Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    tasuku

    成人済腐女子

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 10

    tasuku

    ☆quiet follow

    ズゴックコクピットのアスキラ書きました。

    「キラ、何があった?」
     負傷した肩を庇いながらコクピットによじ登るキラに手を貸すアスランは、周囲とキラの身体の状況に素早く目を走らせる。
     敵影なし、爆発の恐れのある残骸もなし、視認可能なミサイルの類もなし。頭部の外傷、及び出血なし。手足の動作に異常なし。左上腕負傷部に僅かな出血。
    「……わかんない。なにも」
     顔面蒼白。呼吸浅め。瞳孔の拡張、及び焦点が合ってない。極度のストレス状態と推定。
    「わかった。俺が調べる。だからもう大丈夫だ」
    「……うん」
     複座式では無い狭いコクピットにキラの席があるはずもなく、操縦席のアスランの膝に座らせる。抵抗もなく当然のように横抱きにされたキラは俯いて、どこでもない虚空を見詰めて黙っている。
     思っていたより軽い体躯に、アスランの口から小言が漏れそうになったが、今はそれどころじゃないと操縦桿を握る。
    「心配するな。俺が何とかしてやる」
    「……うん」
     シートベルト代わりに腰に手を回し機体を発進させると、慣れた重力が二人を押し潰す。アスランの肩に額を押し付ける形になったキラが小さく「……あ」と呟いた。
    「どうかしたか?」
    「アスランの匂いがする」
     強ばっていた顔を急に幼くして、キラが微かに笑みを浮かべた。全身から力が抜けて、アスランにかかる重みが僅かに増した。
    「仕方ないだろ?我慢しろ……っておい!?キラ!?」
     まだ戦闘中で風呂に入る余裕もない現状で、多少汗臭いくらいお互い様なんだから我慢しろ。そう言いかけたアスランの首にキラが手を回し、キュッと抱きつく。
    「……あったかい」
     猫のようにするりと頬擦りしたキラはアスランの首元に顔を埋めて、そのまますーすーと寝息を立て始めた。
    「…………まさか、寝たのか?」
     呑気なのか、図太いのか、意識を保っていられないほど追い詰められていたのか。アスランに身を任せて寝入ってしまったキラにアスランは信じられない思いで目を瞬かせた。
    「まったく、お前は。この状況でよく寝れるな?まだ危機は去っちゃいないんだぞ?」
     呆れを口にしながらも、アスランは優しい手つきで柔らかな茶色の髪に指を通す。滑らかで、コシが強く、少し外に跳ねた短い髪。この手触りだけは背が伸びても、何年経っても変わらないなとアスランの目元が優しくなる。
    「いいよ。今は寝てろ。俺が守ってやるから」
     戦い続けて、疲れ果てて、羽までもがれた大事な幼馴染みのつかの間の休息となれるなら、針でも核でも盾となろう。
     腕の中の細く、軽く、頼りない親友はまだ生きている。
     自分が生きている限り、キラは誰にも殺させやしない。
     そう固く誓うアスラン・ザラに、もう迷いはなかった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🙏🙏🙏🙏❤❤❤❤❤😭💴💖💖😭😭❤❤🙏🙏❤❤💖💖👏😭😭😭😭💖💖💖💖😍💞😍💘💖💖💖❤💖😭😭😭😭👏👏👏🙏🙏🙏💖👏🙏🙏🙏💖💘💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works