんだ許して

    過去と想い生前、蛇を見たらどこか胸が苦しくなって苦手意識を持っていた気がする。

    「逋ス陋ァ様〜!!逋ス陋ァ様ねぇねぇねぇ、昔話するか一緒に遊んでよ〜!!」

    「…葉月ちゃん、今夏休みだけど宿題終わったのかな〜?ん?」

    「ヘヘヘ、教えてクダサァイ」

    ジワジワジワとセミが五月蝿く鳴く。
    ちょっと廃れた神社に2つ結びで私をペチペチと叩く子供はまるで手伝ってくれとノートを取り出す。

    8月13日。晴天。
    雲ひとつなく気持ちのいい空だ。
    セミ取りやだるまさんがころんだとかで遊びに来た子供だけを見れば微笑ましい光景だ。
    ただ違うとしたら、その子たちを見守ってるのが人間じゃなく化け物だと言うところだけ。

    私はいつの間にか死んで、気がついた頃には下半身は蛇に、巫女のような格好をして此処にいた事。
    目の色や髪の毛、埋め込まれた宝石っぽいことや、それこそ下半身。
    この場から動けないのに気づいた頃にはもう人間では無いことを痛いくらいに思い知らされた。

    「あっあのさ、逋ス陋ァ様ァ…逋ス陋ァ様って、恋人いる……?」

    「アタシもアタシも!!気になる!!いる!?いない!?そもそも人間!?」

    「待って待って落ち着いて!いきなり来られても困るよ」

    小学生の子は今こんなにませてるのか…?
    2人はキラキラと宝石のような目でこちらを見た。
    いるかいないか、人間の時なら答えは「いる」…でも、それは数百年も前のことだし、そもそも今の私を見て気づいてくれるのだろうか。

    まだ、私のことを想ってくれてるのだろうか。
    今それを考えても、なんだか遅い気がするけれど。
    愛している、また会いたい、また一緒に過ごしたいという気持ちは、もう捨てるべきだろうか。

    「そんなことより葉月ちゃんの持ってるノート、これなんの宿題?」

    「すぐ話そらすじゃん〜!…これ絵日記だよ。逋ス陋ァ様の事絵日記で書くの。
    先生が信じてくんないからさ〜?いっぱい逋ス陋ァ様と思い出作って、いるってこと信じてもらうの!」

    「わっ、私も、逋ス陋ァ様と遊びたくて持ってきた…!だめ……?」

    「健全なとこで健全な絵日記やりなよ〜!遊ぶのは良いけど絵日記はダメ。
    もっといい事書きな〜?」

    パラパラとめくられる絵日記を眺めながら、軽く注意する。
    こんな化け物を書いてもいい事無いだろうに。

    「…あ、ちょっと待ってカヤちゃん。この人…」

    「こ、この人?この前神社の前で転んだ時に手当てしてくれたの…!
    絆創膏貼ってもらっちゃった!
    嬉しかったから書いたんだけど…ダメだったかなぁ…?」

    全然気にしないでと言いながら、まじまじとその日の日記に目を通す。
    間違えるはずも無い。
    緑がかった髪を少し高く結んだ人。幼い絵ながら特徴的なほくろ、なにより珍しい目の下の赤い化粧らしきもの。
    日付は8月11日。

    「ナオオさん…?」

    ふと声が漏れる。
    そんな、こんな近くに来ていたなんて。

    「カヤちゃん、この人。この人なにか言ってたりした…?」

    「…ぇと、なんだっけ…」

    もじもじして、一生懸命思い出そうとしている子を、軽く撫でる。

    「大丈夫、またいつか聞くよ」
    「あれ、子供が2人いるのか」

    古びた鳥居から声がした。
    懐かしい声。心臓がいやにバクバクと音を立ててる気がする。
    ジャリッと、踏みしめる音がした。

    「こ、この人!私に絆創膏くれた人!えっと、えぇと……」

    「あぁ、一昨日転んだ子か。隣の子以外に誰かいるのか?」

    「兄ちゃん、兄ちゃんさ…逋ス陋ァ様が見えてないの?」

    何が?と目の前の人が答える。
    脳が焼けそうになる。
    目の前にいるのは確かに、数百年前に付き合っていた人だ。
    変わらないその姿に、この人は本当に地球人では無いと痛感する。

    見えていないんだ。

    分かってはいたと思い込もうとしても、目の前の現実は変わらない。
    無くしていた、無くそうとしていた気持ちが
    目の前の、想い人がいるという事実でじわじわと湧き上がってくる。

    「…逋ス陋ァ様?」

    「…あ、あぁ…大丈夫だよ、気にしないで」

    子供たちに向ける笑顔や仕草が、本当に苦しくて、愛おしくて。
    たまらなくやるせない気持ちだ。

    生前サヨナラも言えなかった、守ろうとしてくれた彼になにも応えることが出来なかった。
    今、抱きつきたくても見ることは出来なくて、でも見れたとしてもこんな姿で信じてくれるかも分からなくて。

    目の前がゆらゆらと歪んで行くのが分かる。
    子供達も、多分察したのだろう。
    こちらを見ては、どうにかして居ると言うことを身振り手振りで彼に伝えようとした。
    必死に話す2人を瞳に映す彼は、どんな気持ちなんだろう。

    「ッ……大丈夫、ごめんね。心配かけちゃったね。
    …ねぇ、なんでここに来たか、聞いてもらってもいい…?」

    2人は、そっとその事を伝えてくれた。

    彼は、懐かしそうに、愛おしいものを見るような目で
    そっと口を開いた。
    私は、口から出る言葉の1つ1つを丁寧に丁寧に
    宝物をしまうように胸に刻んだ。


    『愛してる人が此処にいる気がして来たんだ。
    また逢えるかもって、離したくなくて』

    ******************



    「……ね、ねぇ、逋ス陋ァ様…。良かったの?もっと聞きたいことありそうだったけど」

    「そうだよ、凄く話したそうだったじゃん!!なんでもういいって言っちゃったの〜?」

    「も〜!!良いよ別に!
    あんなこと言われたら恥ずかしいに決まってるじゃん!
    むしろ直接話せなくて良かったというか…。

    うん。…ありがとね、なんだか懐かしい気持ちになっちゃった」

    2人の頭をわしゃわしゃと撫でる。
    やめてよと顔を赤くしながら満更でも無い顔をする。

    私は、この場所から離れることはできるのだろうか。

    セミがさっきより五月蝿くなり、日差しはどんどん強くなる。


    「あんなこと言われちゃ、私だって頑張らなきゃねぇ。ナオオさん」

    せめて、彼がずっと幸せでいられるように、ここから出来る努力をしよう。
    次はちゃんと離すことがないように。

    …私の今の名前は、白蛇様だ。
    名に恥じぬよう、何がなんでも守っていこう。
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