休憩時間、あまりの暑さに机で伸びている釘崎に虎杖の居場所をたずねる。怠そうに「知らない」とだけ言われ、軽いため息をついた。虎杖の書いた報告書が再提出をくらったらしく、その伝言を頼まれている。が、本人がどこにもいない。メッセージを送っても応答なし。高専に入るまで持っていなかったからなのか、虎杖はスマホを携帯していないことが多かった。今日もおそらく、教室に置かれたままのリュックのポケットで震えているんだろう。
仕方なく、返却された報告書を片手に校舎をうろついて回る。少し捜して見つからなかったら、諦めて次の授業終わりにでも渡すつもりだった。別に急ぎではない。夏の終わりかけ、山の中だから都心のあの嫌な暑さではないとはいえ、十分に気温は高かった。まさか外にでも出ているのか? と予想したところに、そのまさか、窓の向こうで日差しに照らされているシャツ姿の背中が目に入った。普段あまり寄り付かない、校舎裏の花壇の前でしゃがみこんでいる。
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