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    六花*

    @nov03aug11

    utpr寒色メインで短い話を投げます。全部、小説です。

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    六花*

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    [マサトキ/全年齢]※キス表現有
    マサトキWebオンリー『真なる愛を誓う時』の時の展示作品です。
    トキヤ誕生日の日のマサトキ(甘め)です。

    【注】同タイトルのR18verとは、小説内の「★」マークまで内容は同じものになります。

    #マサトキ

    『なんでもない、特別な日』ふわりと優しい香りを纏ったトキヤががバスルームからでてきた。
    1日の疲れを半身浴で落として、しっかりとボディケアを施してから部屋に戻るとすでに寝巻き姿で台本を読んでいた真斗が気付き、顔をあげた。
    「一ノ瀬。さっぱりしたか?」
    「はい。やはりラベンダーの入浴剤はリラックスできて、ん?……なにか、音が」

    何気ない会話をしていると何かが音を立てていてる。辺りを見回すとマナーモードになったままの真斗のスマートフォンがローテーブルの上で着信を知らせていた。

    「……事務所?」
    画面を見た真斗は発信元を口にした。
    夜に事務所から電話など何か急ぎの用だろうか?トキヤは時計にちらりと目を遣ると針は20時30分を過ぎている。
    同じ気持ちなのか、真斗はトキヤと顔を見合わせながら電話に出た。
    「お疲れ様です。いえ、大丈夫です。……はい、はい……ええ、そうです……えっ? 本当ですか? はい! ありがとうございます。はい! 失礼致します」
    タン、と画面をタップして通話を終了させた真斗の表情は笑顔でトキヤは良いことでもあったのですか、と尋ねてみた。
    「ああ、良い知らせだ。一ノ瀬、8月6日だが俺も1日オフになったぞ」
    「えっ! 本当ですか?」
    まさかの言葉にトキヤは驚いた。

    職業柄、二人に決まった休日はないが、誕生日には半日でもオフになるように仕事の調整をして一緒に過ごせるようにしていた。

    トキヤはバースデーソロライブ後ということもあり、事務所の計らいですでにオフにしてもらえていたが、それが二人揃って丸1日オフが取れるとあり、トキヤは大層驚いた。

    真斗は前々から事務所に頼んでいたこともあり、折り合いがついたとあってすぐに連絡をくれたらしい。

    「調整大変だったのでは……いつも私の方ばかりすみません」 
    申し訳なさそうにトキヤが謝るのには理由があった。
    誕生日には一緒に過ごしたい、そう思っても真斗の誕生日は年末。年末年始の歌番組やら特番、カウントダウンライブ、新年生放送と有り難くも多忙を極めているために休みは年明け数日を過ぎないと取れない。
    だから、せめてトキヤの誕生日はなるべく二人の時間を作りたい……という真斗の考えだった。

    「俺がそうしたいのだから謝ることはない。それに一ノ瀬は個人の仕事が多いのに俺のわがままで仕事を調整してくれているだろう? ありがとう」
    こんなこと、わがままのうちに入らないですよ、とトキヤはまだ少し申し訳そうに眉を少し下げて笑うと真斗の隣へ腰掛ける。

