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    16natuki_mirm

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    16natuki_mirm

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    イルアズワンドロ「うさぎ」で書き始めたけど間に合わなくて周回遅れしちゃった上になんだかんだ2ドロしちゃったやつ…………

    #ワンドロ
    #イルアズ
    iluaz.

    【イルアズワンドロ周回遅れ】うさぎ ぼふん、と、何かが爆発して、あたり一面に大量の粉が舞い上がった。
     魔具研の師団室を片付けている最中だった。私の手にした何か、たしかウサギのぬいぐるみのようなものだったと思うのだが、それが、持ち上げた途端に爆発したのだ。といっても、爆発の威力そのものは風船が破裂した程度の些細なもので、それよりも、飛び散った粉の方が厄介だった。
    「アズくん、大丈夫?!」
     入間様の声が、粉塵の向こうから聞こえてくる。両手で粉を払うような仕草をされながらこちらに近づいてくる影の方向に向かって、私も舞い上がった粉をかき分けかき分け進んでいく。そのうちに粉はすっと空気に溶けるように消え始めた。
    「ケホッ……はい、大丈夫で、す……?」
     ようやく入間様のお姿と、ついでにその向こうにアホクララの姿も見えるようになった。粉を吸い込んでしまったせいで咳き込みながら返事をする。が、入間様の視線はなぜか、私の顔よりもやや上で止まっていた。
    「入間様、何をそんなに驚いた顔を……」
    「アズアズ、そ、その耳、耳……」
     答えたのはクララだった。入間様はすっかり言葉を失って、口をぱくぱくさせていらっしゃる。
    「耳?」
     何かついているのかと思って、両手で耳に触れてみるが、特に変わったところはない。しかし、入間様もクララも、私の頭上に目をやって、やけに驚いた顔をしたままだ。
    「そっちじゃなくて、頭の上の……っ」
     入間様がようやく口を開いた。頭の上、というそのお言葉に従って、頭上に手を伸ばしてみる。
     すると、指先に髪以外の何かが触れた。
    「…………な……っ」
     ふわりとした触り心地の、体温のあるなにか。触れている感覚と共に、触れられている感覚もある。本来何もないはずの頭の上に、すっくと二本伸びた、おそらく、これは――
    「なんだこれは――――ッ?!」
     思わず声が漏れた。
    「耳……だねぇ……」
    「耳……だねぇ……」
     入間様とクララの言葉が重なる。
     鏡で見たわけではないから、詳細な様子はわからないが、頭の上に、ふわふわした二本の長い何かが生えている。耳、と二人が言っている、ということは、耳なのだろう。こんな形の耳を備えている生き物など、いくらもいない。
    「うさぎ……だねぇ……」
     入間様が、そのうちのひとつ、一番オーソドックスなものの名前を挙げる。
     やはり、ウサギの耳のようなものが頭から生えているらしい。
    「モフモフだねぇ……」
    「っ、コラ、触るなアホクララ!」
     右側から伸びてきた手を払いのけると、今度は左側からも手が伸ばされて、耳、らしきものに触れる。ぞく、と、擽ったいような、甘く鋭く痺れるような、悪寒めいた感覚が背筋を駆けていく。思わず肩が跳ねた。
    「これ、感覚あるの?」
    「は、はい、その、かなり、鋭敏に……」
    「あっ、ごめんね、触られるのイヤだよね」
     入間様は咄嗟に手を引っ込めてくださった。触れられると違和感があるのに、手を離されるとそれはそれでどこか物足りないような気がしてしまう。それに、気を使わせてしまったのにも気が引けた。
    「いえその……構わないのですが、ただ、どうにもくすぐったくて」
     なんとなく落ち着かなくて、入間様に触れられていた方の耳――これは耳だと受け入れることにした――を撫でつけながら言うと、入間様はいつも「大丈夫だよ」と仰るときの顔で目を細め、口元に笑みを浮かべられた。しかし、入間様の口が動くよりも早く。
    「いやぁ……アズアズ、似合うねぇ」
     横からクララがくちばしを挟んだ。しみじみと私の頭上に目を遣って。腹の立つ。
    「なっ、あ、アホ、嬉しくないわ! ……っ!」
     思わず叫んでしまってから、予想外の現象に思わず耳を――本来の悪魔の耳の方だ――を塞ぎ、反射的に顔をしかめた。
    「アズくん、どうしたの?」
    「どうも、普通の耳よりも音を細かに拾うようで……自分の声が大きく聞こえて、頭痛が」
     心配そうな入間様の声に薄目をあけて答えると、入間様はお可愛らしい仕草でご自分の口を両手で塞いだ。
    「えっ、それは大変……静かにした方がいいよね」
    「あ、いや、そこまでお気遣いいただかなくても大丈夫です。アホクララは静かにしていろ」
    「ぐ、なぜバレた」
    「お前のやりそうなことなどお見通しだ」
     例のポケットからメガホンを取り出そうとしていたクララを声で制していると、入間様が不意に立ち上がった。
    「とりあえず、誰か先生に見てもらわないと……医務室まで歩ける?」
     こちらに向けて、その小さくも力強いてを差し出してくださる。すぐにでもその手を取りたい反面、医務室まで歩くことを考えると、どうしても尻込みしてしまう。
    「歩けることは歩けますが……」
    「どこか変な感じする? 大丈夫?」
    「……この格好で外を歩くのは……その、少々、恥ずかしく…………」
     私の体の心配をしてくださる入間様に向かって大声で言うのは躊躇われるような、酷く矮小な理由ではある。が、しかし、こんな、ふわふわの愛らしい耳など付けて、医務室までの校内を練り歩くことを考えたとき、周囲の目が気にならないと言えば嘘だ。どう考えても目立つ。
    「…………そう、だね。似合いすぎてて違和感なかったから、つい……」
    「い、入間様まで!?」
    「だって……ほら、髪の毛がさ。アズくんの、いつも、ピンクなのが二束、頭の上でひょこひょこしてるから、それが大きくなっただけ、みたいな気がしちゃって」
    「確かに!」
     クララのアホが性懲りもなく大声を出す。何が「確かに」だ。確かに薄紅色の髪と、旋毛の辺りの毛が束になりやすいのは、家系の特徴であるが……
    「うるさいアホクララ大声を出すな」
     不機嫌を滲ませた声で牽制するが、クララのやつは大して気にする素振りもない。
    「でも、じゃあ、先生呼んでこようか。魔術の効果がどれくらい続きそうかくらいはわからないと、心配じゃない」
    「……そうですね……いやしかし、入間様にご足労をお掛けする訳には。教師も皆忙しいでしょうし……」
     私のことに入間様が心を砕いて下さるのは地獄にも堕ちるような喜びであったけれど、しかし、心配をお掛けするのは忍びなく、かと言ってこの頭で堂々と外を歩く度胸はなく、だが命の危険があるわけでもなさそうな魔術事故程度のことで教師を呼び立てるのも礼を欠く。
     私と入間様が、うーん、と思考の堂々巡りに嵌まろうとしていた、そのときだ。
    「わかった! じゃ、私と入間ちもウサギさんしよ!」
    「は?」
    「えっ……」
     アホクララが突然何か言い出した。その意図を我々が理解できずにいるうちに、アホはアホらしくアホな顔でポケットをごそごそと漁ると、ずり、と何か布の塊らしきものをそこから取り出す。
     ――そう、まるで、魔苦針ドームの楽屋で、「くろむ」の代役を用意しようとしたときのように。
    「ほら、ウサ耳つきヘアバンドふたつとー、ウサギさんスーツ三人前! これ着て、魔具研の看板持ってー、ほら、魔具研宣伝パレードの出来上がり! これなら外歩いても恥ずかしくないっしょ!」
     てきぱきと三着の衣装を一組ずつ入間様と私と、それから自分の分とに取り分けて押しつけながら、アホはアホな顔に満面の笑顔を浮かべた。
     押し付けられた衣服は、派手な原色のトレーナーに、アップリケのたくさん付いたデニム地のオーバーオール。ついでに、入間様とクララの手元にはウサギの耳を模したヘアバンド。子供が着ていれば可愛らしいのだろうが、我々サイズではもう、道化とか芝居の衣装にしか見えない。確かに普段の制服のまま、突然私の頭上にだけ耳がある状況と比べれば、不自然さという点では軽減されるだろうが、恥ずかしさという点で言えば大差ない、どころか、むしろ増すのではないだろうか……
    「……い、いやクララ、これはこれで結構恥ずかしい……いやでも、これでアズくんの恥ずかしさが少しでもマシになるなら、これしき大丈夫……!」
     入間様もそう思われたらしい、が、しかし、すぐに決意の表情を浮かべ、渡された衣装に袖を通された。
    「……ッ……! 入間様、なんというお心の広さ! ああそしてなんというお可愛らしさ!」
     目にも鮮やかなブルーのトレーナーに、裾のだぶついたオーバーオール。そして愛らしいウサギ耳のヘアバンド。衣装を召された入間様は、それはもう愛らしかった。世界で一番可愛いと言って過言ではないだろう(以下、一万字ほどの入間賛歌割愛)。思わず手がス魔ホに伸びる。
    「あ、アズくん、写真は勘弁して……!」
     わわわ、と入間様の手が、ス魔ホの外カメラのレンズを塞いだ。仕方がないので撮影は諦める。
     そして、入間様が着替えて下さっているというのに私が着替えない訳にはいかない。迅速に着替えを済ませると、とっくに着替え、「魔具研」と書かれた看板を担いだクララに手を引かれる。
    「んじゃ、医務室に向けて、しゅっぱーつ!」
    「しゅっぱーつ!」
     入間様に背中を押されるようにして、師団室を後にした。

