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    nmhm_genboku

    @nmhm_genboku

    ほぼほぼ現実逃避を出す場所

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    nmhm_genboku

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    わんわんお!!!

    わんころ属性がゆく!九条夏樹(♂)

    この後タケミチと一緒に色んなところに顔を出す。場を引っ掻き回す犬っころ。
    バジより長めのロングヘア。この後公開散髪式が開催される抗争があるけれど、サマーカット事件としてバジのトラウマ。
    本人頭軽くなったー!ぐらいの感覚。

    なっちゃん呼びするとわんわん!って来るのになっちと呼ばれると無言でやってくるので飼い主(タケミチ)からもう少し愛想良くしようぜって言われる。
    タケミチの人誑しっぷりを見ながらやべぇーwwって言いながら笑う強者。
    この世界は誰も死なないしマイキーくんも闇落ちしないけれど、色んな抗争に顔出す度原作の修正やべぇって思っちゃうアホの子。誰も死んでないことを考えれば分かるのにね…。

    ちなみにこの世界は平和な話なので後々稀咲はタケミっちの人誑しにより無事更生するし、誰も死なない。やったね!

    ☆☆☆

    「タケー」
    「なつ…」

    ボロカスにやられてて草。
    そう言葉を吐き捨て、増援か?と尋ねてすぐに拳を振ったキヨマサをの攻撃を避けて殴り、地面に落とした九条に、彼らは目を見開いた。

    「お前俺の電話に出ないってナニしてんのかと思ったら喧嘩かよ」
    「あ、ごめん。電源落としてた」
    「ないわー。もし俺が道に迷って途方に暮れて泣き疲れて死んだらどうすんだよ」

    いや、飛躍しすぎ。そう思わずツッコミを入れたタケミチに、もしもの話だって言ってんダロ、と若干怒り気味に言った九条。タクヤはぽかんとした顔の後、お前そんなに強かったっけ?と声を上げた。

    「んぁ?あー…まぁ。タケから誘われなかったから俺っち寂しくて一人でスパーリングしてたけど」

    お前らもうちょい相手の情報探ってから挑みに行けよなー、と笑って言った九条に、タケミチ達はすんません、と謝るしかなかった。結局キヨマサ達は九条の手によって地面に倒され、土下座していたタケミチ達と同じように土下座された後、九条からその光景をカメラに収められ、こいつらに手ェ出したらバラ撒くから、と丁寧な脅しを入れられ、彼等の最悪なスタートは一瞬で幕を降ろした。

    …と、思うじゃない?
    原作の修正力舐めたらあかんって話。キヨマサが話を盛に盛って、東卍だと知って、背後から奇襲されたって言ったらしい。なっちゃんよくわかんない。そんでそれを聞いた東卍の奴らがタケミチ達に喧嘩を売られたと勘違いしてきてるんだよねー。学校に。

    「ウケるwww」
    「ウケねぇから!!マジでどうすんだろ、あの数…」
    「タケミチ君たちに報復ってやつ?マジで?やばいところに手ェ出した感じじゃん」
    「うーん…話通じそうなやついねぇかなぁ」

    ざわざわとうるさい外野は置いておいて、彼ら(東卍)を見る。ほとんど参番隊の連中だけれど、どっかにいないかなぁ。アイツら宥められて、さらにそれなりに強いやつ。俺強い自信はあるけれど、宥められる自信はねぇんだよなァ。

    「んぁ?ちょ、バカミチぃ!!?お前ら揃いも揃って外出んなよ!!」
    「うるっせぇ!!これは俺らの喧嘩だ!周り巻き込むわけにもいかねぇんだよ!!」

    ヒュー!男前ー!!
    でもさっきひなちゃん飛び出して行ったからなァ。ひなちゃんあの喧騒の中に飛び込むと思う人ー!

