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    PoisonOakUrushi

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    PoisonOakUrushi

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    きじあまで煙草ごっこ

    #天生目聖司
    born-eyeSeiji
    #鬼島空良
    onijimaKora
    #きじあま
    brownBear
    #NG

    偽煙 コンビニで、ふと目に付いた懐かしいお菓子。若い組員から貰った駄菓子は、大人びたい年齢の子供に丁度良いデザインで、空良と一緒に大人の真似遊びをしながら食べた思い出の味。当時、下っ端だった組員も今は中堅。懐かしさに一箱手にすると、ジュースの代わりにレジへと向かった。

     ※※※

     古い金属の階段を音を立てて登り、向かう部屋は奥から2番目。
    「僕だ、空良。いるなら開けてくれないかい」
    ドアベルを鳴らして声を掛けると、人の動く音の後に扉が開いた。
    「調子はどうだい? 親友」
    「何の用だ、天生目」
     出迎えに挨拶を交わしながら、部屋へと入る。机の上に広がる雑誌から、読み物をしていたらしい。空良は連絡の無い突然の訪問に、少しばかり首を傾げていた。
    「特に用ってほどはないんだけどね」
     遊びに来ただけだ、と言外に伝えれば興味を無くしたのか、クッションに座り雑誌へと視線を移す。その姿に詰まらなさを感じたが、いつもの様に電話台の雑誌入れから勝手に増やした何冊かの一冊を引っ張り出して、ベッドの上に腰を下ろした。
     暫くはお互い静かに読み耽っていたが、切りも良く飽きてきた所で、件の菓子を取り出した。
    「空良、これ覚えているかい?」
    「あ?」
     隣の場所に移動しながら、見せびらかすみたいにゆっくりと振り動かす箱を、空良の目が猫の様に追う。
    「……偽タバコか」
     思い出した様子で声が上がる。駄菓子の正式名称ではないが、デザインから付けた2人だけの愛称。箱を渡すと、空良は懐かし気にしげしげと眺めた。
    「コンビニで売ってたからさ。つい買っちまったよ」
     箱を受け取って包みのビニールを剥がし、中身をタバコの様に取り出そうとして蓋を開けた手が止まった。
    「あれ?」
     目の前の梱包と記憶に誤差が生じる。空良を見れば、同じ様に首を傾げていた。
    「前はもっとタバコっぽかったよね?」
    「紙で巻いてなかったか? 食いにくかった覚えがある」
     箱の中は、数本のお菓子が纏めてビニール袋で封をされている。記憶ではタバコと同じ二色の紙が棒状のラムネを巻いていたが、袋のラムネは裸のままだった。
    「これじゃチョークだよね」
    「タバコの真似はできねぇな」
     笑い合って袋を破く。ラムネは箱に描かれた絵柄に似せて、ココアの芯をハッカで包んだ作りだったが、どちらも混ざった薄茶色の棒は、色も形もやはりチョークに似ていた。その内の一本を空良に渡す。迷わず口に入れると、音を立てて固いラムネを噛み砕き始める。
    「味はこんなだった気がすんな」
     強靭な顎であっという間に呑み下して次を求めるので、自分の分を一本抜いて箱毎渡す。お気に召したらしくラムネをガリガリと齧る空良に、一心に骨を齧る犬の姿を垣間見つつ口に咥えた。
     爽快なミントの味にココアの風味。
     懐かしくも新しい味は、成長したからか、お菓子の作りが違うからか。それでも、あの時と同じ様に格好を付けて指に挟むとポーズを決めた。
    「どうだい? 似合ってるかい?」
     タバコを吹かしてるつもりで咥えて見せるも、空良はきょとんとするばかりで、がっかりとタバコを吸う真似事をする。と、タバコの煙で一つ思い出した事が有り、空良に向かって息を吹き掛けた。色も匂いも無い吐息に、空良が眉を顰める。
    「何しやがる」
    「煙のつもり」
    「……むせた方がいいのか?」
    「キミ、そんな演技派だっけ?」
     伝わらない告白の安堵と不満を軽口で誤魔化す。食べ終わった空良は眉間に皺を寄せたまま、こちらを見詰めていたが、ふと表情を変えた。
    「お前、タバコ吸うのか?」
     質問に目を瞬かせると、空良もまた目を瞬かせた。
    「まぁ、いずれは、ね。仕事の付き合いもあるだろうし」
     空良が些か嫌そうに、しかし、仕方が無いと言った風に顔を歪める。格闘家タイプの空良は、肺を汚すタバコは嫌なのだろう、と想像出来て口元が緩む。
    「一度吸ったら、口淋しさにはまっちまうかもね」
     ちょっとした悪戯心で付け加えると、今度露骨に嫌な顔を見せた。空良の分かりやすさに笑みを零すと、残りのラムネも食べてしまおうと、視線を手元に落とす。
    「天生目」
     何だい?、と言おうとして向けた顔の目の前に空良の顔。声を発するよりも、距離が近い理由を理解するよりも、口に押し付けられ塞がれた感触に思考が止まった。
     柔らかなモノがむにむにと触れている。
     空良の口が触れているのだと、現象が分かっても理解が追いつかず、唇が舐められる感覚に漸く思考が動き出した。
    「!!」
     驚愕に目を見開くと、声を上げて顔を離そうとするも、動きを察した空良の手が後頭部に回り押さえ込まれる。開いた唇の隙間から、ぬるりとした熱いモノが差し込まれ舌に触れた。触れると言うより味わう様に動くソレが、空良の舌だと気が付いた途端、歯で傷付けて仕舞うのではないかと言う不安で身体が強張る。しかし、そんな心配を他所に、空良は唇をより強く押し付けて好き勝手に暴れ回った。
     背筋をぞくりとした快楽が走る。
     欲に任せた空良の動き自体はまだ、心地良いとは程遠いものだが、口の中を撫でられる度、同性の親友と触れ合っていると言う背徳感と、一つになりたいと言う積年の願いが満たされる充実感で、腹の奥にざわざわとした緊張の様な官能の愉悦が溜まり思考を溶かして行く。儘なら無い呼吸すらも愛おしく、酸欠の苦しみさえ気持ちが良かった。
     不意に空良の熱が離れ、空いた口から酸素が送り込まれる。必死に呼吸を繰り返し、いつの間にか閉じていた目をゆっくり瞬くと、余分な涙がこぼれ落ちた。元の距離の空良の顔は赤みが差し、口の周りは唾液濡れている。きっと同じ様な顔をしているのだろう、とぼんやり眺めていると、口周りを雑ながら丁寧な手付きで拭われた。空良は自分の口元は手の甲で乱雑に拭うと、大きく息を吐いた。
    「口寂しいなら、いくらでも相手してやるから、タバコなんか吸うんじゃねぇよ」
     それだけ言うと、何事も無かったかの様に雑誌へと戻ってしまった。
     意味の分からない始まりと終わりに、ただ呆然と呼吸を整える。酸素と共に思考が戻ると、空良に言いたい事が山程と出てきたが、それよりも先にすっかりと兆してしまった身体の熱をどうするか、一人頭を抱えた。
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    PoisonOakUrushi

