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    レイチュリ🧂🦚

    フォロワーさんの誕生日に書いたドルパロ

    既に同棲済みである『ドームでのライブが決まった『十の石心』の皆さんに、一言ずついただきたいと思います!』
     テレビの中で、キャスターらしき女性がメンバーそれぞれにマイクを向けている。『十の石心』。それは話題沸騰中のアイドルグループだった。男女合わせて含む十人組のグループであり、それぞれの個性が光るような楽曲が売りだ。そしてそのとがった個性の楽曲ひとつひとつのパフォーマンスに、各々が合わせられるくらいの力量がある。
     最初は一番身長の低いオパール。彼が名実ともにリーダーであるのだから当然だ。その後にジェイド。彼女はアイドルというよりは女優、モデルという印象の方が強い。ファッション誌の表紙を飾ることも多く、その発言の節々に強要の高さと彼女の審美眼が垣間見える。その隣のトパーズはバラエティー番組の出演が多いだろうか。クイズ番組では暗算をするような問題の解くスピードが尋常ではないと話題になり、動物番組では小動物と戯れる姿が話題になった。
     そしてまた一人、また一人。その全員がありとあらゆる分野で活躍する芸能人だ。そんな逸材ばかりのグループの人気が出ないわけがない。しかしドームライブにこぎつけたのはそのプロデュース力のおかげでもある。個々の力量だけではどうにもならないのがグループ活動なのだから。
     などと、レイシオはテレビを眺めながらそんなことを考えていた。レイシオとてこの業界で名を馳せる有名人である。ジェイドとはいくつかのドラマで共演をし、トパーズとはクイズ番組で一緒になることが多いだろうか。他のメンバーも特別番組などで顔を合わせたことがある。
    『僕の曲では本当にダイスを振るから、その出目も見てくれると嬉しいな』
     そんなことを口にした彼も、顔を合わせたことがあるだけのうちの一人だった。決して番組内で言葉を交わしたことは多くなく、そもそも出演するもののジャンルが違う。たとえ二人にドラマのオファーが来たとしても、レイシオは刑事もの、アベンチュリンは学園ものだろう。被ることなんてほとんどない。
     そんな彼の言葉を、レイシオは今真剣に聞いていた。外向けであろう作られた笑顔に、作られた定型文。その全てがファンのために作り上げたものだというのに、それを目に焼き付けるようにして。
    「ただいま~。……あれ、レイシオ? 何見て……は!?」
    「あぁ、おかえり」
    「なんでそんなふっるいの見てるんだい!? ちょ、おい!」
     伸びてきた手がリモコンを奪おうとして、それをさらりとかわしていく。とはいえこのインタビューももう終わりなのだ。初々しくもぎこちない彼はもうここにしか残っていない。ライブ映像にもこの時期の彼は映っているのだが、やはり間近でその様子をとなるとインタビューに軍配が上がるのだ。
    「あぁもう!」
     ぶつん。ついにはテレビの電源が落とされた。数年前の彼が画面から消えて、顔を真っ赤にしながら毛を逆立てている彼がその前に立っていた。
    「ほんっとうに、なに、してるんだよ」
    「……真っ赤だな」
    「質問に答えろって!」
     そう吐き出したアベンチュリンに少しの笑いをこぼす。画面の中で作っていたそれとは比べ物にならないくらい、『彼』を感じる表情だった。
    「いや、次のドラマがそういう設定だったんだ」
    「……そういう?」
    「長年寄り添った恋人の、過去と出会う話だ」
     ぱちん、と彼のネオンが瞬いた。そして、なんとも難しそうな顔をする。これはどういう感情のときに出るものだろうか。そう考えるのは職業病なのかもしれない。
    「次、恋愛ドラマなんだ」
    「そうだな」
    「オファー、受けたんだ」
    「……仕事に関しては不干渉であるべきだ。そう言ったのは君だったはずだが」
     ころり、ころり。数分前には真っ赤な顔をさらしていたとは思えないくらい、その表情が移り変わる。彼だって数シーズン前ではキスシーンだってあったし、もうひとつ前にはベッドシーンもあった。さすがに実際にやってはいないだろうが。
    「……別に、そうだけどさ」
    「面倒な男だな、君は」
    「うるさいなぁ!」
     もう寝る! まだそこまで遅い時間ではない。そして彼は帰ってきてから風呂も、食事もしていない。なのにそんなことを言って部屋に引きこもってしまった。いつもならそれを咎めただろうが、しかし今回はいいだろう。
    「相手役のオファーはまだだったらしい」
     そのオファーを受け取るのはいつだろう。それを受け取って悲鳴が上がるまであと十秒。そしてそれに耐えきれず、レイシオが笑うまであと十五秒。
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    DONEレイチュリ🧂🦚
    ワンウィーク【幸せのかたち、さよならから始まる】

    失ったものが降ってきた🦚の話
     それは、遠い昔になくしてしまったものだった。日中は熱すぎるくらいなのに陽が落ちると途端に寒くなって、そんな中で口にする薄味のスープ。具材なんてほとんどない、いっそ湯を沸かしただけといってもいいくらいのものだ。けれどそれを飲みながら過ごす日々は決して地獄なんかじゃなかった。血のつながった家族がいて、二人でそれを飲みながら他愛もない話をする。明日がどうなっているかも分からないのに、それでも確かに満たされていた。
     地獄というのならその後、そんなたった一人の家族を亡くした時から始まったものだろう。どうして生きているのかも分からない、どうして死ななかったのかも分からない。ただこの『幸運』のおかげで生きながらえていて、この『幸運』のせいでまだあのオーロラの下には行くことができなくて。でも『幸運』以外にも、一族全員の命がこの生の土台にあるのだ。だからそれを自ら手放すなんてあってはならない。そんなことをしたら、オーロラの元で再会するなんて夢のまた夢だから。そんなことばかりを考えて、死ねなくて、ずっと生き続けて。
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    DONEレイチュリ🧂🦚
    ワンウィーク【賽は投げられた、カウントダウン】

    🦚が投げた賽とその末路
     ピアポイントまで戻る遠征艇の中でアベンチュリンは頭を抱えていた。いや、確かにそれの原因を作ったのは自分だけれど。だからある程度の報復というか、仕返しというか、そういうのがあるだろうと覚悟はしていたけれど。でもこれは、決してアベンチュリンの想定内には収まらない。
     どうしよう。どこかに時間を巻き戻すような奇物はないだろうか。もしくは対象者の記憶を消す薬とか方法が落ちていないだろうか。後者ならメモキーパーに依頼すれば、どうにか。アベンチュリンなんていう石心の依頼を受けてくれるようなガーデンの使者がいるとは思えないけれど。
     本当に、どうしてあんなことを言ってしまったのだろう。でも仕方がなかったのだ。だって今回の遠征はそれなりにリスクがあって、だからもし言わなかったらそれを後悔するんじゃないかと、思って。ピノコニーの時はまだそういう関係ではなかったから何も言わなかったけれど、今はそうじゃないからそれなりの礼儀があってしかるべきだろう。彼という人が心を明け渡してくれたのだから、アベンチュリンも同じものを差し出すくらいの気概はある。
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