君と昼下がり缶詰するほどではないが仕事が立て込んでいるクリプトと見守るオクタン
※最初の一瞬だけクリプト視点で後はオクタン視点
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side C
(だめだ、少しだけ寝よう)
集中力が切れて、ワークチェアの背もたれに勢いよく凭れる。目頭を抑えると目から頭の奥へと疲れが鈍く響く。
忙しい。受けた依頼が立て込んでしまって、余裕がない。缶詰して徹夜しなければならないほどではないにしろ食事やトイレ、睡眠以外はほとんど仕事に持っていかれている。ワークチェアの背もたれを倒して、深く息を吐くとチェアに体が沈んでいく感覚がする。そのまま深呼吸をゆっくり続けていると意識は闇に溶けていった。
side O
リビングで雑誌をパラパラ捲っていたが、ふいにクリプトの部屋から聞こえていたタイピング音が止まっていることに気がついた。休憩に入ったのだろうか。振り返って閉じたドアを見つめていたが、何の物音もしない。そっと近づいてドアに耳を当ててみる。
「??」
何も聞こえない。どうしたのだろうかと首を捻りつつ、邪魔するのもと思いまたソファに戻って雑誌を手に取った。
雑誌を読み終えて、クリプトの様子を再度伺う。やはりタイピング音も物音も特にしなくて、少し心配になる。仕事の邪魔をするのは憚られたが、端末でぱぱっとメッセージを送る。クリプトはどんなに忙しくても必ずメッセージの返信はくれるから。扉越しにクリプトの端末がピロンと鳴るのが聞こえた。
「…………」
やっぱりおかしい。仕事をしている気配もないからメッセージに気付いてない訳でもなさそうだし。
(様子みるぐらいなら……)
別に部屋に入るなと言われているわけではないが、データを扱う仕事をしている以上無闇に部屋に入るべきではないと思っている。
音を立てないようにそっと扉を開けると、背もたれが倒れているワークチェアに横になっているクリプトが視界に入った。
(……寝てる?)
仕事部屋で寝るなんて珍しい。仮眠を取るにしても何時に起こしてくれと頼んでソファで寝るのに。
リビングのソファにかかってるタオルケットを取って、そっと部屋に入る。起こさないようにタオルケットをかけて、クリプトの足元にしゃがみ込んでみる。二人で住んでる家だからそこかしこにクリプトの気配があって当たり前だが、個人の部屋だから俺という不純物がなくてクリプトの気配しかなくて、全身クリプトに包まれてるみたいでドキドキするし、その一方で安心もする。ゆったりとした呼吸にあわせて動く胸を見ていたら気づかないうちに自分の呼吸が同調していて眠くなってきた。
握っていた端末でアラームをセットしてクリプトの太ももにそっと頭を乗せる。頬からじんわり伝わってくるクリプトの体温と匂いに包まれて俺は目を閉じた。
自分がセットした覚えのないアラームで起きたクリプトが、自分の太ももを枕にして寝ているオクタンに困惑するまであと30分。
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こう、膝枕……的な……なんかこうね。
2022-07-25 一生休日
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2022-08-31 一生休日