    PASTきじあまでホワイトデー
    我儘 ペラペラと捲る雑誌は格闘技の記事ばかり。そもそもが、そう言う雑誌だけを買っているのだから当たり前なのだが、求める答えやヒントの無さに、がっかりと溜息を溢す。
    「って」
     後頭部への軽い衝撃に振り向けば、ベッドの上を陣取る天生目に、蹴飛ばされたらしい。本で顔を隠しつつも隠れない不機嫌な気配に、言いたい事は山とあれど、撤退を余儀なくされる。
     どうやら溜息がお気に召さなかったのだろうと見当は付くが、そもそもの不機嫌の理由には心当たりが無く、鬼島は眉を潜めて雑誌へ向き直ると、読んでるフリをしながら必死にこれ迄を振り返った。
     今日の朝は、ホワイトデーとは男性が女性に菓子を贈る日ではなかったかと、なけなしの知識で鬼島は首を傾げていた。とは言え、鬼島に手作りのクッキーをくれたのは、義母の那津美と義妹の愛海である。何くれとなく心配をして世話を焼こうとする那津美から、何かに付けても付けなくても、差し入れをされる事は多々あるので、礼を言いながら受け取った。その量が若干多い気がしたが、クッキーを見る愛海の目の輝きで、理由は直ぐに理解した。元々、甘い物は得意で無い事も有り、食後のデザートとして活用される事が決まった瞬間である。
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