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    nmhm_genboku

    @nmhm_genboku

    ほぼほぼ現実逃避を出す場所

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    nmhm_genboku

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    わんわん!

    ##わんころ

    わんころ属性がゆく!「ペヤング…?」

    なにそれ。首を傾げながら思わず尋ねれば、バジはあり得ないものを見るような目で九条を見た。

    「は…はぁ!?お前ペヤング知らねぇの!?」
    「まずインスタント系食べたことない」

    そう言った九条の顔を見て、バジは三ツ谷と母ちゃんの顔を思い出した。

    世界にはインスタントの飯も食えねぇやつが居るんだから好き嫌いすんじゃねぇ!

    そう言っていつも野菜を食わせようとする二人の言葉通り、こいつ、もしや飯すらまともに食えねぇ環境に!?そう思ったバジの顔を見て、九条はストップ、と声を上げた。

    「言っておきますけれど、インスタントの濃い味付けが苦手なだけでそれなりの飯は食べますよ」
    「ンだよ。驚かすンじゃねぇよ」
    「さっせん」

    ケド普通はそこまで飛躍した思考は出てこないんだよなぁ。ぼんやりとそう考えながら、九条はゴムボールを弄る。
    夏祭りのあの日、タケミチから“取ってこい”と言われたやつだ。渡そうとしたら泣きながら拒否されたので現在夏樹の下に戻ってきている。

    「そう言えばバジさん何しに今日はここ(溝中)に?」
    「あ、そうだった。お前迎えに来たんだわ」

    なんでや!?思わずそう叫んだ九条の首根っこを掴み、連れ出す。屋上でサボっていた九条を先に見つけたのは、紛れもなくバジで、普段見つからないのに何故か彼にはあっさりと見つかってしまったことにショックを隠しきれないまま、九条はサラッと連れ出されてしまった。

    「後でペヤング半分やっから。ほら、マイキーが呼んでんだから行くぞ」
    「そんなんで釣れると思ったら大間違いだからな!!ありがとうございます!半分こ楽しみ!!」
    「どっちだよ」

    全く。そう呆れたような声を出し、短く整えられた九条の銀の髪を撫で付ける。首元から掴んだせいで、うひひ、と変な笑い声を出した九条に、今度は盛大に頭を撫でて、ほら、行ってこい、と背中を押した。

    「……バジくん使うのは卑怯だと思うんですよねぇ」
    「だってお前全然捕まんねぇんだもん」

    タケミっちに聞いてもわかんねぇって言われるしさ〜、と呆れたように声を上げるマイキーに、九条はそりゃ、そうですよ、と声を投げ返した。

    「俺もタケも穏便に生きてぇンすよ?東卍と関わりを持った、なんて知られてから喧嘩売られる回数はでかくなるし、お互い一緒にいたら一緒にいたで俺目当ての雑魚はやってくるわで現時点タケ達と接触禁止でてるんですぅー」

    俺だって面倒事にならないなら一緒にいますぅ、となんとも拗ねたように言う九条に、マイキーは笑いながら機嫌直してよ、と言葉を吐いた。

    「機嫌…機嫌、ねぇ…?犬っころにそんな言葉、通じると思ってんの?」

    緩やかに細められた目から殺意が溢れる。邪魔だと思った。穏やかな日を生きるために、彼らは邪魔だと、そう思った。

    稀咲が裏で手を引いている。だから九条は彼らにバレないように喧嘩となる根源を潰していた。けれど結局彼らは引き合って、出会って、こんなにも面倒な立場に居座っている。どちらかをその場から遠ざけない限り、この物語の負の連鎖は止まらない。

    「(いや、負の連鎖の中で1番の問題点であった羽宮、場地の“芭流覇羅行き”は回避出来ている。あとは)……なんすか?」
    「なっちはさー、俺らの事守ってくれたじゃん?だから俺らもお礼言わねぇとなって、思ってさ」
    「あぁ、本来の目的はそれだったんですね?それならそうと言ってくれてもいいのに」

