またねカエルさん「ねぇ、如城って宇宙人信じる派?」
「なんなん急に」
紅葉の並木道、落ちた葉を踏みしめながらクラゲカットの彼女は言う。
赤い空は黒くなり始め、次第に肌寒さも覚える。
秋は早く早くと冬へと変わり始めていた。
「テレビで言ってたじゃん、この国のサークルは宇宙人がやったんだ!この人は宇宙人に襲われたんだー!ってやつ。
家で見てたら気になっちゃって」
「そんなこと一日中考えてたの?」
彼女はコソコソと見つからないようタバコを咥え、ポッと火をつける。
赤い光に照らされた彼女は流石と言うべきか、とても絵になっていた。
「愚弟がさ〜、そんなのいないって言うから何となくね〜」
「あ〜、禊なら言いそうだねぇ。んなもんいるなら目の前につき出せ!って言いそう」
その言葉にひとしきり笑うと彼女は「確かに」と彼女は煙を吐き出す。
ゆらゆらと吐いた煙のすぐ近く、木の間から不自然な動きがするのが少し気になった。
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「…如城?」
恐らく高校の制服であろうモノに袖を通し、特徴的だったインナーカラーは何処へやら、紺色の髪を高く結んだ幼めな彼女が目の前にいた。
本来なら今頃ソーサーを置き、如城と一緒にペコポンを観光しているはずだが
自慢のソーサーはこんな時に限ってエンストを起こしている。
アンチバリアは正常に起動しているからいいものの、もし効かないペコポン人に見つかると一大事だ。
…そして、何より目の前の状況だ。
何故彼女の髪の毛は伸びている?確かペコポン人の制服は18かそこらまでしか着ないはずだ。
濃い隈も知っている時より若干薄く感じる。
ワープ空間に何か問題があった?…前例は幾つかある。
あーでもないこーでもないと時間とともにグルグル思考をめぐらせる。
…そもそも今、ペコポンの季節は秋では無いはずだ。
7月上旬、梅雨が明けるか明けないか、そんな時期に紅葉なんてあるわけが無い。
事前にペコポンの日付や時刻は調べていた。そこに狂いは無い。
なのに今目の前の風景は葉は紅くはらはらと落ちている。
吸うと、肺に入る空気が冷たく感じる。
冬が近い、そんな味だ。
ワープ中にエンストしたことが主な要因だろう。
1度冷えるのを待つしか無いが、はてさてどうしたものか…。
「ねぇ」
「…」
「ねぇってば」
「……は?」
「でっかいカエルさんだね。紡ちゃんが言ってた宇宙人かな。
初めて見た」
考えるのに夢中になり過ぎて、背後に回られたことに尻もちをついてしまった。
目の前に如城らしき人物がいる。
不思議そうに拾ったであろう木の棒で腕の辺りをつんつんと突く。
「宇宙人てなんかもっとグレーって言うかおどろおどろしい感じだと思ってたけど、案外可愛いもんだなぁ」
「ちょ、如城突くのやめて」
「いや突かずにはいられないって言うか……なんで私の名前知ってるの?」
若葉色の大きな瞳がぱちくりと開く。