とある冬の日龍狐AU
龍族藍忘機(35)×狐族魏無羡(3)
姑蘇の冬は寒い
毎日雪が沢山降り積もり、気温は氷点下を下回る事が殆どだ。
冬になると、姑蘇に住まう龍族である藍家達は夜狩や街には行かず、各自室にて務めや鍛錬を行う事になっている。そうして毎年冬を乗り超え、春を待つ。これが日常だった。
しかし魏嬰が現れてから日々の生活が楽しく感じるようになった。
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「らんじゃ〜……しゃぶい…」
「魏嬰、すぐに火鉢を温めるから」
「ん〜!」
寝台の中で頭から布団を被り全身に羽毛を纏っているのは龍族ではなく狐族の魏無羡であり、私の大事な人だ。
藍忘機は直ぐに火鉢や蝋を新しく取り替え、追加の毛布を彼に差し出す。
「んふふ、らんじゃ、あったかい〜」
ふにゃふにゃと笑みを浮かべる彼は狐で、しかもまだ3歳で幼かった
出会いや経緯は省くが親を失い、家を失った彼を保護し、此処、姑蘇に引き取る事を決めた
初めは反対されたり問題を抱えたりもあった。が、今となっては良い思い出である。
「うん。良かった」
「らんじゃ〜!だっこ…」
「うん」
彼は布団から起き上がり、耳をふにゃりと垂れさせ両手を広げて見せた
我儘を言う姿も愛しく愛らしい彼を優しく抱きしめる。
冬毛になった彼は一回り大きくなった。本人は太った!と不満を言うが、私にとっては喜ばしい事だ。もっと肥えてほしいと思うが口に出すのは辞めておこう。
「ふへ、ぬくい…」
「魏嬰」
「らんじゃ……だいしゅき」
ぐりぐりと自らの頭を擦り付ける姿に思わず閉じ込めて隠してしまいたいと思ってしまう。
しかしまだ彼は3歳児、手を出してしまいそうな欲をぎゅっと理性で押さえ、握った手に力が入ってしまう。
しばらく身体を寄せ合っていると、着物には沢山毛が付着してしまった事に気付く。
「らんじゃ、いっぱい、ちゅいた!」
「うん」
「もっと撫でて!」
「うん」
彼の毛皮はとてもふわふわして暖かい
撫でていると心地よくていつまでも撫でていたいくら位だ。
しばらく撫でて堪能していると、彼の頭が上下に揺れ始めた。
「んぅ……」
「魏嬰?」
「……ん」
どうやら眠たくなってしまったらしい。
小さく欠伸したり両手で目をこすったりと今にも寝てしまいそうだ。
「……少しお昼寝をしよう」
「ん……、でもぉ…」
「私は大丈夫。今は寝なさい」
「……はぁい」
頭を優しく撫でていくと安心したのか、彼は小さな寝息を立て始めた。
私はそっと横にさせて毛布をかけていく。しばらく彼の姿を眺めれば、小さな寝息に併せて丸いお腹も上下に動いている。
これなら大丈夫だと思い、途中放棄にしていた書物を仕上げようとその場を立ち上がろうとする。しかし、ぎゅっと何かに掴まれているような感覚に気づく。
「……?」
振り向くと彼が私の着物の裾を掴んでいた。
寝ているはずなのに掴む手には力が込められている
無理に離すのは良くないだろうと考え、そのまま彼の好きにさせておくことにした
私は寝台に腰を下ろし務めは彼が起きてからにしようと決めた。今しばらくは彼の寝姿をこの目に焼き付けておこうと思う
「おやすみ……。魏嬰」
彼の頬に触れ、優しく口付けていく
今はこれだけで十分幸せなのだ
彼の隣で、共に過ごす時間を大切にしたい
いつか彼が成長したら……
その時にはきっと…………
「愛している。」