    そしたらこんな面倒な逃げ方しませんよ。そう言ってため息を着いて、ゆるりと目を細め、口角を上げた九条に、勝手に機嫌直ってやんの、なんてマイキーは思った。

    「なっちバジのこと好き?」
    「今の飼い主はタケですけれど、捨てられたら拾ってくれって言いたくなるほどには好きですよ」
    「ふぅん?俺は?」
    「やだ」

    構い倒されてストレス感じそう。キリッ、と真面目な顔してそう答えた九条に、ドラケン達はあぁ、と納得の顔で頷いた。否定できない。

    「確かにマイキー気に入ったやつは構いすぎてハゲさせるよな」
    「ペケJも一時期ハゲましたし…」
    「お前ら俺の擁護は!?」

    するわけねぇだろ。
    そう言って話し終わったか?と夏樹の頭を撫で付けながら聞くバジに、まだ終わってねぇ!と答えるマイキー。その様子を見ながら、夏樹はぼんやりと平和だな、と思う反面、ふっ、とある問題に直面する。

    「そう言えばアンタら夏休みの宿題は?」

    こて、と首を傾げて尋ねた九条に、マイキー含めた一定数の人間がそっ、と夏樹の視線から逸れるように顔を背けた。

    「……宿題終わってねぇならペヤング半分こはお預けっすね。帰ろ」
    「なっ!?バジさんとペヤング半分こするのは俺だ!」
    「はぁん!?バジくんとペヤング半分こするのは俺ですぅ!さっきここに連れてきてくれるまでに約束しましたァ!!」
    「まぁ、夏樹ペヤング食った事ねぇって言ってたし」

    わりぃ、千冬。また今度な!とニッカリ笑ってそういったバジの言葉を拾って千冬は思わず九条を見た。

    「は?食ったことねぇの!?うめぇのに!?」
    「自分で作った方が美味くね?」
    「元も子もねぇこと言ってんじゃねぇよ!」
    「なぁんで俺怒られてんの〜!!?」

    意味わかんない!そう言ってゴムボールを千冬に投げつければ、額にちょうどヒットしてしまったので2人で仲良く喧嘩し始めた。ネコ対イヌの喧嘩である。

    「落ち着け落ち着け」
    「わんわん!!」
    「シャーッ!!」
    「せめて人語を話せ……」

    バジさんと一虎くんに止められた際にそう言われて2人してふいっ、と顔を背ければ、俺は仲良くして欲しいんだけどなー、とバジさんに言われて松野くんは渋々俺へと握手を求めた。それを叩き落としてまた喧嘩が始まったけれど、俺はそんな人に言われて仲良くする君が好きになれません!!

    「なっちゃんさー」
    「んー?」
    「東卍に入ってくんねぇの?」

    あれからバジさんと2人で仲良くコンビニまで行き、ペヤングをひとつ買って、コンビニでお湯を入れ、近くの公園でそれを半分こしていれば、ジッ、とこちらを見つめながら尋ねるその瞳を見つめ返し、彼から貰ったペヤングをひと口食べてお行儀よくもぐもぐと咀嚼する。

    「ん、ぐ……逆にお友達のままでも良くないっすか?」

    俺が東卍に入っても多分浮くだけですし。そう言ってペヤングのカップを彼に返して、ゴチでした、と声をあげる。味が濃いな、と口端に着いたソースをペロリと舐めていれば、浮く?と聞き返されたので、こくりと頷いた。

    「俺、1度てっぺん取って捨てた人間なんでこんな思考になりますけど、あんまいい景色でもなかったんで。なんていうか、熱量?バジさん達が求めるようなもんが俺には無いんですよねー。力は貸せますけど、それは東卍に居なくても、お友達として貸すことも出来るじゃないっすか。この間みたいに。だから個人的には現状維持っていうのが1番かな、と」

    それに俺、飼い主が居るんで。そう言ってポケットからゴムボールを取り出して手のひらで握り潰す。

    「東卍サンは確かに個性豊かで面白そうだなーって思いますけど、それぐらいですね。俺はやっぱりタケの傍にいた方が楽しいし、馬鹿やっていたいし、タケとなら天下とってもいいなって思うけど、マイキーくんと一緒に天下取りたいなーっていうのはないんですよね。バジさんはお友達で居たいなって言うのはありますけれど、一緒に喧嘩したいなって言うのは湧かないし…」

