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    @Futa_futa_2222

    ジャンルごちゃまぜ闇鍋。
    カプは全部プラトニックです。
    官能表現に乏しすぎてどう脳内をほじくりかえしても生み出せないので……

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    2022/12/18 司冬ワンドロワンライ 「指先から伝わる」「紅潮」 本格的に冬が訪れ、雪がちらつき始めた午後。時間が経つにつれ寒さが厳しくなるだろう、と冬弥は空を見上げた。朝は雲ひとつなかった空は、今や灰色を身に纏っている。不意に冷たい風が頬を撫で、無意識に両手の指先を擦り合わせる。はあ、と息を吹きかけると、心做しか温かさを取り戻した。何度か擦り合わせていると、視界の端に見覚えのあるコートが目に付いた。後ろ姿に声を掛けると、相手も気付いたようで。手を振りながら近付く様子に笑みが溢れた。
    「すまん!待たせてしまったか?」
    「いえ、俺も今来たところです」
    そうして冬弥は、待ち合わせ相手───司の頬が赤みを帯びていると気付いた。
    「司先輩……少々顔が赤いですね」
    体調を崩されたのか、という冬弥の不安とは裏腹に。司は目を見開いた後、納得した様子で答えた。
    「それは、走ってきたからだろう」
    軽く告げられた答えに、今度は冬弥が驚く番だった。
    「司先輩、ここまで走って来たのですか?」
    「ああ、冬弥を待たせるわけにはいかないからな」
    雪も散り着く中で司先輩を走らせるわけにはいかない。それに、連絡をしてくれれば待っていたのに。そう言いたげな冬弥の視線を感じ取ったのか、司は首を振った。
    「良いんだ。走ったら身体も暖かくなったしな!」
    「むしろ、冬弥は寒くないか?」
    真逆自分が聞かれるとは思っていなくて、冬弥は目を開いた。優しく、手に触れてもいいかと司に聞かれ返事をすると、途端に右手を握られる感触が。
    「うおっ冷たっ!冷えているんじゃないか」
    もう片方も、と言われ素直に手を出すと、冬弥の白い両手がふわりと包み込まれる。じっと指を見つめた末、指先が赤くなっていると気付いた司は、指先を重点的に覆った。その動きが少々くすぐったくて、つい笑みがこぼれてしまう。つられたように、手を握っている彼も笑い出す。
    「指先も赤いぞ」
    「ふふ、司先輩の手は暖かいです」
    「それは走ってきた甲斐があったというものだな」



    手のひらを両手で包み、あったかくなれと念を送る。たまに手の甲を撫でて温めると、赤みは徐々に引いていった。整えられた爪をそっとなぞる。彼の手先はいつも綺麗で、手入れされている。幼少期の教育故かはわからないが、司はその繊細なやわらかな手が好きだった。
    (きれいだ)
    暫くして、「……司先輩?」という声が振ってきた。顔を上げると、困惑した表情と目が合った。瞬間、すぐに逸らされ俯かれる。いや違う。視線はオレの手元へ向かっているようだ。
    「えっと……いつまで手を?」
    何か言いたげな視線を通して、困惑げに呟かれた言葉の意味を、司はようやっと理解した。
    「す、すまん!綺麗だと思ってな……」
    顔が沸騰したように熱い。ちらりと覗いた顔も、同じように赤かった。あんなに冷たかった手も、今やほかほかである。
    「……」
    冬弥の口が、声にならない声をあげる。唇はあ、とかう、の形をするも、何も言葉に出来ていない。なんだかオレも恥ずかしくなって、赤くなった顔を隠すように歩き出した。
    「そ、そろそろ行くぞ!」
    握った手はそのままで。どんなに寒くても、手のひらの温度は変わらない。感触を確かめるように、離れないようにしっかりと繋いだ。二人でいれば、冬の寒さになんて負けないだろう。


    「司先輩、目的地はそちらでは……」
    「す、すまん!」
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