やっぱり君がいちばん-即イチャVer-※新城さんの例のバナーネタ その2(序盤は一緒)
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「いやーお姫様抱っことか初体験だったぜJaja!!」
新レジェンド・ニューキャッスル。彼を囲んでワイワイとしている最中、離れてその様子を眺めていた。無論、俺以外にも距離を置いて静観しているものはいるが、だからと言って静観者同士で話すこともなく、各々が時間を潰している。
騒ぐ輪の中から聞こえてきたのは恋人の声。
(初体験……)
そのワードに少しだけ心がザラつく。みっともない嫉妬心が首をもたげてしまいそうになって、深呼吸して無理矢理心を落ち着けようとしても、大して意味を成さない。
こちらの葛藤も露知らず、オクタンは件のバナーを撮影した時の話をしている。そのうち誰が言い出したか、オクタンを姫抱きできるかどうかで言い合いになり、試した方が手っ取り早いとオクタンお姫様抱っこチャレンジが始まってしまっていた。
(俺だって)
できるものならしたい。ゲームに参加し始めてかなり筋肉はついたし、小柄な女性レジェンドなら運べるだろうが、そもそもオクタンと大して身長差もなければそこまでの体格差はない。
何とか抱っこできたとしてもその後で無様な姿を晒すのは明白だった。
軽々とオクタンをお姫様抱っこしていく他の男性レジェンドと、何故か拒否もせず大人しく他の男の腕に抱かれている恋人を見ていられなくて視線を落とす。
(ダメだ……。ハックの調整でもするか)
ここを離れようと立ちあがろうとした瞬間、視界に影が落ちた。
「クリプト〜!とりゃっっ!!」
「おわっ!?!う゛っ」
思いっきり“何か”が飛び込んできて、立ち上がれず座ったままで“何か”をとりあえず抱き抱える。
「へへっ俺様着地〜」
「急に危ないだろシルバ!」
「ー。こう言う時は“どうしたんだ?オクタビオ♡”だろー」
俺に飛び込んできた“何か”なんてもちろんオクタンだ。何が嬉しいのか額をぐりぐりと俺の肩口に押し付けている。“オクタビオ”は二人きりの時だけって約束だろ…。
「馬鹿なこと言ってないで…」
「ふふーん♪やっぱりここが一番落ち着くぜ」
「おーおーイチャイチャは他所でやれよ〜」
「別に俺は」
「見せ物じゃねぇぞミラージュ〜」
足をバタつかせて人の上できゃっきゃっと騒ぐ恋人に頭を抱えていれば、ウィットに冷やかされ。否定しようとすればそれを遮ってオクタンが茶化した上で、ウィットに向けて中指を立てている。
「見せつけてんのはどっちだっての…」
「独り身はカワイソーだな!Jaja!!クリプト、お前のブース行こーぜ」
「ぉわっ、引っ張るな!」
今にもジャンプパッドを出して飛び出しそうなぐらい機嫌の良いオクタビオは、俺のブースに着いた途端、両手を広げてこちらを向いた。
「ん!」
「は?」
「抱っこ!」
まるで親にせがむ子どものように無邪気な笑顔で言い放つオクタビオ。何を馬鹿な…、血迷っているのか。
「馬鹿言うな、無理だ」
「ー!抱っこ!!」
「あぶっ!!っもぃ…」
素気無く断れば、勝手に飛びついてくる。慌てて腕を回して支えるが一瞬でも気を抜けば後ろに倒れそうだ。
「Jaja!!無理じゃねぇじゃん」
「危うくお前を落とすところだった」
「落とさなかったな。いいこ、いいこ」
情けなくも、よたよたしつつなんとか備え付けの簡易ベッドに座れば、カラカラと笑うオクタビオ。落として怪我をさせるなんてことがなくてよかったとほっとしていれば、当の本人は満足そうに俺の頭を撫でている。
「よっ…。やっぱあんたが一番」
向かい合っていた姿勢から、俺に対して横向きに座り直すオクタビオ。体の側面を俺の胸にくっつけるようにして、しばらく位置を探った後、いいポジションに落ち着いたのか、ふぅ、と満足げに息を吐いた。
「あんたの匂いと、体温と、あと心臓の音」
「うん?」
「安心する」
ーやっぱり君の腕の中がいちばん好きー
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満足した
2022−06−11 一生休日
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ベッターから移行
2022-08-31 一生休日