    なので東卍には入れません。そう言ってすんません、とあっさり断った九条に、バジはふぅん?と声を上げた。

    「ま、また誘うから今の答えなんて聞いてねぇんだけどな」
    「ねぇ、断った意味!!」

    諦め悪いと後から絶対後悔しますからね!?そう言ってゴムボールをバジに投げ渡し、九条はまた遊んでくださいね、と声をだす。

    「それ、預けておくんで」
    「ン。使う場面ねぇと思うけどな」
    「さぁ?もしかしたら案外あっさりと使うかもしれませんよ?」

    だって君はこのままいけば死ぬ運命にあるのだから。最後の言葉は言わないにしても、九条の確信めいたその言葉に、バジは首を傾げるだけだった。




    九条夏樹(♂)
    この度バジくんとペヤング半分こした犬っころ。バジくんとはお友達だと思っている

    ゴムボール(青)
    少し古びたゴムボール。
    前回ドラケンくんを助けるために活躍したのに千冬の額にぶち当てられるわバジくんに渡されるわで波乱万丈。

    場地圭介(♂)
    とりあえずお友達から初めて東卍に引き寄せようと模索する中学2年(留年)
    渡されたゴムボールを見ながらこれ、いつ使うべきなのか現在わかっていない。





    犬というのは何とも従順である。恩義は忘れないし、飼い主のことは一生裏切らない。忠義に偽りはないし、絶対的な忠誠心がある。

    「ピットブル」
    「んぁ?」

    コツン。質のいい靴の音が、夕暮れの海岸沿いで響いた。

    少しだけ、とある犬の話をしよう。

    九条夏樹という人間は、花垣武道が忘れているだけで、実際死んでいる。道路に飛び出した子どもを助けて、車にはねられ、あっという間に死んでしまった。武道が中学二年の10月だった。
    花垣武道が覚えていない。それは当たり前の事柄だった。だって、本当は九条夏樹は花垣武道と決別するはずだったから。奴隷のような毎日を、九条と交換することで終わるなら。仲間を売りたくはなかったけれど、あの地獄のような毎日から逃げたかった彼らは、九条を置いて逃げてしまった。それが、最初のタケミチ達の話だ。飼い主に逃げられた。しかも自分の通り名が原因で。それが、九条の最初の世界だった。
    死んでから12年前に戻った九条は、その瞬間、前世もついでに思い出した。

    そうして再度タケミチたちと仲良くなる中、九条は不良という立場から一線を引いていた。自分の通り名が、自分の存在が、彼らの裏切りを余儀なくしたのであれば、名乗らずに生きようと、そう思った。だから小学生の時、頂点に立った時、彼はその座から逃げ出したのだ。もう不良の世界で生きる意味が、無くなってしまったから。けれど未来は変わった。いや、変えたと言っても過言ではない。

    最初の時居なかった佐野真一郎。彼を生かした時から、この世界の歯車は変わるために巡っていた。

    数少ない出会いを無駄にしたくなかった。彼がいただきの頂点に達する前に、俺が、座れば。

    そうして、九条夏樹は世界に君臨した。

    一時的に佐野真一郎の仲間となり、戦い方を知った。この世界の不良の情勢を知りながら、関東以外の不良を血に沈め、彼らの最大の障壁として、柔らかな瞳を見せながら、笑って見せた。

    「な、つき?」
    「ごめんね、佐野真一郎くん。今まで隠していたけれど、俺を倒さないと日本一にはなれないよ」

    そう笑って言ったたった1人の人間に、黒龍は敗れた。関東に集った強者を、天高く舞う黒き龍を、たった1人で倒してしまったのだ。強さは、時として残酷な武器になる。

    仲間と思っていた人間が、敵だったなんて、誰が知りえようか。銀の長髪に、変幻自在の動き。蹴りも、拳も、喧嘩に対する何もかもが、彼らより1歩、抜きん出た突出した才能。

    「……強いとさ、いずれ孤独になる。チームの名がでかくなればデカくなるほど、そこには善が生まれ、悪が生まれる。佐野真一郎。俺は君と出会えて良かったよ。でも、俺に弱い君達は、要らない」