    「はーい!ってことで仕方ねぇな~!!」

    ヨッ、と声を上げて二階の教室から飛び降り、木を使って地面に着地。外に飛び出そうとしていたひなちゃんには、俺が何とかするからと言い、下駄箱の所で待機してもらって、タケミチの所へと走る。つーかホントにあのマイキー君がこんないざこざでゴーサイン出す?俺ならそんな不確かな情報の中でのゴーサインは出さねぇかなぁ。

    「オメェらさてはあれだな?独断行動だな?」
    「は…はぁ!?ンなわけねぇだろクソガキ!!」
    「いやいやいや、そんじゃァ、なんでトップが居ねぇんですかね??お前らに任せるって言われてんなら隊長クラスも一緒じゃないなんておかしくなァい?」

    俺だったらこういうのはちゃんと調べてから許可出すし。そう言って首を鳴らせば、うるせぇ!と声を荒げて出てきたキヨマサに、ヒュウ!と声を上げた。

    「見てアレ。最近のタケみたいなキレ方」
    「俺あんな感じだったの!?」

    うそでしょ!?とちょっとだけ現実逃避しているタケに、マジやでとトドメを刺しながら、ひなちゃんの前では見せないようにしているけどねー。と言っておく。お前ひなちゃんの事大好きだよな。

    「んー、でもまぁ、反省してない人間に対して俺優しくないんで」

    今ここで喧嘩、買ってやるよそう言って口角を上げてから、くいっ、と人差し指と中指を合わせて相手を呼び込むように指を二度動かす。しっかりと挑発と理解してくれたらしく、キレた彼らににっこりと笑って九条は取り敢えず狙うはキヨマサかなぁ、なんて思っていれば、バブとゼファー、インパルスなどなど。これは俺が前に出てたらダメなやつだって思ったので、そっと数歩後ろに下がった。千堂くんとタケからは二度見されたけれど、出てきた彼らに察したのか、覚えてろよお前って顔で見てきたあの顔は今世紀最大に笑えるネタである。

    「おい、キヨマサァー」
    「!?」
    「待ても出来ねぇ駄犬がよォ、調子こいてんじゃねぇぞゴラァ!!」

    そう言ってキヨマサの腹に蹴りをぶち込まれたのを見て、うっわモロじゃん、と呟いた。まぁめっちゃ小声で言った俺の言葉は聞こえていないのか、山岸はドラケン君の説明を俺よりも少しデカい小声でし始めたたので、不良辞典の記憶力はすげぇなって思った。俺?興味ないことはトコトン興味ないので覚えられないと思うわ。

    「つーかお前らなに?この人数相手にしようと思ってたの?」

    弱いんだからあんま出てくんなよって一虎くんが言ったのを聞いて、なるほどツンデレか、と思った人は絶対ポジティブだと思う。俺一瞬舌打ちしちゃったもん。睨まれた瞬間タケが前に出て俺を隠してくれたけど。

    「ふーん…。お前名前は?」
    「えっ!?アッ…は、花垣武道…」
    「タケミチ…タケミっち」
    「へぁ!?」

    原作補正やべぇな?そう思っていた俺とばっちりしっかりキヨマサくんと目線があったのでそっと彼に見えるように携帯を持てば、やめろというように首をぶんぶん振ってくるので、後でもう二度と近づくなよって釘を刺しておこうと思った。

    「んで?お前は?」
    「あ、短パン小僧でお願いします」
    「ポケモンかよ」

    思わずツッコミを入れたバジに仲間か、と呟いた九条。両者の間にピリついた空気が産まれ、思わずマイキーたちも、タケミチ達も無言でその二人を見つめる。お互い自分の懐に手を入れて、教室で見守っていた一般性とはゴクリと固唾をのめば、両者の手の中には、四角いゲーム機…そう、DSである。それを取り出し両者は声を上げた。

    「俺ダイヤモンド!!」
    「俺パール!!」

    ッシャァ!!!と二人でガッツポーズとった後、通信やり始めてどうしようかとマイキーは本気で思った。いや普通に他校にきてポケモンするな。因みに夏樹とゲーム仲間の陰キャたちは一足先に図鑑を埋める九条に少しだけ殺意を覚えた。

    「つーかお前名前ナニ」
    「夏樹です。九条夏樹。なっちゃんって呼んでくれてもいいんですよ!兄さんは?」
    「俺ァ場地圭介。バジでいい。マイキーの質問に答えねぇとかキモ座ってんなぁ、お前」
    「なっちゃん発言は無視かな??いやっ、あー…、素性が知れない人に名乗る名前がないだけですね」

