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    pinefriendyuu

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    pinefriendyuu

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    「守りてぇんだ。たとえ世界を敵に回しても、な。」
    国に狙われる爆を命を懸けて守る切のお話。
    書きたいところだけ書いてみました^_^


    ⚠︎切くんが敵と呼ばれたり、爆くんが吸血鬼になってます
    ⚠︎デくんとショくんが出ます(デ視点)が、カプは切爆のみです

    #切爆
    cutOff
    #hrak(腐)
    hrak
    #hrak腐

    真空地帯ここはとある森の奥の、こぢんまりしたログハウス。
    やっと突き止めた、“吸血鬼“と噂される敵の住処だ。




    不用心に鍵のかけられていない玄関から簡単に侵入できた。罠の可能性を疑いながら、慎重に明かりがついている二階へと上がる。


    「ねーんねーん、ころーりーよ、おこーろーりーよー…」


    奥の部屋の中から、小さな歌声が聞こえてきた。
    それは、日本に昔から伝わる懐かしい子守唄。
    どことなく“洋“を感じるこの家には、なんだか似合わない気がした。

    (この声、どこかで…?)


    こくり。
    チームアップしている轟くんと視線を合わせ、頷きあう。
    突入の合図だ。

    バァァァン!!!

    木製のドアを蹴破り、部屋の中へ入る。

    「僕らが来た!大人しく…!!!」





    「ぼうやは、よいこーだ、ねんねーしーなー…」


    つん、と血の匂いが鼻を刺し、思わず顔を顰める。
    そこには、蝋燭に照らされる小さな椅子に腰掛け子守唄を歌う男が一人と、ベッドに横たわる男が一人。









    「き、切島くん…?」








    ぴたりと歌声が止み、座っている男がこちらを向いた。

    「お、緑谷!轟も!久しぶりだなー!」


    「切島…?!お前、」
    「なんで、君ここで、何して、」

    いつも上げているトレードマークの髪は下ろしていたが昔と変わらない爽やかな笑顔でカラカラと笑う彼に、僕も轟くんも戸惑いを隠せない。


    だって、君は、3年前に失踪して、



    「どうして?!僕たち、ここに敵を捕まえに、」

    慌てて近づくと、彼の隣でベッドに横たわっている人物の顔が見えた。


    透けるような金髪。

    生気を感じられない色の白い肌。

    閉じられた瞳。

    それは。



    「かっちゃん…?」

    切島くんよりも何年も前に失踪した、僕の、幼馴染。



    「っ…!!!!!!」

    怒りで目の前が真っ赤に染まった。

    「っ!?!?かっちゃんが、なんで!!!ねえ!!なんで!!!!!まさか、、!!!!君が!!!!!!」

    激昂する僕を轟くんが抑え、ガッと後ろへ距離を取った。

    「冷静になれデク!!!!!」

    ぐ、と唇を噛む。
    だめだ、ここで感情に左右されてはいけない。

    「…ここで何をしている。答えろ、“烈怒頼雄斗“。」




    轟くんの問いかけに、切島くんは驚いたように目を丸くした。

    「…お前らはまだ、俺をその名で呼んでくれるんだな。」

    「当たり前だ。...お前は、ヒーローだろ。」

    「はは。ヒーロー、な。なぁ、緑谷。お前は、どんなヒーローになるんだっけ。…いや、なったんだっけ。」

    どういう意味だ。
    悲しげに眉を寄せる切島くんに、轟くんと目を合わせ慎重に言葉を選ぶ。

    「僕は、『助けて勝つ』、ヒーローに。」

    すると切島くんは笑った。

    「うんうん、そうだよなぁ。こいつと対だもんなぁ。」

    インカムで轟くんが警察部隊に「敵と対話中。待機してくれ」と伝える。
    …やっぱり彼が敵、か。

    「なぁ、ヒーロー。聞いてくれよ。」

    そう呟いて、かっちゃんの手を握る。
    それはそれは、大切そうに。

    「俺は『守る』ヒーローになりたかった。」

    「…知ってるよ。君は、昔からそうだろう。」

    「おう、そうだな。…なぁ、知ってるか?爆豪さ、国に狙われてんだ。」

    まるで昨日の晩御飯について話すかのように、にわかに信じられない話を始めた。

    「急になんの話、してるんだ」

    「何年か前から日本と外交がピリピリしてる◯◯国、今もよくニュースになってるだろ?あの国のトップは、戦争を起こさない代わりとして爆豪勝己を“ごしょもー“だ。

    この意味がわかるか?」

    確かに◯◯国との外交摩擦は近年問題になっている。
    しかし、“ごしょもー“とは何だ?
    それもかっちゃんを。
    外交、戦争…?頭が真っ白だ。
    急に並べられたあまりに規模の大きい言葉たちに、理解が追いつかない。

    「いい歳こいたジジイが、テレビで一目惚れ、これは運命だ!つってな。こいつの個性も、強くて美しいこいつ自身も、欲しいんだと。ペットとしてそばに置きたいんだってさ。」

