桜と満月ときみとポップの言う「良い場所」は城からかなり離れた山奥であった。人の手の入っていない森の中にルーラで運ばれた面々は、目の前に広がる光景に感嘆の息を漏らした。盛大に咲きほこる桜の木々を背に、ポップがへへんと自慢げに胸を張る。
「すっげーだろー? 俺も見つけた時はビビったぜ」
「こんな素敵な場所を見つけられたのだから、ポップくんのサボり癖も捨てたもんじゃないわね」
「サボってた訳じゃねえよ!ちょっと息抜きに飛び回ってただけで……」
目をそらすポップに、まあ今回は目こぼししましょう。とレオナが笑う。そうして、夜桜の宴が始まった。
姿が見えない。ヒュンケルが気がついたのは、宴が始まってから随分と時間が経ってからだった。夜も深い時間。少し風が出てきて、ひんやりとした空気が桜の花を散らしていく。
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