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    ななみや

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    ななみや

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    天彦カリブレ後妄想。若干ふみ天に見えなくもない。

    天彦カリブレ後妄想昨日何が起こったのか、誰も明確に思い出せない。ただ、ある人物に何かが起き、それに半ば全員が巻き込まれたことは覚えていた。
    謎が解けたはずなのに何故か更に謎が深まったような…。そんな、なんとも不安定な感覚を残したまま、ハウスの住人たちは翌朝を迎えていた。
    「おはようございまーす」
    「おはよ」
    「おう」
    「……」
    朝の支度を終えた住人達が次々とリビングに入ってくる。
    「今日の朝食も美味しそうですね、依央利さん」
    「出来たてだよー。僕が食べさせてあげるね」
    「いえそれは結構です」
    「ねぇ猿川君。僕の椅子、絶対にひかないでね」
    「断る、ほらよ」
    「ありがと」
    「ふみや、さん?」
    「……」
    「(これ寝てるのかな、起こした方が良いのかな)」

    いつもの賑やかさと共に依央利以外の5人が席に着いたところで、ハタと違和感に気づいた。
    「あれ、天彦さんは?」
    普段なら朝に会話をするのが少しばかりしんどい程に存在を主張している天彦が、そこにはいなかった。
    「天彦さんがここまで遅いのって珍しいね。ふみやさんですら起きてるのに」
    「zzz…」
    「いやこれ寝てますね。ふみやさーん!おはようございまーーーす」
    「また出かけたんじゃねえの。別荘、だっけか?」
    「うーん。テラさんふみやさん、今朝天彦さん見かけました?」
    「さぁ。今朝は鏡のテラくんにしか会ってないけど」
    「zzz…」
    「大瀬さんは?」
    大瀬も無言で首を振る。
    「猿ちゃんの言う通り出かけたのかな。僕、一応天彦さんの部屋見てくるね」
    そう言って依央利がエプロンを外した時だった。
    「おはようございます。すみません、どうも寝過ごしてしまったようです」

    少しバツの悪そうな天彦が遅れてリビングへと入ってきた。
    『?!』
    天彦がリビングに足を踏み入れると同時に、言い様のない悪寒が他の住人達を襲った。

    「え、ナニコレナニコレ」
    「こ、これは一体」
    「きっもち、悪ぃ…」
    そこに立っているのはいつもの天彦だ。しかし、オーラとでも言うべきか、彼の纏う空気が明らかに違った。
    「おや、皆さんどうされたんですか?」
    思わず椅子から立ち上がり表情を固くする一同に、心配した天彦が更に足をすすめようとする。
    「天彦ストーーップ!そこ、動かないでつか近寄んないで」
    「テ、テラさん?!何故ですか天彦今朝はまだ何もしていませんが」
    突然の命令に訳が分からず混乱しながらも、天彦がその場に静止する。
    「これやべぇぞ」
    「どういうことなのでしょう」

    「あの…皆さん?せめて天彦を朝から放置プレイする理由だけでも教えていただけませんか?」
    『……』
    誰も説明のしようがなかった。
    感じているのは、言うなれば暴力的なまでの全肯定欲。生きているだけで全てを許されるような陶酔感が、腹の底から無理やり引きずりだされ、満たされる。

    負荷を負わない自分を肯定したい。
    NOという意思が溶けていく。
    秩序の乱れを認めたい。
    自分と同じぐらいに他人が愛しく感じる。
    自分が生きていることを許したい。