    「互いに丸1日オフが被ることは、普段も滅多にあるものではないからな」
    「ええ、嬉しいものですね」
    真斗はああ、と頷くと二人の湯呑みにほうじ茶を注いで会話を続けた。
    「何か欲しいものや行きたい所はあるか?……なんて、気が早いか?」
    いまは4月後半になったばかりでトキヤの誕生日まではあと約3ヶ月以上はある。
    はは、と笑う真斗からトキヤは視線をはずす。
    「……ん? 何かあるのか? 遠慮せず言ってみてくれ」
    そう促されたトキヤは、少しばかり遠慮がちに口を開いた。
    「品物ではないのですが……その、誕生日には聖川さんが欲しいです」
    「……っ! げほっ、げほっ!」
    真斗は、トキヤの言葉を聞いて、飲んだお茶でむせて盛大に咳き込んでしまった。
    「ひ、聖川さん! 大丈夫ですか?」
    真斗から動揺している様子が窺えたトキヤは背中を擦りながら、小さく首を傾げる。
    「ん……ありがとう、大丈夫だ。珍しく、一ノ瀬からそのような大胆な言葉を聞いたので少々驚いてしまっただけだ」
    「大胆……? あ」
    「誕生日でなくとも、お前が望んでくれるならいつでも」
    真斗の右手が腰に回されたと思った瞬間、顔がぐっと近づいてきて唇を塞がれた。
    そのままの状態で腰を撫でられながら、寝巻きの内側へ手が入り込んできたところで、トキヤはようやく自分の言い間違いに気が付いた。
    「ふ……ぁん……っ、は、すみません聖川さん! 言葉が足りませんでした! そういう意味ではなく……! いえ、けして嫌だということではないのですが!」

    トキヤは早口になりながらもやんわりと真斗の身体を押し退けて、こほんと咳払いで仕切り直す。

    「今年の誕生日、聖川さんの『時間』を私にください」
    「俺の、時間……?」
    真斗はきょとんとした顔でトキヤの言葉を繰り返すと、す元の距離へと身体を戻して話に耳を傾けてくれた。

    「はい。1日、どこかに行くのではなく、ゆっくり家で一緒に過ごして……聖川さんを一日独占させて欲しいのです」
    一緒にどこかに出掛けるのは楽しいが、どうしても外では『恋人』としての振る舞いはできない。
    仕方のないことだし、普段は割り切っているが誕生日という特別な日に一緒に過ごせるのならば『恋人』としての触れ合いをしたいのだとトキヤは気持ちを吐露した。

    「……ダメ、ですか?」
    「そのような恋人冥利に尽きる願い、ダメなわけないだろう?・・・・・・いつも我慢させてしまってすまない」
    ぎゅっと抱きしめられたトキヤは、小さく首を振る。
    「我慢などとは思っていません。ただ、あなたといつまでも一緒に居たいし、アイドルという仕事も続けたい。それは、あなたもでしょう?」
    トキヤはそう言いうと、ふっと不敵な笑みを浮かべてみせた。
    「ああ、そうだな」
    その笑みを見て真斗は小さく笑う。
    二人でこつん、と額をあわせて見つめあうと自然と優しいキスを交わした。


    ※※※


    「・・・・・・ふう、もうこの時間でも暑いですね」
    今日は8月6日。
    日課のジョギングは誕生日だからといってもかかすことはなく、トキヤは朝早くから走っていた。

    夏は日陰の多い場所にルートを変更しているが日差しが弱い朝の時間といえど、すでに気温は高く、走ると汗が滴り落ちる。
    トキヤは、タオルで汗を拭うと冷えたスポーツドリンクで喉を潤した。

    (今日は、1日聖川さんと過ごせるかと思うといつもより足取りが軽い気がする……なんて、我ながら単純なものですね)

    トキヤは苦笑いすると地面を蹴ってジョギングを再開した。


    帰宅するとエアコンの心地よい風に良い匂いが乗ってきて鼻腔を擽る。
    「お帰り、一ノ瀬。外は暑かっただろう?」
    割烹着姿の真斗がキッチンから顔を出して声を掛けてきた。
    「ただいま帰りました。ええ、この時間でも暑いですね」
    真斗は朝食の準備中ということもあり、一言、二言、言葉を交わして、すぐにトキヤはバスルームへと向かった。


    シャワーを終えて洗面台でドライヤーを手に取ったトキヤは鏡の中の自分をじっとみると、濡れた前髪を指で摘まんだ。
    (・・・・・・別におかしいことではない、ですよね?今日は1日オフですし)


    ――カチャ・・・・・・

    部屋のドアを遠慮がちに開けると背を向けたままの真斗が『良いタイミングだな。いま、麦茶をいれようと思っていたのだ』と、手にしていた麦茶を二人のコップに注ぐ。そうしてトキヤの方を振り返った真斗は少しだけ目を見開いた。
    それもそのはず、いつも休みの日でもきちんとセットされているトキヤの髪が、今日は乾かしてブラシで軽く整えただけだったからだ。

