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    みなも

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    みなも

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    王さんの前途多難な恋模様、もしもまおまおが相談相手だったらの巻
    (この時点での王さんは霊霊さんとワンナイトしてるしまおまおは玖朗さんと付き合ってる)
    描写がめんどくさかったので書いてませんが(ごめんね!!)王さんがお金出してる新規開店間近のタピオカ専門店とかで喋ってることにしてください
    いろいろめちゃんこ捏造してるよ!!

    #よその子
    childFromAnotherPlace
    #うちの子
    myChild

    私が書いていいのかとても恐縮してまう王さんの話「お待たせしましたぁ〜♪」
    「あ、どうも」
     可愛らしいエプロンドレスを来た女性ウェイターに差し出されるまま、風猫はふよふよとタピオカが浮かぶ飲み物を受け取って差し込まれていたストローに口をつけた。
    「うっま」
    「気に入ってもらえたようでなによりだ。フルーツティーというものらしいぞ」
     向かいの席に腰かけている劉仁は何やら意気消沈しているらしく、草臥れた笑顔を浮かべていた。忙しさに疲れが溜まっているのか、それとも。
    「ここも含めて、表通りにいくつか観光客向けの店を出店しようと考えているんだ。うちは主に夜の繁華街での商売が多いが、できれば昼の仕事の方がいいと言う者もいるから」
    「……アンタもほんと、手広くやるよなぁ」
     ずずっと鮮やかな西瓜色の飲み物を口にしつつ、風猫は言う。
    「で、奢ってもらえるのはありがたいけど。なんで俺? もっと適した相談相手いるだろ、なんかほら、それこそそーいう店の人とか」
    「従業員にこんなことを相談するわけにはいかん」
     劉仁は仏頂面で腕を組んだ。風猫はふふっと笑ってしまう。
    「相っ変わらず真面目だなぁ……ま、そういうことなら話はきく。ただ、あんま長居はできないけどな」
    「……もしかして、医生せんせいか?」
     劉仁は一転、柔らかく微笑んで尋ねてくる。それが却って決まり悪くて、風猫は肩を竦めてみせた。
    「そ。二人で会ってるのがバレると、あいつうるさいんだよ。どうこうなりようもないって誰より知ってるくせにな」
    「そうか。……医生も、随分と変わったな」
     しみじみと呟いた後、劉仁は珍しく歯切れの悪い口調で続けた。
    「その、それこそオレも、はじめは医生に相談していたんだが……」
    「は? 玖朗に? ハハッ、あいつ100パーそういう相談相手には向かないだろ。絶対ェろくでもねェことしか言わねー」
     けたけた笑い出した風猫に、劉仁は身を乗り出して尋ねてきた。
    「ぜひ教えてほしいんだが!」
    「うおっ……な、なんだよ」
    「追眠はどうやって……医生と今の仲に? 我から言わせてもらうと、あの人もなかなかにそういう関係に持っていくのは難しそうだと思うんだが」
    「持ってったってか、むしろ持ってかれたんだけど」
     片眉を上げつつ、笑ったまま風猫は続けた。
    「俺も未だに謎だっての。どう、どうって……」
     改めて訊かれて記憶を遡っていくと、風猫自身も首を傾げたくなってくる。
    「あー、アー……あんま参考にならねーと思う」
    「それでもいいから教えてくれ」
     間髪入れずにそう言われて、風猫は仕方なく口を開いた。
    「エー……まじで一番初めはなんか……友達の妹を治してもらったんだけど、治療費が払えないなら自分を差し出せって玖朗が言ってきて」
    「なんだって?」
     急に劉仁の声のトーンが低くなる。
    「医生がそんな……それは……少し話し合う必要がありそうだ……」
    「いやッ……前の! めちゃくちゃ昔の話だから!」
     どう考えても物騒な"話し合い"の雰囲気を感じ取って、風猫は慌てて両手を振った。このままでは玖朗が締められてしまう。そして劉仁が相手なら、玖朗に勝ち目は正直まるでない。
    「だから! 参考にならねーって言ったろ」
     宥めるように言うと、劉仁はぶつぶつと何か唱えていた。
    「まぁそれをいうなら我も大概……」
    「なんて?」
    「いや……なんでもない」
    「あっそ」
     怒ったかと思えば落ち込んだ様子で黙りこくる。なんとまぁ恋愛というものは、どうも人を情緒不安定にさせるらしい。
     そういえば、あいつも一時期なんやかんやと頭を抱えてたような。
     そんなことを思い出しつつ、風猫は年上でいつも頼れる劉仁がなんだか微笑ましく思えて、静かに微笑んでから続けた。
    「んー、まぁそうだな。……霊霊だろ?」
    「そうだ……あの人渣クズだ……」
    「クズって呼んでんじゃん」
     少し笑ってから、風猫は言った。
    「そうだなァ……結局のところ、諦めずに近くにいるしかないんじゃね?」
    「近くに……」
    「うん。なんつーか……上辺だけの付き合いじゃなくて、もっと深い繋がりみたいなの……あの人そういうのが希薄だろ。あー、霊霊だけじゃねーな。多分マツリもそう」
    「あぁ、まぁ……そうだな」
     考え込んで頷いた劉仁には、どうやら思い当たる何かがあるらしい。
    「だよなぁ。あんだけめちゃくちゃでも、誰にでもそれなりに受け入れてもらえてるってのは、逆に言えば誰とも深く関わってないってことだ。そんでもあの人、アンタのことはそれなりに気に入ってるんじゃないかと思うぞ」
    「我をか!?」
     劉仁が勢いよく立ち上がったせいで、椅子がひっくり返った。風猫たち以外まだ誰も客のいない店内に、低い落下音はそれなりに大きく響く。
    「……座れって。や、あくまで俺から見てる限りそう見えるってだけだけどな」
    「そうか……そうか……我が……」
     椅子を立てて座り直した劉仁はまたぶつぶつと呟き始め、風猫は自分の言葉が届いているかどうか疑いつつも尋ねた。
    「よく知らねェけど、あの人も子どもの頃、かなり大変だったんだろ」
    「そうだな。……少なくとも、身内には恵まれなかった」
    「そっか。あー、これは、いつか話した心理学者?のセンセーの受け売りなんだけど。……子どもの頃の、特に親との関係は、大人になってからの人付き合いで鏡みたいに映るんだとさ。俺は小難しいことはよく分かんねーけど、なんかそれは分かる気がするんだよ」
    「鏡、か」
     一言呟くと、劉仁はそのまま考え込んでしまう。その様子を窺いつつ、風猫はそっと続けた。
    「霊霊は自分の経験から、他人を信頼するとか、なんか……愛だとか恋だとか、そういう他人との繋がりを信用してねーから、面倒だとしか思わないんじゃねーの」
    「面倒だとは確かに言われた」
    「……言われたのかよ、マジか。あーでもあの人なら確かに直で言うかァ」
     若干引き攣りつつも、風猫は頷くしかない。
    「あと……多分マツリは信頼とかがこう、感覚として理解できてない感じがする。なんだろうな、あいつの端々から感じる、あいつの周りにいた大人の薄気味悪さってーの? マジで虫唾が走ると思わねー?」
    「……同感だ。マツリは子どもとして守られ育まれるどころか、周囲の大人に利用されていた。大人の風上にも置けねェような糞どもに」
    「あぁ、だから頼るのが下手なのか。まだ子どもなんだし、もっと頼っていいのにな」
    「……それはお前もだぞ追眠。我は、マツリのことも追眠のことも心配している」
    「はは、分かってるよ。諸々ほんとに感謝はしてる、ほんとだって、だから……飴はしまえ?」
     劉仁の手がポケットに入ったのを風猫は見逃さず、すかさず言った。
    「たくさん準備してきたんだ」
     行動を読まれた劉仁は心なしかしゅんとした様子だった。
    「ありがたいけど……あー、マツリにやりゃいい。それと霊霊」
    「ハァ? なんであの人渣に……」
    「いや、確認するけどあの人のことが好きで相談してるんだよなアンタ……」
    「ムグッ……」
     劉仁は妙な唸り声で以て黙った。
     俺は分かるぞ。改めて言葉にされて戸惑ってんだろ。そういうの玖朗で予習済みだからな。
     風猫はその言葉を心の中だけに留めて、口を開いた。
    「話がずれたな、悪い。で、霊霊やマツリとは逆に、アンタは割と周囲に恵まれて育ってきた人間に見える」
    「ふむ……まぁ、そうだな。大事にしてもらった、愛してもらった、可愛がってもらった……とは思う」
     こくりと頷く劉仁は確かに、中華街にひしめく自分よりも年上の「大人」の中では、おそらく一番まともな部類に入るだろうと風猫は思う。少なくとも、霊霊や玖朗よりはよほど倫理観がしっかりしている。マフィアが一番まともな大人ってなんだ……とふと疑問が頭をよぎるが、風猫はひとまずその問いを置いておくことにした。
    「まぁ要するに、アンタが子どもの頃に周りの大人とかからもらってきたもんを、あの人は今埋めてってる最中なんだよ」
    「ふむ……」
    「だから、それを"知ってる"アンタが教えてやりゃいい。そんで埋めてやれば、なにかが変わる……かもな。ただすげー根気いると思うけど」
     どうにかこうにか、風猫は自分が伝えたかった言葉を形にできた気がして劉仁を改めて見遣ると、彼は机の上で両の手をぐっと握りしめていた。
    「なるほど、我慢比べか。それなら我は自信があるぞ」
    「いや、それはなんか違うっていうか……」
    「我は!」
     劉仁はまた勢いよく立ち上がった。後ろで再度、大きな音を立てて椅子がひっくり返るが、劉仁はまったく気にしていない。いや、或いは聞こえていないのか。
    「霊霊に気に入られているのか!そうか!」
    「いやかもしれないって話で……あー、まぁいいわ」
     いきり立つ劉仁を前に、風猫はそれ以上声をかけることを諦めた。
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    Replies from the creator