    アイデンティティの崩壊も良いところだ。気を抜くと、この訳の分からない欲に身を任せてしまいそうになる。
    そうして必死で抵抗するさ中、彼らの脳裏に浮かんだのは
    『これを外に出したらヤバい』
    だった。
    カリスマである彼らは、そのカリスマ性故に、それに反するような力に抵抗することが出来た。しかし凡人はどうだろう。全てを受けいれ、あるがままで良い、素晴らしいという甘美な囁きに抗おうとする者がどれだけいるのか。心のままに暴れる凡人、感涙にむせぶ凡人、満たされ放心する凡人…町中パニックになるのは目に見えている。そんなことあってはならない!
    「天彦」
    緊張の走る中、天彦に声をかけたのはふみやだった。
    「朝メシ食ったら、一緒に買い物行こう」
    先程まで寝息で返事をしていたのが嘘のように目が覚めているふみやがそこにいた。なんならふみやだけ既に朝食を食べ終えていた。
    『はぁぁ?!』
    「ふみやさんからデートのお誘いなんて!天彦はとても嬉しいです。どちらへ参りましょう」
    「うん、なるべく人の多いところが良いと思うんだ」
    「待て待て伊藤ふみや!」
    慌てたテラがふみやを連れ戻す。
    「今のあいつを人混みに連れてくなんて絶ッ対に駄目だから!」
    「ダメ?なんで?」
    「もうそれいいから。あんなの連れて行ったら町がとんでもないことになるでしょ」
    「うん、なるね」
    「カオスだよ」
    「うん、カオスだね」
    「ヤバいでしょ」
    「うん、ヤバいね」
    「じゃなんで連れてこうとしてるわけ?」
    「なんで?面白そうじゃない」
    「出たよ。じゃあ何、町をパニックに陥らせるために天彦を連れていこうとしてるの?」
    「うん。俺今、何かをめちゃくちゃにしたいんだよね」
    いつもと変わらない様子のふみやだったが、彼もまたこのおかしな影響を存分に受けていた。ふみやは他の5人と違い抵抗しない。駄目?何が?ありのまま?別にいいんじゃない?狂っちゃいけない?そうとも言いきれないだろ。
    「あの、テラさん、ふみやさん?なんのお話をされているのでしょうか」
    「悪い。こっちの話。ところでどこか行きたい場所ある?」
    「あ、こら伊藤ふみや!」
    「人が多いところでしたら最近観光地として有名なあそこはどうでしょう」
    「この間CMに出てたとこ?いいね」
    「あそこのフォトスポット横のポールがポールダンスをするのにとても良さそうで、いつか披露したいと思っていたんです」
    「いいね、楽しみにしてるよ」
    周りの緊張をよそに恐ろしい予定がどんどん決定していく。
    「フォトスポット横でポールダンスぅぅ?ひえぇぇぇ!まずいよまずいよ!」
    「せ、先生の今の状態でそんなものを披露したら」
    「多分、死人が出る…」
    「おい天彦のやつ絶対外に出すな!部屋閉じ込めろ!」
    猿川の号令と共に意を決した4人が天彦へと飛びかかる。
    「え、え、テラさん?理解さん?依央利さん?大瀬さんまで?!」
    「天彦、神妙にしろー!」
    「世界の秩序のためです」
    「部屋に戻ってください」
    「すみません」
    ただならぬ雰囲気の4人に気圧されるまま、天彦はあっというまに階段を登らされ自身の部屋へと戻された。
    『これはどういうことでしょうか!天彦が何か?せめて説明を、説明をお願いします〜!』
    扉の向こうから天彦の悲痛な声が聞こえるがそれに応える余裕などない。
    「おし、今のうちに扉溶接すんぞ!」
    『溶接?!』
    「それしかありませんね」
    「仕方ないよね」
    「正直今も、気を抜いたら…」
    『何故ですか、何が仕方ないんですか!』
    「大丈夫、天彦、俺と出かけよう」
    『ふみやさぁん!』
    「だめだっつーの!」

    そうして扉が溶接される、天彦が窓から脱出を試みる、落ちたところを穴を掘って埋めるなどの攻防がようやくおさまったのは、天彦のオーラが落ち着いた夕方になってのことだった。

    「あの、ふみやさん、結局これはなんだったんですか?」
    「あぁ…まぁまぁまぁ」
    「まぁまぁじゃないですよ。はぁまったく、この時間じゃデートもできないですね」
    「え?」
    「え?」
    「…あ、うん。そんなこと言ってたな」
    「ふみやさん?」
    「かわりにカフェ行こう。食べたいケーキがあるんだ」
    「ふみやさん?」
    「天彦の奢りで」
    「ふみやさーん!」
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