パンケーキ食べる!「チャンドラ中尉」
食堂で食事をとっていると背後から声を掛けられた。振り返った先にいた人物を見て固まる。
「コ、コノエ大佐!」
慌てて立ち上がろうとするが、食事中に声を掛けたのは僕だからと敬礼を固辞され、コノエが向かいの席に座るのを大人しく見守る。
コノエが持っていたトレーには幾重にも重なったパンケーキが乗っていて、クリームが山のように積まれていた。パルが食べているのを見て胸焼けしないんだろうか、なんて思っていたのが数日前。まさかまた同じ光景を目の当たりにするとは思わなかった。
「甘い物には目が無くてね」
「そのクリームはくどくないそうで、ぺろりといけると知り合いが言っていました。添えてあるフルーツが半解凍の状態なので、一緒に食べると食感も変わって美味しいみたいです」
恥ずかしそうに話すコノエに、思わずパルが熱く語っていた話を伝える。
見るからにふわふわしていて美味しそうなパンケーキを、パルは何枚食べていただろうか。途中で数えるのを止めてしまったので正確な枚数はわからないが、たった3枚で恥ずかしいなんてことはありません、と伝えてから、思い至る。
「僕のようなおじさんが食べるには可愛すぎるかと思ったんだよ」
いつもパルがものすごい量を食べるためにそっちに意識がいってしまった。これは何て答えたらいいやつだ?と考えていると、コノエが穏やかに微笑んでいるのに気付いた。
「コノエ大佐?」
「いや、ノイマン大尉から君の話を聞いていたんだが、聞いていた通りだったと思ってね」
「ノイマン大尉が、ですか?」
ファウンデーションとの戦いでミレニアムに乗り込み宇宙へ駆けていったノイマンとラミアスは、その後オーブに戻って来た時にはミレニアムクルーとだいぶ打ち解けていた。
一見するとクールな印象を持たれるノイマンは、実のところ人当たりがとてもいい。そしていつもの凄腕を披露してきたものだから、そこの技術大尉に興味を持たれたらしい。
目の前にいるコノエもその一人だとチャンドラは気付いていた。そうでなければわざわざ自分のところにまでやって来ないだろう。
「そう、凄腕のCICがいるって、君の話をよくしていてね」
嫌味か、と本人が居たら突っ込んでいただろう言葉を呑み込む。
「モルゲンレーテで改修されてから、だいぶ人員を絞っても運用出来るようになったものですから、そう思い込んでるだけだと思いますよ」