    寝る前と同じでだらしないと呆れられてしまっただろうか……トキヤは床に視線を落とすと、静かにぱた、ぱたと真斗のスリッパの音が近づいてきた。
    「……その、今日はオフですし、もう外出の予定はありませんし……」
    「一ノ瀬」
    低い声がすぐそばから降ってきて、そっとその黒髪に唇が触れた。
    「……っ」
    ゆっくりと顔を上げると目を細めて自分を見つめている恋人が目の前にいてトキヤの胸がどきりと跳ねた。
    「ふふっ、一ノ瀬は愛らしいな」
    「べ、別に愛らしくはないと思いますが……やはり、きちんとへアセットを……っ」
    踵を返そうとしたところを真斗の待て、という制止の声と共に肩を軽く掴まれた。
    ちゅっ、と今度は頬にキスをされて触れた箇所がほんのりと熱を持つ。
    「何故だ? 俺はそのままで良いと思うぞ。朝食の準備ができている。今日は焼き鮭に玄米のおにぎり、夏野菜の味噌汁だ。冷めないうちに食そう」
    そう言われて微笑まれては食卓につかないわけにはいかない。トキヤは返事をして、下りた髪を揺らして良いにおいのする食卓についた。


    ※※※


    「ご馳走さまでした。鮭の塩加減が絶妙で、オクラと茄子とみょうがのお味噌汁はさっぱりとしておいしかったです」
    「そうか、よかった。鮭も塩分補給によいだろうとおもってな」
    二人でこうしてゆっくりと朝食を摂るのも久しぶりで、空になった皿を前に二人の会話は弾んだ。


    「ほう、なるほど。では、今度試してみるとするか。ん、もうこんな時間か……さて、では片付ける前に。一ノ瀬、改めて誕生日おめでとう」
    真斗は足元に置いてあった紙袋を『プレゼントだ』とトキヤへと渡してきた。
    「すみません、ありがとうございます」
    中身を見るとそれは、なにやら四角く少し大きいが厚みはない。それを両手で取り出して、包みを丁寧に開封していくとトキヤの瞳が驚きと喜びに満ちる。
    「えっ!?これ、私がずっと探していたレコード!?すごい……ありがとうございます!」
    以前、トキヤは真斗に探しているレコードがあるが、中々見つかないので半分諦めている……という話を何気なくしたことがあったことを思い出す。
    まさか見つけてくれたうえにプレゼントにしてくれるだなんて思ってもいなかったトキヤは喜びの声をあげた。
    「喜んで貰えてよかった」
    安堵したように息を吐いた真斗に、優しい眼差しで見つめられたトキヤは持っていたレコードを大切そうにぎゅっと抱き締める。

    「早速、聴きながら片付けしましょうか」
    「いや、片付けは俺がやるから一ノ瀬は座ってゆっくり聴いていてくれ」
    真斗はそう言ってくれたが二人で手分けした方が効率もよく、ゆっくりする時間が確保できるとトキヤはその提案をあっさり断った。
    「誕生日くらい、ゆっくりしていてほしいが……だが、今日の一ノ瀬の願いは『ゆっくり家で一緒に過ごしたい』だからな」
    わかった、と真斗はトキヤの案を受け入れて、レコードを掛けながら家事を分担することにした。

    真斗が食器を片付け、昼食の下拵えに風呂掃除。トキヤは洗濯機をまわしてから部屋に掃除機をかける。

    分担作業と軽快なジャズのリズムで心なしか家事も捗った気がする。


    ※※※


    「一ノ瀬。映画を観ないか?」
    家事が終わってソファに座った真斗は思い出したようにまた立ち上がり、ブルーレイのパッケージを持ってきた。
    「一ノ瀬が観たがっていた映画だ。上映期間中には行けなかったし、配信とやらもまだないと言っていただろう?」
    「そうです! これ、原作を読んでいたので気になっていたんです。もう発売されていたんですね」
    トキヤが愛読しているミステリー小説の映画化とあって観にこうと思っていたが、中々時間が取れなく上映が終了してしまったものだ。

