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    barechun

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    barechun

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    すまない自慰その2
    未推敲
    もう少しで書き終わります

    未定 その日はヘルメスにとって災難の日だった。観測に必要な器具をオレイアスに奪われ、追いかけるうちに木の根に足を引っ掛け転び、オレイアスを捕まえたとおもったら奪われた器具はどこかに捨ててきたらしく手には持っていない。まだ一日が始まって大した時間も経っていないのにヘルメスはボロボロになっていた。
    おそらくここら辺で捨てられたのだろうと大きな体躯を縮めて器具を探す。これはもう観測は別の日にやり直しだと溜息を吐きながら。
     その時、ほのかに甘ったるい匂いが辺りに漂い始めた。顔を上げると少し離れた場所でモルボルの一種がズルズルと音を立てて徘徊をしていた。これは先日新しく創造された種類でこれまでの品種とは違い、モルボル種特有の異臭を改善させたものだった。その代わりにあの大きな口腔内の液体の危険性が以前よりも上がったのだと報告を受けている。たとえ臭いが改善されていたとしてもあの生物には嫌な思い出がある、また頭からかぶりつかれたらたまったものではない。もう少し離れた場所で器具を探そうとヘルメスが立ち上がった時、ふとモルボルの口に通常ならある筈のない何かが見える。目を凝らして見たヘルメスは、それが一体何なのかに気が付き息を呑む。
    ヒュポデーマを履いた足がモルボルの口からはみ出していたのだ。

    「っ、!!」

     誰かが呑み込まれたのだと理解して瞬時に杖を取り出した。なるべく死なせることのないようにしたいのだが、一人の命がかかっている、そんな事を言っている場合ではない。走ってモルボルの近くへと駆け寄ると、風を操りその口をこじ開けるように魔法を放つ。

    「穿て!!」

     強力な風を受けてモルボルは咆哮を上げるが手に入れた獲物を奪われまいと抵抗をする。少し開かれた口の中、足先だけ見えていたのが誰なのか瞬時に確認する。そこにいるのが誰なのかが分かると一層、ヘルメスの心臓は飛び跳ねた。小さな体躯に薄いエーテル構成の肉体。アゼムの使い魔を名乗るその人であった。

    「頼む、その子を離してくれ…!!」

     もう一度風を操り吐き出させようと魔法をぶつけると流石のモルボルもこれ以上は危ないと判断したのか口に含んでいた使い魔を吐き出した。甘い香りを放つ粘液と共に小さな身体がべちゃり、と音を立てて彼女は地面に転がり落ち、モルボルは不服そうではあるがその場を立ち去っていった。なんとかモルボルを斃すこともなくアゼムの使い魔を助ける事ができたヘルメスは杖をしまうと使い魔へと駆け寄る。

    「大丈夫かい!?」
    「ぁ、…へ、め、す…? ありが、と」

     小さく咳き込みながら虚な瞳で彼女はヘルメスを見上げた。抱き上げて怪我はないか見てみると首に触手で絞められような痕が残っていた。全身もモルボルの粘液に塗れて酷い有様だ。

    「きたな、ね、ごめ…」
    「無理しないでくれ。自分は構わない」
    「あ…なんか、いた…」

     本人も自分があんまりな状態である自覚があるらしくヘルメスに謝ろうとするが、小さく痛みを訴える言葉を発するとその意識はプツリと途切れてしまった。そう、この品種は臭いの改善と引き換えに粘液の危険性が上がっているのだと思い出す。

    「…!!」

     このままではまずい。
     ヘルメスは即座に使い魔を抱えると転移魔法でヒュペルボレア造物院内へと転移をした。



     転移先はヘルメス自身の私室だった。急ぎ彼女に回復魔法をかけておき、浴槽に湯を張り粘液を落とすための薬を集める。自分達なら回復魔法でどうにかなったとしてもエーテルの薄くて脆い彼女が魔法だけで無事でいられるかどうかわからない。早く纏わりつく粘液を落としてあげなければとありったけのタオルを集めて湯の中に薬を混ぜる。身につけている衣服もエーテルに解くと彼女の身体を薬湯の中に沈めた。
     自身が濡れるのも厭わずヘルメスは気を失った彼女の身体を支えながらタオルで顔を丁寧に拭い、モルボルの粘液を落としていった。今はまだ気を失っているだけだが、どんな症状があるのかわからない。もしも彼女に何か障害が残ってしまったならば、必要な役割を果たせないとしてこの命が解かれてしまったら。柔らかな頬をそっと拭うと奥歯を噛み締めた。
     もっと彼女に危険な場所を教えてあげれば、或いは守護の魔法を掛ければこんな事にはならなかったかもしれない。まだ、あの日の礼も返せていないのに。
     水分を含んで額に張り付いた前髪も拭い、首の絞められた痕へともう一度回復魔法をかけておく。すると閉じられていた瞼が揺れてゆっくりと目が開いた。数度瞬きをした彼女は目の前で心配そうに顔を見つめるヘルメスと目が合う。