    みなも

    DONEとんでもない書き間違いとかなければ!これにて!完結!
    7か月もかかってしまった……!
    長らくお付き合いいただき、本当にありがとうございました!!
    ウルトラバカップルになってしまいましたが、今の私が書けるウルトラスーパーハッピーエンドにしたつもりです!
    ものすごく悩みながら書いた一連の3日間ですが、ラストは自分でも割かし納得いく形になりました
    2024.3.24 追記
    2024.4.30 最終稿
    玖朗さんお誕生日SS・2023【後編・3日目】 ゆっくりと瞼を開けたその瞬間から、身体が鉛のように重く、熱を持っていることが分かった。たまにある現象だ。体温計で測るまでもなく、発熱していることを悟る。
    「ん……」
     起き上がろうとした身体は上手く動かず、喉から出た唸り声で、声がガラガラになっていることに追眠は気づいた。そういえば、引き攣るように喉も痛む。ようやっとのことで寝返りを打って横向きに上半身を起こすと、びりりと走った腰の鈍痛に追眠は顔を顰めた。ベッドサイドテーブルには、この状況を予期していたかのように蓋の開いたミネラルウォーターのペットボトルが置かれている。空咳をしてから水を含むと、睡眠を経てもなお疲れ切った身体に、水分が染みていった。
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