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    あまや

    ⚠️閲覧ありがとうございます。こちらは店じまいして、ベッターへ移行予定です。ゆるゆる作業進めるのでもうしばらくお付き合いいただけると幸いです

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    あまや

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    SSS/凪茨
    ⚠︎死ネタ
    三人称の練習をしようとしているのに一人称ばかり増える。

    ##凪茨

    21グラムの重さが宿る戸棚の中のマグカップ。
    俺は恥ずかしいから嫌だと言ったけれど、あなたが未練がましく振り返るから店に戻って購入したもの。色違いなんて流行らないと色も柄も全く違うコップを購入したけれど、それでもあなたは嬉しそうに毎日カップを使っていましたね。そんなに大事にされると、どうせ家には俺たちしかいないのだからあなたの望み通り折れてやればよかったなと思います。

    魚のかたちの洗濯ばさみ。
    初めて入った百円均一にあなたは興味津々でした。店内隅々まで見て回ってはこれも百円、これも百円、と幼子のように目を輝かせていましたね。俺は無駄遣いはごめんなので持って来られるたびにそれは家にあります、それは不要です、と言い続けて、やっとあなたがオーケーをもらえたのがこの魚の洗濯ばさみでした。洗濯ばさみもそんなにたくさんいらないけれどあって困るものではないと思ったから許可を出しました。あなたは洗濯するたびにベランダで揺れる魚を追いかけていて、猫のようだなと思いました。

    キッチンにかけられたフライパン。
    あなたが突然購入してきたフライパン。有名な料理研究家が監修していて軽くて丈夫なのが売りだと熱心に語っていたのが昨日のことのように思いだせます。あなたはその日からしばらく料理に凝って手始めに目玉焼きから、野菜炒め、チャーハン、果てはアクアパッツァなんて洒落た料理を作っていました。料理の本なんて借りてきてレパートリーがどんどん増えていましたね。年季が入りすぎてすっかりテフロン加工も剥げてしまって傷もたくさんついています。でも、まだ使えるからと今朝も俺はそのオレンジの剥げたフライパンで卵を焼きました。

    グリーンが鮮やかなカーテン。
    窓を閉め忘れていて夏のゲリラ豪雨でダメにしてしまい買い直したばかりのそれは、殿下の髪の色だとあなたが即決したもの。新品独特の香りもいつのまにか薄れ、すっかりこの家の匂いに馴染んでいます。この家の匂いというのがなにか言葉にするのは難しいです。あなたの香水の匂い、俺の香水の匂い、シャンプーや洗剤の香り、他にもたくさんあることでしょう。それらが混ざり合い溶け合ってこの世に一つだけ、この部屋でだけで香る、俺たちだけが身に纏える香り。けれどこれからこの家の香りは変わってしまうことが決まっていて、それが少し惜しいです。

    細工の可愛らしいカトラリー。何度も座り心地を確かめたソファ。あなたがフローリングに座りたがるから購入した毛足の長いラグ。入り浸って駄目になるから押し入れにしまったままのこたつ。話し合いを重ねて妥協した一人寝には少し大きなベッド。洗面台の右側があなた、左側が俺。あなた専用に調合してもらったワックス。つげの櫛。他にもたくさん、あげ出したらきりがなくていつまでも語ることができそうです。それだけ長い間思い出を共有したということなのでしょう。

    死んだ後の方があなたの気配を感じる気がする。魂がそこかしこに宿っていつでもあなたがそこにいるように思われます。毎日あんなに近くにいて、仕事も一緒で、同じものを食べて、しょうもない喧嘩もしていたのに不思議なことです。
    先に死んだら魂の証明をしようなんて陳腐な約束をしていませんからもしあなたが魂となってこの家に帰ってきたというのならそれは余計なお節介です。魂なんて信じなくても俺はちゃんと生きていけます。
    俺は幽霊も生まれ変わりも信じていませんから、また来世で、なんてことは言えませんが、あなたの輝かしい人生を必ずやこの世界に刻み込むことを誓いましょう。あなたのパートナーとして、あなたの素晴らしさを全世界の人間に知らしめましょう。そうしてこの世界の頂点に立つ俺をあなたの墓標に捧げましょう。
    俺たちが築きあげた楽園こそ、俺の最終兵器として生きたあなたに対する最大の報酬です。
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    あまや

    TRAINING習作/凪茨(主人公ジュン、下二人メイン)
    ⚠︎パラレル。アイドルしてません
    三人称の練習兼、夏っぽいネタ(ホラー)(詐欺)

    登場人物
    ジュン…幽霊が見える。怖がり
    茨…ジュンの友達。見えない。人外に好かれやすい
    おひいさん…ジュンの知り合い。祓う力がある(※今回は出てきません)
    閣下…茨の保護者
    三連休明けの学校ほど億劫なものはない。期末テストも終わりあとは終業式を残すのみではあるのだが、その数日さえ惜しいほど休暇を待ち遠しく思うのは高校生なら皆そうだろう。ジュンはそんなことを思いながら今日もじりじりと肌を焼く太陽の下、自転車で通学路を進んでいた。休みになれば早起きも、この茹だるような暑さからも解放される。これほど喜ばしいことはない。
    「はよざいまーす」
    所定の駐輪場に止め校舎へ向かっていると、目の前によく知った背中が現れた。ぽん、と肩を叩き彼の顔を覗き込むとそれは三連休の前に見た七種茨の顔とはすっかり変わっていた。
    「ひええ!?」
    「ひとの顔を見てそうそう失礼な人ですね」
    不機嫌そうな声と共にジュンを振り返ったのはおそらく七種茨であろう人物だった。特徴的な髪色と同じくらいの背丈からまず間違いなくそうだろうと思い声をかけたのだから、振り返った顔はジュンのよく知るメガネをかけた、男にしては少し可愛げのある顔のはずだった。が、見えなかったのだ。間違った文字をボールペンでぐるぐると消すように、茨の顔は黒い線でぐるぐる塗りつぶされていた。
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