    「ありがとうございます。では、私から聖川さんにはこちらを」
    言いながらいつの間にか手に持っていたタブレットの画面を操作すると、とある時代劇のタイトルが表示された。
    「おお、これは! 俺が今度出演が決まった時代劇を手掛ける監督の別作品か?」
    「はい。今回、初めてご一緒するとあって監督の他作品をご覧になりたいと仰っていたので探してみました」
    どうやらその監督は、今度の作品が復帰作品らしく、以前の作品はブルーレイなどにもなっていなかったが、映像配信サービスで監督復帰作品に先駆けて過去作品の配信がはじまったらしい。

    「わざわざ探してくれたのだな。ありがとう、一ノ瀬」
    「喜んでいただけて良かったです! 今日はどちらをみましょうか?」

    真斗が自分もこの映画は気になっていたというので、今日は真斗が用意したミステリー映画をみることにした。



    トキヤがブルーレイをセットしてからソファに座ると隣ににいる真斗の腕が肩に回されて軽く抱き寄せられた。
    「映画館ではこのような振る舞いはできないからな」
    真斗はふっと口角をあげて、愉しそうな顔を見せてくれた。
    「では、お返しです」
    トキヤは真斗の頬にちゅ、とキスをすると、面食らった顔をした真斗だったがすぐに表情を綻ばせてお返しとばかりに瞼にキスを落とす。
    身体を寄せて、じゃれあうように唇にもキスをする。普段しない、できない触れ合いに二人はくすぐったそうに笑った。

    映画が始まっても真斗の腕はトキヤに回されたまま、二人は身体をくっつけて鑑賞を続けた。


    映画は早い展開だがしっかり原作の重要ポイントは押さえてあり、原作ファンにも評判が良かったのも頷ける。
    あっという間に時間はすぎてもう終盤というところでトキヤの視線は画面ではなく、自分の肩を抱く真斗の左手、寄り添っている身体の右側へと交互に向いた。

    (聖川さんに触れているとドキドキする……でも、それと同時にこの温もりがとても心地好い……もう少し、だけ)


    「はー……思いもよらない人物が犯人で驚いたな。これは面白い。いち……っ」

    もう少しこのままで居たいと思ったトキヤは映画がエンドロールに入ると思わず瞳を閉じてしまい、真斗が途中で言葉を飲み込んだのが息遣いでわかる。

    「……寝てしまったのか。疲れているのだろうな」
    小声でそう呟くと肩を抱いていた左手がトキヤの髪を撫でてきた。
    「一ノ瀬は髪を下ろしていると普段より少し幼くみえるな。ふ、寝顔も、本当に愛らしい」
    目を開けるタイミングを失ってしまったトキヤは耳元で囁かれた言葉に平常心で堪えていると、髪、耳朶、額、頬へとキスの雨が降ってきた。あちこち啄むようにキスをされ、いよいよ唇のそばに気配を感じたが数秒ののち、そのまま気配は離れてしまった。

    「やはり、唇は一ノ瀬の起きている時ではないとな。どれ、俺も一緒に少し休息を取るとするか」

    身体の右側に少し体重が乗り、しばらくして真斗から規則正しい呼吸が聞こえてきた。
    トキヤはゆっくり瞳を開け、自分に寄りかかって寝てしまったらしい真斗の横顔を盗み見る。

    (……目を閉じていると、より綺麗な顔立ちですね)

    ほう……と感嘆のため息がもれそうになるのを抑えて、視線は先ほどキスの雨を降らせた唇へと向いた。

    (目が覚めて、私から唇へキスをしたら聖川さんはどう反応してくれるでしょうか)

    そんな悪戯じみたことを考えながら、トキヤは真斗に甘えるように頭を預ける。恋人と過ごせるなんでもない、特別な日を噛しめて、幸せそうに微笑んだ。
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