    そう吐き捨てるように続けられる。
    ぐ、と息が詰まった。
    ペット?かっちゃんを?なんだ、その話…!
    許せない。先ほど抑えた感情がまた煮え滾ってくる。隣の轟くんからも怒りが伝わってきた。

    「そんなの!!他のヒーローや警察にも相談して、今からでも、」
    「そうだ切島!お前一人で背負うことじゃ」

    そう必死で訴えても、切島くんの目は深淵を覗くように暗いままだった。
    その目で、何を見てるんだ。

    「…お前らならそういうと思ったよ。でも国ってのはな、そう簡単に動かせねぇんだ。懸かってる人間の命の数が、責任が、違う」

    「でも…!!!」


    「だから見逃してくれねぇか。」


    ぴたり、と時が止まった。

    かっちゃんを、切島くんを救いたい。
    …でも、僕たちはヒーローとして、君たちを見逃せない。
    きっと君も、分かって言っているんだろう?

    「この数年、そのためにやってきた。どっちみちもうこの身体じゃ、“元“には戻れねぇ。世界中逃げ回るしかないんだよ。ま、それもこいつとなら悪くねぇけどよ!」

    …この、身体?
    そう言われてざっと見ても、変わったことは見当たらないように思えた。

    「お前、死ぬまでずっとそうして生きていくつもりか?分かってんだろ、こんなことしてりゃ必ずどこかでお前達は捕まる。今なら、」

    「もう、引き返せねぇんだよ!!!」

    轟くんの言葉に反発するように、切島くんが叫んだ。
    あまりにも、辛くて、悲しくて、今にもひび割れて消えてしまいそうな、初めて聞く彼の声。

    「爆豪は狙われてる。逃げるのをやめれば捕まる。捕まれば国の奴隷になる。
    …なら俺は、この命よりも大切な愛しいこいつを『守る』しかないだろう?



    爆豪を、守りてぇんだ。
    たとえ世界を敵に回しても、な。」

    そういってベッドに横たわるかっちゃんを抱き上げた。

    「…でも、俺が一番に気付いて、俺が追いかけて、俺がこいつの側にいる。はは、お前らじゃない、他の誰でもない、俺だけ。それだけはよ、運がよかったよ。」


    急な切島くんの動きに警戒し、ザ、と脚を引いて臨戦体制をとる。
    こんなこと、したくない。そう心の奥底が叫ぶ。


    「そろそろお目覚めか?俺のお姫様は」

    演劇でもしているかのように恭しく、ちゅ、と頬に口付ける。
    すると、真っ白な腕がするりと吸い寄せられるように切島くんの首に回った。




    ——意識が、ある。

    その衝撃に気を取られている間に、パリン!とガラス窓が割られカーテンがはためいた。
    窓の外には、大きな満月が輝いている。

    「っ、くそ!デク!」
    「うん、ショート!」

    ダッと駆け出した瞬間、




    ゆっくりとかっちゃんの目が開いた。
    その瞳は僕の記憶の中よりも血を煮詰めたように濃い赤で、暗い部屋にいるのに宝石のような輝きを放っていた。


    …まるで人形のように目だけ別のものを嵌め込んだみたいだ。
    ぞっと背筋が凍る。
    あれは、普通の人間のものではない。



    ぐ、と足に力を入れて止まる。

    「かっちゃん!!!!!!!!!!」
    「爆豪!!!!!!!」


    「ぁー…?」

    当の本人は心地よい眠りから目覚めたかのように呑気な様子でちらりと周囲を見まわし、猫のようにくぁ、とあくびをした。
    そして「うるっせぇなァ…」と言いながら、切島くんの首筋に擦り寄る。

    「んー、ごめんな!おはよ!」
    「ちっ、てめぇめんどくせぇのに見つかりやがって…」
    「だからごめんって!」


    そう2人が会話をし始めた。

    僕たちは呆気に取られた。
    制服を着ていたあの頃から、変わらない2人の様子。
    夢を、見ているようだ。


    ふと、かっちゃんがこちらを向いた。

    その赤い瞳と目が合った瞬間キィィィンと頭の中に音が響いて、金縛りにあったように動きが封じられる。

    「クソっ、なんだこれ…!」
    「何したんだ!!ねぇかっちゃん、話を…!!」


    かっちゃんはもがく僕たちをみて、満足げに目を細める。

    「…ま、俺らも命懸けなんだわ。見逃せや。」 

    「はは!俺らもういくら命懸けても死なねぇけどな!!」
    「お前は黙ってろ」




    いずく。

    「またな。」


    ハッと笑ったその口には、2本の牙が覗いている。
    ...そして月明かりに照らされた切島くんの首は、赤黒い血で染まっていた。

    よっと、と言いながら切島くんがかっちゃんを抱えたまま窓から勢いよく飛び出した。なのになぜか地面に落ちることなく、さらに上空へ体が舞い上がっていく。


    ——そして2人は闇の中に消えてしまった。
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