ダームストラング1898 魔法を使える者、使えない者、この両者の歴史が交わる時、魔法を使えない者たちの歴史には奇跡と言われるものが刻まれてきた。
記憶を消し、忘れられ、改竄し、改変し、だが、残る魔法のよすがは、人に最も読まれたという六六からなる書物にもくゆる。
けれども、魔法族にも奇跡はある。
円、正三角、垂直線。
強いものほどシンボルは幾度だって簡易になぞれるようにできている。
魔法族ならば誰もが知り、なのに誰も生きて目にした者がいない、三つの魔法具をそれぞれに形づくる。
蘇りの石、透明マント、ニワトコの杖。
即ち、死の秘宝。
非魔法族には不可能な力を持つ魔法族にも死は乗り越えられず、伝説がある。
ゲラート・グリンデルバルドは、それを心地良く思った。手応えがほしい。
そうでなくては。
どこからともなく溢れて溢れて、いてもたってもいられず疼く己の全てに対して、対価があってほしい。
この世の全ては知った庭であるのように、征服のしがいのないものばかりではたまらない。
己の解法を待つ、ただの謎。手にされるのを待っている極大の力を持つ宝物。
差し向けた杖は光を放った。眩い、高温の熱をもつ真白い光だった。それを学び舎とした校舎の壁へと杖を振るう。
円、三角、垂直線。
手に入れるべきものの形を焼き付ける。