きみが、死んでも残る花「茨おはよう」
私の日課は朝起きてリビングの茨に声をかけるところから始まる。
コーヒーを淹れてまだぼんやりしている頭をスッキリさせたら朝食の準備だ。
朝は和食がいいと茨が言っていたからご飯とお味噌汁。いつもなら昨日の夕飯の残りを食べるけれど昨日は外食だったから目玉焼きとウインナーを焼いた。もうちょっと食べたいなと思ってサラダとヨーグルトを追加した。4個パックのいちご味。果肉がごろごろ入っていて美味しい。ジュンのおすすめだ。
和食には緑茶だからコーヒーを飲み干して緑茶を淹れ直す。見栄えにはそこまで興味がなかったけれど、朝ごはんを食べたよとSNSに上げるようになってからランチョンマットやお皿、箸置きにまでちょっとこだわるようになった。美濃とか有田とか、陶器自体には昔から興味があったので、いざ収集し始めると大変なことになってしまった。棚に入らない分は棚の中を空けてから買い足してくださいね、と茨が怒っていたので知り合いにあげたりよく検討して購入するようになったのは成長だろう。
「いただきます」
写真を撮って手を合わせる。
テーブルの向こうの棚には綺麗に飾られた棚と骨壷。この席に着いた時、ちょうど向かい合えるように私が設置した。仏壇は大仰すぎるし、茨はお墓を持っていなかった。それに、手元にある方が寂しくない。
茨はきっと嫌がるだろうけれど、殺風景すぎると日和くんが骨壷にレースのハンカチを被せてくれて、ちょっとお淑やかなお嬢さんのようになっている。棚を飾り付けたのも日和くんだ。写真たてに飾られた4人の笑顔が眩しい。まだ10代だった頃の私たち。
「……おいしい」
茨が死んで5年目。
私は今日も元気に生きている。