少女たちのマカロン マカロンをつまんでいると、珍しく傑が俺の部屋のドアを開いた。手つきはあくまでも優しく、けれど決して逃がさないといったふうに。もしかしたら、彼は夜蛾先生か誰かから、俺を連れて来るように言われているのかもしれない。俺にとってはどうでもいいことだったけれど、彼にとっては大事なことなんだろう。
「あ、傑。何か用?」
振り返りながら俺は言う。すると傑はため息をついて、次のように言った。
「何か用? じゃないよ。学長の呼び出しを無視するなんて正気の沙汰?」
そう言われれば、俺は今朝から昼過ぎに学長室に来るように、大切な用事があると呼ばれていたのだった。理由は知らされていなかったから、また五条家のごたごたか何かだろう。携帯の時計を見ると午後二時になっていた。まぁ、これじゃあ怒られても仕方がない。でも俺にだって用事があるのだ。何でもかんでも怠惰と決めつけて欲しくない。
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