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    たすけて

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    たすけて

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    虚月館ネタが入ってる新茶ホム。6.5の前に書いてたものを書き上げました。


    ※リップサービス→親友の名前で呼ぶ例のアレのことです

    存在証明の崩落「おや、誰だっかな、キミは」
    もしや依頼人かい? と探偵は愛想良く笑む。食堂にいる周囲の反応は、まさに凍りついたと言っていい。どう反応すべきかと固まっていると、当事者がニコリと微笑みながらホームズの前に立つ。
    「初めまして、聡明たる名探偵殿。私はホーソーン。かつての貴方に救われた者です」
    周囲がまたもや固まる。近くにいた彼らのマスターたる彼女はよりによってその名前かよと言いたげな表情を浮かべる。
    「ここでは医者の真似事をしているしがないサーヴァントだヨ。よろしく頼むよ」
    「ふむ。どうやらそのようだね。私は経営顧問を担当しているシャーロック・ホームズ」
    よろしく、ドクターとどこか媚を感じさせる声音でホームズは微笑む。その胡散臭さにいつもなら文句を飛ばしているモリアーティは、愛想良く微笑を返している。
    周囲の空気とは真反対ににこやかに交わされる挨拶。顔を真っ青に染めた藤丸はちょっとホームズ、相談があるんだけどと彼を食堂から連れ出す。後に残された食堂のサーヴァントたちと数名の職員たちはシン……と静まり返っている。誰もがモリアーティを直視することが出来なかった。腫れ物扱いされている当人はと言うと、俯き掌で顔を覆っていた。その悪辣極まる笑みを隠すために。


    「なんであの名前を名乗ったの?」
    ホームズをバイタルチェックをしたが、何の異常も見当たらなかった。何かの呪いか、はたまたモクモクした薬物が何らかの異常を彼に与えたのか、医療系サーヴァントが調べに調べたが、お手上げだった。実際のところ、それほど支障がないのが現状だ。ホームズはモリアーティを忘却しているが、しっかりとカルデアの経営顧問として機能している。
    「医者と名乗れば奴の警戒心が薄れるかと思ってネ」
    「そんな簡単に人を信じるタイプじゃないと思うけどなぁ」
    「無害な一般人だと判断すれば、信用は得られずとも捨て置いていいと判断するからネェ。あの人でなし」
    「うわ……」
    藤丸が引いてみせると、君も気をつけるといいと謎のアドバイスを与える。それが役立つことがあるのか否かはまだ未定である。
    「奴の記憶がどの程度失われてるのかも気になったからネ」
    「なるほど……」
    納得したように頷いている彼女に、ニコリと人好きのする笑みを浮かべる。ただし本人の信用の無さ故か胡散臭さを感じさせるのは愛嬌というものである。
    「君が頭を悩ませるのももう少しの間さ、マイガール。なにせそろそろ飽きる頃合いだからネ。私と周囲の反応を今は楽しんでいるが、人はどのような状況でも慣れるものだからネ」
    物珍しくもなくなるさとつまらなそうに彼はカップをソーサーに戻す。彼にしては乱雑な仕草で、かちゃりとカップとソーサーが音を立てる。
    「あとマイガール。その編成悪くは無いがねぇ、ここに穴が空いてるよ」
    「あっ」
    とんとんと軽く彼女のタブレットに触れて、指摘する。その仕草は軽やかなもので、苛立ちなど消え去ったかのような雰囲気だ。でも、演技なんだろうなぁと藤丸は何となく察する。


    自動扉が開くのと同時に、ホームズは顔を上げて、入室してきた人物に目を向けた。その顔を見て、ああ、ちょうどよかったと独り言のように零した。
    「やぁ、ホーソーン博士。少し書類整理に手間取っていてね、できれば手伝って欲しいのだけど」
    「それは医者の仕事かネ?」
    「医者というより雑用係だね。一人でもできなくはないが、人手が欲しいところなのだよ」
    「ほぉ」
    散乱してる書類を1枚とる。大した情報は載っていない。当たり前だが、シャーロック・ホームズがジェームズ・モリアーティに重要な情報を渡すわけがない。例え、記憶が無いフリをしていたとしていても。
    「いつものリップサービスはないのだね、シャーロック」
    その場にいる、適当な人物をサイドキック役を押し付けたというのに。なんとも身勝手な男だ。
    そう告げれば、ホームズは目を細め、口角を上げる。イタズラが成功した子供のような笑みを浮かべた。
    「キミの感情の変化は楽しかったよ」
    悪びれることすらせずそう言うのだから、手に負えない男だ。そんな男にご執心の私も大概終わっている。
    「そう? お気に召したなら良かったヨ」
    「演技力もそれなりにあるはずなのに、キミは隠すつもりがなかったからね」
    ずぅっと私を見ていただろう? と上機嫌に続けられる言葉。全くもってその通り。私はこの男を監視し続けていた。
    「私で遊んでいた、と」
    「言ってしまえばそれだけの話になってしまうね。うん、退屈しのぎにはなったよ。ありがとう、教授」
    人でなしめ。口には出さながったが、心底そう再認識させてくれる。
    ソファに腰掛けていたホームズにつかつかと近付き、思い切りその細い体を床へと投げ捨てる。書類の束が雨のように降り注ぐ。
    素直に押し倒された男は、上機嫌に目を細め、私を見詰めている。
    「お前が私で遊んだというのならば、私にもその権利があるだろう? シャーロック」
    散々、弄ばれたのだ。この鬱憤は本人で晴らすのが一番良い。
    ホームズはその言葉を聞いても、愉快そうに口角を上げるばかりだった。
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