『天上の愛』 天界の端のさらに端。小さな泉の畔にある木の陰に二人の天使がいた。一人の天使は困惑した表情で大きな木を背にして、羽が一回り大きな天使にじりじりと詰め寄られている。
「やはり……いけません。神の祈りから生まれし我々は精神のみでしか繋がってはいけない。それにあなたはこの天界で神に近い天使……禁忌を犯せばその大きな力を失ってしまいます」
「……お前に触れることが罪だというのならば……俺は聖なる力などいらぬ」
「マサト様……ぁ……だめ、触れられたら……私、は」
マサトと呼ばれた天使の手がトキヤという名の天使の頬に触れて、宝石のような二人の瞳が合う。マサトの手を覆うレースが肌を撫でて、吐息の掛かる距離まで近づくと蒼の宝石は不安で揺れるが、紫の宝石が優しく見つめて唇を塞いだ。
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