    そう答えた九条に、バジはなるほど、と思った。不良の世界では“無敵”のマイキーなんて名前で通っているけれど、一般人からしてみたら、彼は素性のしれない他校の不良人間。しかも迷惑な奴らを傘下にいれている男である。クッと喉奥で笑いながら、お前実はここに居る誰よりもつえぇ自信あるだろ、って言われた、否定はしない。でも肯定もせず、通信を終わらせた俺は、ゲーム機を閉じてゆっくりと彼等の方を向きながら、笑って言ってやる。

    「流石に無理」
    「いや今の雰囲気、確実に出来る見てぇな空気だったじゃねぇか!!」

    ふざけんなっ、なんて言いながら髪の毛をぐっしゃぐしゃに掻き回すバジ君のそれを甘んじて受けてからタケの方へと戻る。キャッキャしすぎて逆に疲れた。

    「お前コワ…」
    「殴ってきたら殴り返すぐらいの勢い無いと会話とか無理」
    「物騒なんだよなァ…」

    はぁ、と頭を抱えてそういったタケに、物騒な人間を演じる方がまだ楽と言って、後は彼らに任せるか、とさっさと教室に帰ろうと思えば、また後ろから声が聞こえる。

    「なんっすか?」
    「お前タケミっちのなに?」
    「幼馴染であり友であり親友でもあり、時にライバルでもある存在ですね!」

    だからちょっとやそっとでテメェらにタケは寄越さねぇぞって言う挑発も含めて言えば、ふぅん?って返されただけだった。アイツ!!ムカつくんだけど!!!

    「なっち」
    「なっちゃん以外認めないんで」
    「知らね。なっちもタケミっちも、今度東卍の集会おいでよ」

    こいつらの処分お前らに決めさせてあげる、なんて言ってうっそりと笑ったその顔を見て、俺はタケミチを生贄にして、その日は欠席しようと思った。まぁバジさんから拉致られて強制参加になったけれど。

    「お、俺はもう関わってこないならそれで特に希望はないっす…」
    「はいはーい!キヨマサっち約束破ったのでこの間取った土下座動画バラまいてもいいっすよね!?」
    「止めてあげて!!!!」

    お前に慈悲の心はないの!?ってタケから言われたけれど、慈悲の心なんてあるから殺されるんだよ。誰にって?未来のマイキーくんにだよ。まぁ、そんなことは口が裂けても言えないので、慈悲の心はタケがもっててくれれば充分でしょって言ったらお前は呵責の心しか手にしないつもりかって言われたので元気にサムズアップしといた。頭叩かれたけれど。

    「なっち」
    「なっちゃんが良いんですけどねぇ。なんですか?」

    その動画見せてって言われたので、本人拒否ってたけど見せてあげれば、やりすぎって言われてタケにも同じ事してたんでって言い返したらそれなら仕方ないなって言われた。判定がガバすぎである。

    「まぁ別に俺どっちでもいいんですけれど。ねぇ、キヨマサくん」

    すとん、と正座している彼の目線に合わせるように座って夏樹はゆるっと笑う。

    「どうせ君、この後自分は悪くないって言って自暴自棄になると思うからさ、ここで終わりたいんだけど、どういうのなら、満足します?」
    「まず一発殴らせろや」
    「俺も一発殴っていいなら?」

    そう言った俺の声に弾かれ勢いよく立ち上がって顔面を蹴りつけてきたので俺も負けじと上段蹴りをぶちかました。ファイッ!!

    「さてはオメー、懲りてねぇな???」
    「うっ、ぐぅ…」

    ボタボタと口から血を垂れ流すキヨマサ君を見て、タケに視線を向けたら頭抱えられた。帰っていい?

    「なっち東卍に入る?」
    「あ、遠慮しておきます」

    帰っていいっすか?と思わず聞いた俺の言葉を切り落とすように、バジさんからお前一番隊なァ~って言われて思わず虚無を背負った。いや、入るって言ってねぇっす

    「はい!発言権を行使します!」
    「難しい言葉使うんじゃねぇ」
    「マジかよ!!?」

    取り敢えず発言させてもらいますって意味なんですけれど、と答えれば、許すって言われたので用件だけ答える。

    「帰りたい」
    「この状況で!?」

    場を乱してからが本番って俺思ってるから!

