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    Fuzu

    いどくちゃんのゆるゆるssとかえろいssとか…なんかもうとにかくいどくちゃん書きたいな!いどくちゃんてぇてぇやねハッピー!たまに絵も投げます

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    Fuzu

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    あまあまないちゃいちゃをしたいいたちゃんvs運転中なのでいちゃつくにいちゃつけないドイさんの話です

    雨の日 車体を激しく打つ雨の音に辟易しながら、少しずつ渋滞の中を進む。乗り入った時は随分と寒い車内であったが、徐々に暖房も効いてきたようで、汗ばむ前に上着を脱ぐ。せわしなく動くワイパー越しに、数十メートル先の信号が青になるのが見えた。
     適当に周波数を合わせたラジオを流しながらのろのろと車を進ませ、ようやく駅のロータリーにたどり着いた。雨の日はやはり車が多い。皆雨に濡れた家族を駅まで迎えにきているのだろう。ちょうど目の前に停まっている車に中年の男性が笑いながら乗った。和やかな談笑が車間を超えて聞こえてくるようだった。
     さて、かくいう俺も傘を忘れた恋人からの要請でわざわざ来てやっているわけだ。しっかりと暖房を効かせた車内は少し暑いくらいだが、雨に当たった人間にとってはおそらくちょうど良いくらいであろう。助手席に放っていた携帯を拾い、イタリアに電話を掛ける。
    「ハロー。今着いたぞ」
    「ドイツー!!ありがとー!!」
    電話越しに大きな声が鼓膜に鋭く刺さる。携帯の音量を大きくしすぎたのかと思ったが、最小にしてもあまり効果を感じないためそういう訳でもないようだ。少し携帯を頬から離して会話を続ける。
    「ロータリーの、地下に繋がる階段の傍に停めているのだが……分かるか?」
    「えっとねー……どこだどこだ?……あっ、いたいた! おーいおーい!」
    窓を覗き込むと、鞄を頭上にかざしながら駆けてくる彼の姿が見えた。身を乗り出して助手席のドアを開けてやる。
    「ふぃー助かったぁ」
    車の手前の巨大な水たまりをばちゃばちゃと盛大に横切って車に飛び込む。イタリアが急いでドアを閉めると、一度鮮明になった雨音が再びくぐもった。
    いつもであればふわふわと軽やかに揺れる亜麻色の髪はぐっしょりと濡れそぼり、小洒落た服も細い体にぴったりと張り付いてしまっている。シャワーを嫌々浴びさせられた後の犬のような様相に思わず笑ってしまう。
    「ひどい濡れ具合だな」
    「もう、せっかくの色男が台無しだよ!」
    シートに座ろうとするのを制して、後部座席からバスタオルとブランケットを取る。
    「シートが濡れると面倒だから服を脱いでよく拭いてから座れ」
    「はーい」
    車を動かすと、俺が止めていたスペースにすぐに別の車が停まった。
    いつのまにかイタリアは服を脱いで下着一枚になっており、もそもそとブランケットを体にくるまり口元を緩ませて安堵したような息を吐いた。あったけ〜と掠れた声が続く。まだ秋口とはいえ、これだけびしょ濡れになっていれば相当身が冷えたことだろう。
    「今日晴れって聞いてたのになー」
    「災難だったな」
    「今日の俺ツイてないんだよ、ナンパ全部失敗したし」
    「いつものことだろ」
    「遅刻して上司に怒られたし」
    「ナンパなんてしてるからだ」
    「もードイツってば冷たいなぁ」
    「客観的な事実を述べたまでだ」
    ヴェ〜と不満げに声を上げる彼を無視して、行きと比べて随分と空いている道路を進んでいく。反対車線を見ると、先程よりも車の数が多いように見えた。俺の視線を辿って同じように反対車線の混み具合を見たイタリアがうわぁと声を漏らす。
    「お前来るときもこんなに混んでた?」
    「混んではいたが、ここまでひどくはなかったな」
    「ひえ〜、来てくれてありがとドイツ! 俺お前が来てくれなかったらどうしようかと」
    「これだけの雨なのだから仕方ない。それに、まぁなんだ、雨の日に車を出すのも悪いものではないからな」
    「あー、それは分かるかも。雨音って気持ちいいもんね」
    「……そうか、意外だな」
    普段あんなに騒がしいこいつがこの静かな音を好むとは。やはり芸術の国と言われるだけ情緒的なものへの関心は高いのだろう。ちょうど目の前で信号が黄になり、緩やかにブレーキをかける。車のエンジン音が止まって、俺たちを包む音は雨音だけになる。
    それにそれに、とイタリアが続ける。
    「雨の音で包まれてるとさ、世界に俺たち二人っきりって感じしない?」
    随分と甘ったるい声だ。不意を突かれて固まっていると、右隣から甘ったるい視線をひしひしと感じた。
    「お前もそう思わない?」
    「……そこの車が見えんのか」
    「気持ちの問題だよ〜」
    同意しても良かったのだが、それで心を乱してこの先の運転に支障が出ては困る。今最も注意を払わなければならないものは恋情ではなく安全運転である。睦み言を交わすのは家に帰ってからでだって良い。
    ちらりと隣を見やると、先ほどまでの哀れな様相から一転、いつもの柔らかな血色感を取り戻した恋人がむぅと唸りながら唇をつんと尖らせていた。
    思わずその桃色の唇に吸い寄せられそうになり、慌てて目を逸らす。
    安全かつ迅速に帰宅する。今俺が考えるべきことはそれだけだ。今はまだ路上を行き交う車と人がいる。イタリアのあの甘い言葉に同意を示してあの柔らかな体に触れるのは、車をガレージに入れて、シャッターを完全に降ろしてからだ。
    カーナビの示す経路を無視して、小さな路地を通って行く短距離の経路を辿ろうか、と普段ならば考えもしないようなことが脳裏をかすめる。そんな不確実な、と己の内に居残る冷静な判断がそう叫ぶ。あくまでイタリアの体が冷えないか心配なだけだと自分に言い聞かせ、イタリアに不信がられないよう自然を装ってカーナビの経路表示を消した。
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