     そうやってしばらく歩いた頃。
    「……アズくんのウサ耳……可愛いなぁ……モフモフしたい……んんん……いやいや……ダメダメダメ……」
     普段なら絶対に聞こえないだろう、ほんの微かな声が背後から聞こえた。
     ――どうぞ、と言ったら、聞かれてしまった、と驚かせてしまうだろうか――

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    16natuki_mirm

    DONE1/28の悪学で無配にしたセパソイです。イルアズしてるイルマくんに片思い?しているソイソイと、そんなソイソイに片思いしているセパくんによる、いつかセパソイになるセパソイ。
    【セパソイ】あなたと、あなたのすきなひとのために「先輩」
    「ぅわっ!」
     突然後ろから声を掛けられて、ソイは思わず羽を羽ばたかせた。
     ちょっぴり地面から離れた両足が地面に戻って来てから振り向くと、そこには後輩であるセパータの姿があった。いや、振り向く前からその影の大きさと声でなんとなく正体は察していたのだけれど。
    「……驚かせましたか」
    「……うん、結構」
    「すみません。先輩、自分が消えるのは上手いのに、僕の気配には気づかないんですね」
     セパータが意外そうな顔を浮かべる。それに少しばかり矜持を傷付けられたソイは、ふいっと顔を背けると、手にしていた品物へと視線を戻した。
    「……自分の気配消せるのと、他人の気配に気づくが上手いのは別でしょ。……いやまあ、確かにね、気配消してる相手を見付けるのも上手くないと、家族誰も見つからなくなるけどうち。だから普通の悪魔よりは上手いつもりだけど、今はちょっと、こっちに集中しすぎてただけ」
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