    ☆☆☆

    8月3日、武蔵祭りが開催される中、俺はふ、と大事な事を思い出した。

    「あ、りんご飴買いそびれた」

    あれがないと夏祭り参加したって言えないわー、なんて。
    かき氷片手に近道するように裏手の駐車場に入れば、鉄バット持った白い特服が辮髪の方に抜き足で近づいていくのが見えて、思わず手に持っていた傘を投げ飛ばした。

    「あだっ!?」
    「なっ!?」
    「あれ?ドラケンさんじゃないですかー」

    お久しぶりですねー。そう言って近づいてくる夏樹の姿を見て、先程傘をぶち当てられた男はキレ気味にてめぇ!と声を上げたらかき氷が飛んできて顔面にぶち当たった。

    「こんな所で何してんすか?」
    「…こっちのセリフだわ、それ」

    あと、くいもん無駄にすんなって言われたけれど、やっぱりいちご抹茶メロンコーラはクソまずかったので仕方ないということで。

    「ペッペッ、ペッ…おえっ…」
    「ダメージ受けててくっそウケるww」

    俺も一口食べてヤベぇもん買ったなって思ったから、分かるわ、と言いながらごしゃっ、と相手の顔面を踏みつけ、祭りの日にも喧嘩っすか?と尋ねれば、はぁ、と深いため息を貰った。なんでや

    「お前…いや、もういいやなんでもない」
    「諦められたんだが?」

    失礼すぎんか?と呟いて失礼すぎん?と再度隣にいる女の子に聞けば、喧嘩強いねーって言われただけだった。ちょっとズレてんね。

    「ところでなっちは」
    「なっちゃん」
    「なっちはなんで」
    「なっちゃん!!!」
    「…なっちゃんはなんでここに居るんだよ」
    「りんご飴買いそびれたので買いに戻ろうかと。ここ近道なんですよねー!」

    キレ気味に名前を訂正する俺を、やっばwwと笑う女の子を見て、彼女さん?と聞けば違うと言われたので2度見した。嘘じゃん!!!

    「おいおい、お前何邪魔してくれちゃってんのー?」
    「…帰っていい?」
    「なっちゃんは自分で蒔いた種は自分で回収できるよなぁ?あ?」
    「わんわんおー…」

    えー、面倒くさァ…と思って呟いたはずなのに出た言葉はわんわんお。さながら犬である。目の前で騒ぎ立てる不良がその言葉を聞いて、東卍はわんちゃん買ってんのかよ、とゲラゲラ笑いながら言ってきたもんだから、ポケットに入っていたゴムボールをぶん投げておいた。

    「おら、お犬様が遊べって言ってんだから遊べやクズ野郎!」

    中指を立てながら吐き捨てた九条のその言葉を聞いたドラケンは思わずおもしろそーだから静観しとこ、なんて思った。

    「オラァ!!!喧嘩する体力あるなら俺と遊べやクソが!!もっとボール投げろよ!何にヒヨってんだばーか!!」
    「なっちゃーん、その辺にして戻ってこーい」
    「はーい!」

    ボール投げ(投げた先の相手を殴って沈める)もそこそこに、白い特服を着ていた連中の誰もボールを投げなくなったのでブチ切れてたら、ドラケンくんから呼ばれたのでボールを持っていたやつを殴って沈めてボールを回収してから戻れば、ボール、と言われたので、彼の手に置けば、取ってこーいと楽しげに愛美愛主の連中に投げながら言われたので、わんわんお!しておいた。気づけば全員地面に倒れていたので弱っちぃ飼い主だったな、なんて。

    「お疲れ」
    「いーえー」
    「ど、ドラケンくん!ってアエェェェ!?ナンデ!?なんでなつがここに居んの!!!?」
    「りんご飴買いそびれた」
    「嘘だろ!?」

    それでこの惨状作ンの!?って言われたのでただ俺はボール遊びしてただけやでって弁解しておいた。

    「ドラケンくんが取ってこーいってボール投げてくれたから」
    「なに懐柔されてんだよバカッ!!」
    「わんっ!」

    わんっ!じゃねぇんだよなァ〜!!と頭を抱えたタケミチに、ボールをとりあえず渡しておく。使わねぇから!!って言われたけれど、多分使うで、お前。そんな俺らを三ツ谷くんがゲラゲラ笑って爆笑してんの見て、褒めんなよって思った。褒めてねぇと思うけど。

