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    ぎぃ。

    @gigigigiiiii
    ぎぃ。だよ!!!
    ポケモン絵と創作絵と過去絵とかもなんかアップ出来たら見やすいんじゃないでしょうか?

    二次創作SSもおいてるよ。ラッシャイ!!

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    ぎぃ。

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    🐍怪異のうさみんと、門倉さん。
    まだ慣れてない頃。

    しずく、しずか、しずむ【七】帰ってきたら「ただいま」って言うのが、当たり前だった。

    この家から返事をしてくれる人が誰もいなくなっても、二十年以上続いた習慣は、なかなか抜けなかった。

    「おかえりなさい」

    まだ電気をつけてもいないリビングの闇から、返事が返ってくる。

    パッと明かりがついて、そいつの姿が視認できた瞬間──
    同時に「うわッ!!」という声が勝手に出た。

    「もう!いい加減慣れてくださいよ!」
    「いや、でも……慣れるもんじゃないっていうかさぁ……」

    家にさ、白蛇の下半身に男の上半身がついてるやつがいて、しかも目ぇ見開いて俺を凝視してたらさ。
    びびるよな?絶対。
    だって、家にいちゃ駄目な部類だもの、こういうのは。
    どんなに顔立ちが綺麗でも──いや、だからこそ、異質感、違和感、異物感がこびり付いて、どうしても剥がれない。

    人工的な灯りの下で、白く滑らかで、濡れてるみたいにも錯覚する鱗が、リビングに入る俺のあとを、するすると追いかけてくる。

    台所には入るなって言ってある。
    単純に危ないからだ。
    調理中は油も跳ねるし、刃物も使う。
    この狭い空間で、長い尾を踏まない自信が、俺にはない。
    ──本当は、もっと強く言うべきことがほかにいっぱいあるんだけどな。
    だから、台所とリビングの境界線にぴったり張りついて、ずっとこっちを見てるんだ、あいつは。
    “美味しそう”だと感じている人間の料理姿なんて見ていて、楽しいか?

    作ったものでビールを飲んでる俺のことを、じっと見てる。
    たまに、細長くて先の割れた舌を、チロリ、と覗かせながら。

    この空気が、耐えられない。
    この存在を、どうしても受け入れられない。
    (今日も、味があんまりしねぇな……)

    「要らないんですか?」

    食べきれなかった皿を下げようとした、そのときだった。

    「あ、ああ……作りすぎたかもな。おまえ、食うか?」
    「はい。食べてもいいなら」

    チロチロ、と揺れる舌。
    新しい箸を出してやろうか……と思った瞬間、ウサミは皿を掴んで、そのまま傾けた。
    大きく開いた口に、流れ込んでいく残り物たち。

    (……うわぁ……)

    きれいに平らげられた皿だけが手元に残り、しばらく沈黙が流れた。
    チロ、とまた舌が見えたかと思ったが、違った。
    何かが、ぽとり、と皿に落ちた。
    炒め物に入れてた、椎茸だった。

    「僕、これキライです」

    浮かべるしかめっ面。

    「──……ははっ、あはははっ」
    「何がおかしいんですか!」
    「いや、悪ぃ。なんでもない。次から言うよ、“椎茸入ってるぞ”って」

    なんだ。
    案外、怪異も食いもんの好き嫌いくらいは、あるんだな。
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