『ゲームのその後は…?』「一ノ瀬、すまなかった」
「聖川さん?どうしたのですか?」
歌番組の収録で早めに楽屋入っていたトキヤは、次に入ってきた真斗に挨拶もそこそこに謝罪をされた。
二人は恋人同士ではあるが、喧嘩をした覚えもなければ、トキヤが真斗に対して一方的に怒っていたわけでも勿論ない。
一体、何に対しての謝罪なのか分からず、トキヤは困惑しながら理由を聞いた。
「これだ」
真斗がバッグから取り出したのは赤い箱が目を引く、チョコレートコーティングされた棒状のお菓子。
謝罪の理由がお菓子ということにますます訳がわからなくなったトキヤは真斗に更に説明を求めた。
「恋人同士は、今日はこの菓子を使用したゲームをするものなのだろう?俺はそういう事に疎くてな……知らずに今日を終えてしまうところだった」
ーー今日は、11月11日。
1のならびが棒状のお菓子に見えることから11月11日はそのお菓子の日と呼ばれている。
真斗の言うゲームとは2人が向かい合って1本そのお菓子の端を互いに食べ進んでいき、先に口を離したほうが負け、離さずに食べきるとキスをしてしまうことになる、というもの。
(一体誰がそんなことを聖川さんに……まぁ、大方の予想はつきますけど)
トキヤは頭の中に元同室の先輩と同期を思い浮かべながら、深い溜め息を吐く。
「聖川さん、確かにそのようなゲームがあることは、あります。ですが必ず……あ」
訂正をかけようとしたトキヤに真斗の手が伸びてきて頬をするりと撫でる。
「流石に此処では出来ないからな。今夜、俺の家でいいか?」
「あ……は、はい」
不意に恋人の体温に触れて、真っ直ぐに見詰められたトキヤは思わず返事をしてしまった。
ドアの方から話声が聞こえてきて、真斗の手はトキヤの頬に熱を残して離れていくと、扉が開いて他のメンバーが入ってきた。
「……では、後でな」
小声で呟き、瞳を細めて微笑んだ真斗にトキヤは訂正することを完全に忘れてしまい、頬の熱を逃さないように自分の手を当てる。
(これは……お菓子のゲームだけでは済まない気がしてきました)
メンバーから風邪でも引いたのかと心配されるほどに暫くトキヤの顔は赤かった。