散文 ふっと目を覚ますと、目の前に石流の寝顔があって、乙骨はぼんやりとその顔を眺めた。下睫毛の伸びた目は閉じられていて、薄く開いた口が僅かに呼吸を刻んでいた。
(……寝てる)
その状態は明らかで、乙骨もほんの一瞬前まで寝ていたのだから当然だ。
(いつも僕よりさっさと先に起きてるから、こんなにしっかり寝顔を見るのは珍しいかも)
そんな風にまじまじと石流の顔を見つめていれば「んー」と唸りながら、石流が身動いだ。
「……おっこつぅ~~…」
そしてその口が思ったより気の抜けた声で自分のことを呼ぶものだから、乙骨は目をパチクリとさせたあと、フフッと笑みを零した。
(僕の夢でも見てるのかな)
そんな風に思ったら、なんかかわいいなぁと思って、じんわりと愛しさが溢れてきた。
1533