    「んあ?なに、もう倒してんの?」

    やるなぁ、と雨降る中ゾロゾロと白い特服を着た奴らと一緒になんかひょろ長いやつが出てきたのですっ、とタケミチの後ろに隠れる。いや、…背の高いやつって苦手なもんで。そんな俺らの警戒をよそに、独特なバイクの排気音、そう、バブである。その音を聞いて、あっ、嫌な予感。なんて思って逃げようとすれば、首根っこを掴まれた。誰にって?三ツ谷くんにだよ。

    「なっち」
    「なっちゃん」
    「…なっちゃんはここに居ような」
    「わん…」

    えー、マジで?なんで?なんて言葉が浮かび上がるけれど、なっちゃん呼びに直ぐに変えてくれたので仕方なしに言うことを聞いておく。そんな俺を見て、タケミチはお前…ってドン引きの顔してた。オメーのせいだから後でぶん殴ろ。(理不尽)

    「ふーん?東卍って犬っころ飼ってたっけ?」
    「誰だおめー」

    人のこと犬っころっていうのやめてもらってもいいっすか?と不機嫌な顔で言っていれば、バイクをスライディングしながらやってきたマイキーくんに思わず拍手してしまった。すっげぇ!って感じ。

    「…なっちなんでここにいんの?」
    「りんご飴買いそびれたので」
    「意味わかんない」

    俺もなんでここに巻き込まれてんのか意味わかんない。そう言えば、ドラケンくんが巻き込まれるというよりも、巻き込まれに来たようなもんだろって訂正してきたので真顔で彼を見ておいた。何言ってんのかなっちゃん分かんなーい!

    「まぁいいや。相手は5人、こっちは100。内部抗争しようとしたら失敗したけどさぁ、今回は逃げんじゃねぇぞ」

    逃げたら地獄まで追いかけて全部の歯を抜いてやるって言ったヒョロ男を見て、キメてんなぁ、なんて思った。

    「ん?」

    ぴくっ、と耳が遠くで響くバイクの排気音を捉える。思わず後ろを見るが、まだ到着には時間がかかる距離だ。仕方ないのでりんご飴買いに離れてもいいかなって聞こうとする前に、おまえら全員鏖発言をヒョロ男にされてしまったので、原作補正すげぇなーって思いながら、ピッと元気に手を挙げた。

    「発言権を執行します!」
    「ばっは♡い〜ぜぇ?」
    「お前、だれ?」

    すっ、と首を傾げながらいささか不機嫌な声色で尋ねれば、今愛美愛主を“仮”で仕切っている半間修二というやつらしい。罪と罰のタトゥーを入れたその手をみながら、ふぅん?と声を出せば、おめぇは?と聞かれたので、短パン小僧ですね!と言っておく。今日は短パン履いているから嘘は言ってねぇもん。

    「名前聞いてんだよなぁ〜♡」
    「んじゃぁ、さっき言ってた犬っころでいいっすよ。俺、自分の飼い主は自分で決める賢いわんちゃんなので」

    ニッコリ。そう笑ってお宅も大変ですね、って言っておく。

    「あー、なるほど、おめぇかぁ♡アイツが言ってたよ、手懐けることが出来りゃァ一騎当千、扱いが難しく、こっちの世界にゃとんと興味すら示さないのに、ある一定の事になると牙を剥く。今回の俺らが仕込もうとした内部抗争の失敗も、おめぇのせい?」
    「わん♡」

    すげぇ喋んじゃん。なんて思いながら肯定とも呼べる返事をすれば、半間くんはばはっ♡と再度のったりとした笑い声を発し、なるほどなぁ、と声を出した。

    「お前、俺のペットにするわ」
    「ノーセンキュー!それに、知らないんですか?“ピットブル”は気性が荒いんですよ?俺の手網を握れるのは俺が認めた飼い主(タケミチ)だけなんで、諦めてくださーい!あと、その人数に勝てる人達もうくるんで!」

    そう言った俺の声に合わせて、バイクの排気音が飛び交うようにやってくる。タケミチは慌ててお前の仲間!?と聞いてきたのでそんなわけねぇだろって言っておいた。ついでに、俺はちょっと喧嘩のできる一般生徒だからね?って言っておく。すげぇ納得いかないって顔を全員にされたけど。でも賢いわんちゃんはちゃんと時間稼ぎも出来てこそって話だよね!全部タケミチのためだけど!