    「よかった…目が覚めたかい」

     ヘルメスは安堵の溜息を吐いた。意識が覚醒した彼女がヘルメスに声をかけようとした時、ふと身体が変だと目線を下げる。温かいけれどもひんやりとした感触。そう、服がない。
     その眼に映ったのは全裸で浴槽に浸かっている自分の身体だった。

    「っっぁ!!!!」
    「あっ!!!! す、す、すすまない!!!!!!!」
     
     とっさに彼女が手で胸と下半身を隠すと、救助に必死になっていたヘルメスも彼女の裸体を見てしまったのだという事に気がついて慌てて顔を逸らして手にしていたタオルを彼女の体を隠すように押し付けた。

    「た、き、君を助けようとおもったのであって、けっして、やま、やましい気持ちではなくて、気を失ってしまったからその、薬で粘液を落とそうと…」

     混乱して何度も噛みながら彼女に背を背けて状況を説明する。そうは言っても、たとえ使い魔だとしても本人、所有主に許可を得る事なく身体を暴こうとしたのだと思われても仕方のない行為である。先ほどとはまた別の後悔でヘルメスの頭は一杯になっていた。冷や汗も止まらない。彼女にも当たり前に羞恥心が存在する。こんな事をされて不愉快に思わないはずがないだろう。

    「あ…や、その、そっか…助けてくれて、ありがとう。あの、びっくりしただけでね、変なもの見せて…ごめんなさい…」

     背後から声が聞こえた。咎めることもなく、謝罪と感謝の言葉をかけられて胸がずっしりと重くなる。

    「いや、謝るのは自分の方で…本当に申し訳ない……薬は十分に使用をしたから、もう大丈夫な筈だ。あとは取手を捻ればお湯が出てくるからタオルも合わせて自由に使ってほしい。何か不調があったら、遠慮なく言ってくれるだろうか」

    今一度、冷静に言葉を選んで背後の彼女に声をかけた。情けなさと恥ずかしさで耳まで赤くしながら。

    「ありがとう、ヘルメス。お借りするね」



     疲れた。心底疲れた。肉体的にも、精神的にも。
     絶望的に長く感じた一日の業務を終えてヘルメスはふらふらと寝台に突っ伏し静かに深呼吸をするが、最終的にそれは溜息へと変わる。
     アゼムの使い魔を助けたその後、エーテルに解いてしまった彼女のローブやポデア、ヒュポデーマを用意するも、困ったように「下着、は、恥ずかしいから、自分で作るための布をもらえるかな?」と言われ、自分の配慮の無さに穴があったら入って蓋を閉めて二度と出られないようにしてほしいと思うほどだった。あまりにもヘルメスが落ち込んでいるからか彼女は努めて明るく振る舞い「気にしないで、ありがとう。あなたのおかげで助かったよ」と励まされてしまう。ただ普通に助ければ良かっただけなのにどうしてこうも自分は不器用で愚かなのだろうか。
     通りがかった事情を話せば自分も観察器具を探すのを手伝うと言いだしてくれ結局はメーティオンとアゼムの使い魔とヘルメスの三人で無くなった器具を見つけることができ、その時にはもう、元の様子となんら変わりなく使い魔はヘルメスに接していた。
     シャワーを浴びて就寝をしようとふと浴室を見ると今日の出来事を再び思い出してしまってまた溜息が出た。明日起きてからにしよう。
     寝台に入り泣きたいような気持ちを堪え、早く寝付いてしまえとヘルメスは目を閉じた。

     早々に眠りに就くはずだったのだ。けれども寝付けない。久しぶりの身体の感覚にヘルメスは困惑していた。
    「なんで……」
     上半身を起こして上掛けをめくり自分の下半身を確認すれば、その中心は熱を持って硬くなっている。疲れすぎてしまったのだろうか、もともと性的な行為を好んではおらず、こんな風になることは稀と言ってもいい程だった。ふと頭を過ぎる昼間の出来事をかき消して決してそんなことではない、疲れているだけなのだと自身に言い聞かせる。もうこうなってしまったら早々に終わらせて今度こそ眠りに就こう。
    「っ、……」
     勃ち上がってしまった自身を下着から取り出してゆっくり上下に扱き始めた。慣れない感覚に息を詰めながらも早く終わらせたいと必死に手を動かす。その時、ふと今日の事を思い出してしまったのだ。アゼムの使い魔の身体と、触れた時の柔らかさ、恥ずかしそうに赤らんだ顔。
    「っ、ちが、…」
     必死に頭の中から振り払う。違う、違う、そんな存在じゃない、こんな欲を孕ませた相手じゃないはずだ。あの子は、そんな相手じゃない。
     そう思っているのにどうしても離れない。手を止めればいいのに否定する心と早く楽になりたいと思う頭が混ざってぐちゃぐちゃになる。
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