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    @Futa_futa_2222

    ジャンルごちゃまぜ闇鍋。
    カプは全部プラトニックです。
    官能表現に乏しすぎてどう脳内をほじくりかえしても生み出せないので……

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    2023/7/30 司冬ワンドロワンライ 登校日/放課後デート ゲームセンターのロゴが描かれた袋に、新刊が入った紙袋。その隣には楽しげに日常を語る先輩。陽が傾き始め、二人の足元に影を作る。
    「……気になっていたのですが」
    「どうした?」
    「放課後デートとは……何でしょうか」
    「ふむ、放課後デートか……」
    先輩の両手には袋が握られていて、一つは俺がゲームセンターで見つけたぬいぐるみだ。ポップな羽を生やした可愛らしいペガサスで、一目見ただけで司先輩を想起させた。ペガサスと同じシリーズらしい桃色のうさぎは足裏に星の刺繍が施されていた。どこか咲希さんを思わせるぬいぐるみも、ペガサスと共に司先輩の手にしっかりと握られている。
    先輩の手元から視線を移動する。思考を整理している横顔は射し込む夕陽に照らされ、髪は絹のような黄金色を纏っている。急に先輩は足を止め、振り返った。
    「それはな……オレにもわからん!」


    話は数刻前に遡る。ホームルームを終え、呼び出されるがままに中庭に向かうと、先輩は奇妙なポーズをして待っていた。そして俺の姿を見るや否や、こう言った。
    「冬弥、今日呼んだのはほかでもない……」
    「オレと!放課後デートに行こうではないか!!」
    斯くして、司先輩との放課後デートが始まったのだが。(ちなみに、俺の予定は今朝白石に聞いたらしい)

    二人で向かったのは書店にゲームセンター。ゲームセンターでは、司先輩のゲームの腕が前回よりも上達していたこともあって、白熱した戦いが出来たと思う。司先輩は勝っても負けても「む、もう一回だ!」と再び挑んでいた。
    ゲームに余程熱中していたようで、お店を出た時には既に日が暮れていた。家にいる時間を少しでも減らしたいがために彷徨っていた頃とは違う。今の俺には、放課後はあまりに短い時間に感じられた。

    それから、俺は疑問を抱いた。これは即ち、
    「普段のデートと変わりないのでは……」
    人気の少ない場所。自販機で適当に買った飲み物を片手に、ベンチで言葉を交わす。緩やかな風が吹いて、葉が静かに零れ落ちた。
    「うーむ、言われてみれば確かに……」
    「それに、俺の行きつけの場所ばかりでした」
    「白石から、お前が好きな作家の新作を買いたいらしいと聞いてな」
    「おかげで、無事に買えました」
    白石は今朝、風紀委員の仕事をしていたな、と思い出す。神代先輩と共に、持ち物検査にでも引っかかったのだろうか。元々今日は新作を買う予定だったが、新作を無事に買えた上に司先輩とも会えたのは、俺にとって僥倖だった。まさかこのような経緯があったとは思っていなかったが。
    コーヒーを一口呷って、先輩に向き合う。
    「もう一つ疑問があるのですが」
    「どうして、急に放課後デートを……?」
    ずっと聞きたかった疑問を口にすると、司先輩は困ったように笑って、ぽつりぽつりと話し始めた。
    「最近、浮かない顔をしていただろう」
    「だから、何か悩みがあるのかと思ってな」
    「良かったらでいい、オレに話してみないか」
    真っ直ぐとした言葉だ。曇り一つない瞳で、俺の心の全てを見透かされているようだった。
    この人は、非常に頼り甲斐のある人だ。それに、感情に対して聡い。それこそ、俺が俺自身の心に気付かなかった時も、真っ先に手を伸ばしてくれた。司先輩はとても優しいと、俺は知っている。
    「悩みと言えば確かにそうですね」
    「!やっぱり、なにか悩んでるんだな!」
    「でも、司先輩のおかげで解消されました」
    「んん?解消……?」
    「悩みと言うには少々恥ずかしいのですが……最近先輩との時間が取れなかったので……」
    司先輩たちは大きな夢を見据え、俺たちにも超えるべき壁がある。それぞれの事情は理解しているが、胸につっかえた寂寥は消えないままで。
    「なので、今日は久しぶりに司先輩といれて、とても楽しかったです」
    進級後は今以上に時間が取れなくなるだろう。いつかは卒業し、校内で会うことも叶わなくなる。俺たちは、異なる道を歩いているのだから。夕陽も落ちて、暗闇が足元を覆った。
    「時間も遅いですし、そろそろ帰りましょう」───そう口にしようとした、その時だった。
    突如、眩い光に照らされた。灯篭が一斉に光を放つ。青々とした木々は、瞬く間に白く輝いた。
    細めた目を開くと、思わず息を飲んだ。暗闇の中に、色とりどりの灯篭が点在している。木々は星のように輝き、街頭は月のように佇んでいた。
    目的も忘れ、ただ目の前の風景に見蕩れる。先程とは異なる空間にいるような、幻想的な光景だ。
    「綺麗だろう?イルミネーションイベントがあると聞いて、冬弥と見たいと思ったんだ」
    「……とても、綺麗です」
    本当に、言葉にならないほどに綺麗だった。夜空に浮かぶ月と、足元を照らす光に包まれ、冬弥の想いも霧散してしまう。


    「少し遠回りにはなるが、この道を通って帰ろうではないか!」
    そう言って歩き出す司先輩を追って、俺もベンチから立ち上がる。そうして差し出された手に、自身の手のひらを重ねて歩き出す。
    (先のことを憂いる前に、今はこの時間に集中しよう)



    「また、放課後デートしませんか?今度は司先輩のご希望の場所へ行きましょう」
    「冬弥から誘ってくれるとは……!楽しみにしているぞ!」
    「そのためにも計画を立てなければいけません。まずは司先輩の希望を聞いて、それから……」
    お互い、自分だけの夢の道を歩んでいる。進む道は違えど、今だけは、同じ時間を共有していたい。
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