    「あ?なっちゃんじゃねぇか。なんでこんな所にいるんだよ」
    「りんご飴買いそびれたので」
    「あー、そういや今祭りか。後で買ってやろうな〜」

    わしゃわしゃと俺の髪の毛ごと頭を撫でくりまわすバジくん、最高にテクニシャンですね!思わず言うこと聞いちゃいそうになっちゃうわ!

    「帰ってい?」
    「おー、これ(喧嘩)が終わったらな。どーせあのやられてる奴らお前の仕業だろ」
    「うっ、イタズラがバレた犬の気持ちが分かった気がする!!」

    わしゃ、ともう一度撫でくりまわして、手伝ってくれるよな、と言われてしまえばわんっ、と肯定の言葉を繋ぐしか無かった。ちくしょう。

    「えっ、おま…えっ!?」
    「ちぇー、タケミチなら騙せると思ったんだけどなー」

    でもまぁ、仕方ないか。ゆるり。そう言って愛美愛主に向かって笑って見せれば、少しだけ萎縮する彼ら。ちゃんと躾しないと逃げ出しちゃうぐらいの怖がりじゃん、なんて。

    「そう言えばピットブルってなに?」
    「あぁ、気にしなくていいよ」

    勝手に呼ばれているようなもんだし。俺は興味無い世界で有名になるほど暴れた覚えもないし。タケミチの質問にそう言った九条に、千冬は目を大きく見開いた。

    「お前が?」
    「ふはっ…。そう、俺が♡」

    昔の話だ。原作通りになる可能性を少しでも消したくて、そこら辺のチームを片っ端からぶっ潰して回っただけである。

    「飼い主手に入れたから、大人しくしてたんだけど、まだ名前広がってんのね」
    「お前何してんの!?」
    「ちょーっとおイタしてただけだもーん!」

    今はそんなことしてないから安心してよ。そう言ってニコニコと笑う九条に、タケミチは眉間に皺を寄せながらも危ねぇ事してねぇなら、それでいいけどさー、と声を上げた。

    「タケミっちマジかよ…」
    「俺ちょっとあいつの感性が怖いんだけど」

    とちょっとザワつく声を窘めて、半間くんへと視線をもどす。

    「わんっ」
    「ばっは♡お前ら、あの犬っころからぶっ殺せよー」

    やれるもんならやってみな。そんな気持ちを込めた目を見せ挑発し、祭りの日に喧嘩ってちょっとテンション上がるよね!

    「あ、タケミチ、なんかあったらその相手にゴムボール投げて俺に取ってこいって言ってね」
    「え?あ、うん」

    分かった。そう言ってタケミチは自分のポケットに納めたゴムボールを不思議そうに握るのだが、後にこのボールのおかげで、ドラケンや、バジなどあらゆる人間の危機を救いながら相手を倒すので、夏樹から貰ったものは大事にしよう、なんでのがタケミチの教訓になったりもするのだが、まぁまだそんな教訓も今のタケミチにはないので、あとで捨てるか返すかどっちがだな、とタケミチは思ったのだった。

    ☆☆☆

    「は?なつがこの界隈で最強?…あいつ愉快犯ですよ?何かの間違いじゃないんですか?」

    そう眉間にしわを寄せながら言うタケミチに、全員が首を傾げた。武蔵祭りの数日前、そう言った武道の顔を、ここに居る全員が何故か思い出す。眉間にしわを寄せて、心底呆れたような、誰とも関わらせたくないようなそんな顔。他の溝中の奴らもそうだった。そんなに嫌いなのかなと思ったけれど、違う。人を人と思わない動物的思考が強いその猟奇的な姿を見せたくないだけなのだ。

    そんな九条の存在を、花垣武道はよく躾のなっていない犬とよく言っていた。
    何でもかんでも首を突っ込んで、後始末をしないから、武道はいつか逆上されるんじゃないか、と心配もしていた。今もそうだ。東卍の抗争に手を出して、ピットブルなんて変なあだ名を口にされて、自分たちの知っているあの陽気な存在すら無くして、楽しげに場を走り回るその姿に、嫌悪はないが呆れを持ってしまった。けれど、助けたいと思っている人間が、自分の視界の奥で殺されそうになっているのを見て、武道は迷いなく九条から受け取ったゴムボールを相手に投げつけてしまった。

    「なつ!!!」

    ―――取ってこい!!!
    そう言ってキヨマサの方へとゴムボールを投げたタケミチの言葉通り、九条はその言葉を聞いた瞬間、緩やかに口角を上げた。

    「わんっ」

    その声が雨の中響く。目の前の男どもを蹴り飛ばし、着地した瞬間、一気に身体を翻し、駆け出した。その姿を見た全員が目を大きく見開く。軽やかすぎるのだ。着地から翻したその身体の滑らかさに、全員が震えた。わん、と鳴いたその言葉が鼓膜を揺らしたキヨマサの顔面を、あの時と同じように上段蹴りで飛ばしたその衝撃の強さはその軽やかな移動とは裏腹に、重たく、吹っ飛ばされる程の衝撃。目の前で蹴り飛ばした九条の猟奇的なその顔は、龍宮寺の心を鷲掴んだ。

    「あれが猟犬、九条夏樹…」

    ボソリと声を上げた三途の声に、全員がその声の主へと振り返る。

    「あいつが!?」
    「え、まってまって!?猟犬って何!?」
    「ぁあ!?てめぇそんなこともしらねぇであの犬飼ってたのかよ!?」
    「なんで俺怒られてんの!?」

    なつは俺の友達なんですけど!?と訳が分からないといった顔でそう言った武道の背後からするりと腕をまわし、夏樹は緩やかに笑ってタケが俺の価値を知らないからとかなんかだからじゃねぇの?と声を出した。

    「お前の価値って何…」
    「天下統一できる手腕があるぐらいかな」
    「興味ない」
    「知ってる~!」

    じゃなかったら一緒にいないし。
    そう言って笑った顔を見せる九条に、マイキーたちは息を飲んだ。ピットブル。正式名称はアメリカン・ピットブル・テリア。人間を殺害できるほどの強さを持つ闘犬種。輸入を禁止された犬種であり、一時期アイリッシュ・スタッフォードシャー・ブル・テリアと言う名前で闇取引されていた犬である。気性の荒さは世界一とでも言えようか。その全てにおいて九条は懐いたら天下を取れるが、九条の忠誠を無くせば人の手に負えない特異性を醸し出し、チームを内部から潰されるという本来なら粛清対象である裏切りすら許されている。
    猟犬と同一に見られているのは、狩る、という事において、九条は天才だといえるからだ。ドールやリカオンのように野生動物に彼を置き換えてはならない。なぜなら彼は根っからの飼い犬だから。人の温もりが欲しくて欲しくてたまらなかった。ひとりぼっちで生きたくなかった。わずか小学6年の時、頂きに立ってしまったその瞬間、その頂点にたって直ぐに九条はこの不良界隈から姿を消した。興味をなくしたと言ってもいい。その最たる理由が、寂しかったのだ。ひとりぼっちで生きたくなかった。手に入れることが出来ると思っていた何もかもが、手に入らないと知ったからこそ、彼は大人しくなった。たくさんの人間が九条を探していたけれど、彼は名乗り出なかった。中学に上がって、花垣武道という男に出会うまで、九条はずっと、“飼い主”を探していたのだ。

    「俺はタケの“飼い犬”だからね。君らには正直魅力を感じないんだよねぇ〜」
    「その飼い犬に俺は今、手を噛まれてんだけど…」
    「わんっ♡」

    ンふふ、と小さく笑った九条を横目に、武道ははぁ、とため息を吐いた。あとであっくんにチクろうかな、と呟いたその言葉を聞いて九条はダメだからね?やめて???と年相応に泣きそうな顔で拒否を示した。

    「あっくん怒ると怖いんだって!」
    「だからなんだけどなー」
    「鬼か!?」

    ちゃんと助けたじゃん!と声を出した九条だけれど、黙っていたのが悪いって言われてしょんぼりとした。

    「だって言ったら離れるじゃん」
    「そんなんで友達やめるれるなら最初から関わってないよ」

    馬鹿かよ、なんて言った武道に、九条はキョトン、と目を瞬かせた。

    「なんで?」
    「なにが?」
    「質問を質問で返すなwww」

    やべぇwwなんてゲラゲラ笑う九条に、武道は再度首を傾げた。九条からしてみれば、自分という存在を知られてしまえばこの関係は終わりだと思っていたからだ。

    「おいおい、おめぇら何してんだよ」
    「んぁ?そう言えばまだ抗争中だったわ」

    忘れてた、と悪気なく答える九条に、半間はゆっくりと口角を上げ、勿体ねぇなぁ、と声を上げた。

    「なぁ、九条夏樹」
    「ん?」
    「俺たちんとこ来いよ。おめぇにそんな生ぬるい飼い主は合わねぇだろ」
    「悪いけど、俺曇り空より晴天が好きなんで」

    鞍替えする気もないし、お断りかな。そう言って、コツコツ、と彼らの前に出て長ったらしいふわふわの髪に空気を孕ませながら持ち上げてポニテにする。

    「グダらせた詫びだ」

    秒で終わらせてやるよ。くっ、と口角を上げて鋭い犬歯を見せつけながらそう告げた九条のその言葉を聞いて愛美愛主の人間は一斉に駆け出した。

    「なつ!」
    「んー?」
    「怪我、すんなよ」
    「…!、んははっ!!」

    言うてそれかぁ、と笑い、結った髪を指先で滑らせながら、九条はわんっ、と鳴いた。懐かしい、言葉だと思った。昔、小学生の頃、初めてチームに入って初めての喧嘩の時に言われた言葉だ。髪を伸ばし始めたのも、飼い主を欲しがったのも、全部、全部。あの日からだ。

    「あの飼い主は元気にしてるかなぁ」

    とうの昔に離別した、豹と血の壁と軍神を従えた、あの男。喧嘩は弱いくせに義理堅い、あの後ろ姿が大好きだった。そんな彼と似たような男を飼い主に選ぶことになるとは思ってもみなかった。ただ、まぁ、あの男は長髪好きで、タケは短髪好きという相違点があるぐらいだけれど。

    「あとであっくんに散髪してもらお!」

    トトンっ、と軽やかにステップを踏んで遊びまわるその姿を、誰もが見続けていたいたいと思った。けれど、そんな思考が起きる人間がいるという事は、別の思考を持つ人間も現れるということで。

    「夏樹!!!!」

    切羽詰まった声だな、と場違いにも思いながら、バジが叫んだその声に振り返ろうとしたその動きを、長ったらしい髪の毛を掴まれ阻害される。そう言えば髪の毛が長いと面倒なことになるって白豹も言っていたっけ、と思いながら、ポケットから折り畳み式のサバイバルナイフをとりだし、その掴まれた毛束へナイフの腹を当て、何の惜しげも感じる事無く切り裂いた。

    「は…」

    その行為がどんなに突飛な行動だろうと、そのせいで九条夏樹の象徴を失う事だろうと、タケミチや九条たち溝中にとってすれば、サマーカットじゃん、なんて言葉が浮かぶだけ。落差がひどすぎる。

    そんな九条でも、少しだけ髪を切るのをためらっていたのには理由がある。いつ武道達が自分の正体に気づいて逃げてしまってもいいように、少しだけ、切るのをためらっていた。けれど、もういいのだ。花垣武道は九条夏樹という存在を裏切らないと、わかったから。指通りの良い銀の癖っ毛が、相手の指をすり抜けて落ちていく。短くなった髪から結った時に使ったヘアゴムがゆっくりと銀を撫で付けながら地面に落ちた。





    九条夏樹(♂)
    この度ビジュアルが公開されていながら、サマーカットを成し遂げた男。
    わんわん鳴くので武道からたまにおやつカルパスを投げ渡される時もある。この後バジくんから泣きながらリンゴ飴を買われる。

    東卍サン
    実はとある総長のオニーサンと知り合いだったのだが誰もその過去は知らない。
    知ったらオニーサン詰め寄られるし、なんで首輪外しちゃったんだよ!って怒られる

    半間修二(♂)
    サマーカットしたワンちゃん解釈違いです。泣いた。
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