    そう言って頂きにたった1人で座った彼は、あっという間に姿を消した。彼らの前から、世界から。そうしてわずか2年の歳月を過ぎた頃、再度彼は動く。頂きに座り、飽いた、と声を出し、その座を惜しげも無く離れたその存在が、再び動いたのだ。

    彼を倒そうと躍起になっていた自分たちを捨てて、柔らかに笑いながら、佐野真一郎を彷彿とさせる男の傍にいる。それがどういう意味をもたらすのか、なんて彼は知らない。けれど、元黒龍の面々は思うのだ。待っていたのだ、と。自分たちの総長は、彼を見つけるための単なる仮宿だったのだ、と。

    彼の姿を確認した際、彼らは九条夏樹に、言ったのだ。幾度も、幾度も。
    帰ってこい
    不良の世界に、帰ってこい、と。それを、彼は嫌だと言って突き返した。

    「俺が手にした席は、君らに譲ったでしょ?」
    「倒してねぇ相手が引退して、おこぼれのように手に入れた席なんて、誰が納得するかよ!!」
    「知らないよ、そんなの。と、いうより俺の一番のびっくりは佐野真一郎くんが不良やめてねぇことなんだけど」
    「だって、まだ日本一になってねぇもん」
    「はぁん!?」

    お前を倒してねぇのに、日本一になりました、なんて言えるわけねぇだろ。そう呆れたように言った彼の言葉が、この世界の全てだった。

    そうして今。彼はまたあの時一緒に走った元飼い主達に帰ってこいと言われるのだ。しかも自分たちの弟達と一緒に。

    「やだやだやだやだ!!!俺もうそっちに帰んないって言った!なんなのさ!のんびり隠居生活してもいいじゃん!」
    「隠居……?」
    「お前にそんな権利あんの?」
    「君らほんとに大人!?」

    そこら辺のガキよりワガママ過ぎない!?ありえないんだけど!?そう叫ぶ九条が、真一郎にゴムボールを投げつける。
    元は白色の、今は少しだけ日焼けしたゴムボールだった。それを見て、真一郎は握りしめながら、お前はさ、と声を上げる。

    「俺が唯一倒せなかったやつだ」
    「それが?」
    「俺は、お前にまだ日本一を見せてない」
    「は……」

    見開かれる。
    美しい、蒼を滲ませた黒々とした瞳が、男を捉える。投げ返される白いボール。自分が、九条夏樹本人が守りたいと思った人間の近くに必ず居る男へと渡されるそれを、佐野真一郎は投げ返し、すっ、と手を伸ばした。

    「帰ってこい。九条夏樹」

    俺たちの、黒龍のところへ。

    あの後、返事は決まったら教えてくれ、そう言って立ち去って行った彼らと、そこに残されたマイキー達。ずっと、傍にいたかった。けれど、それをすれば、タケミチは助けることが出来ないと、そう分かっていた。だから、九条は彼らの元を離れる決心をした。自分の呼び名の総称である犬に有るまじき裏切りを、彼らに課した。

    「なっち」
    「……俺の、名前は、九条夏樹。なっちゃんって…呼んで」
    「なっち、行かないで。なっちはタケミっちの傍にいて、笑っててよ」

    そっと抱き寄せた際に感じる暖かなその体温に、ふるり、と震えて目を伏せる。
    生きたい。彼のそばで、本当は、生きていたかった。楽しく笑って、過ごしていたかった。でも、それをしなかったのは俺だ。彼が、不良を辞めなければ。そう思って自ら頂点へと登って、まだ敵はいるのだと、彼に知らしめたかったのだ。それが、例え苦しい結果になろうとも、良かったのだ。

    「……ん?いや、そもなんで真一郎くん俺のことあんなに探してたん?」
    「……えっ、しらない」
    「えっ!?」
    「ん?」

    知ってて来たんじゃないの!?
    思わずそう尋ねた九条に、マイキー達は知るわけねぇじゃん、と答えるしか無かった。

    「なんか兄貴が面白いの見せてやるって言ったから」
    「面白いモン見せるつもりならそれ相応の芸を身につけてから勧誘しろ〜!!!」

    ふざけんなよ!?思わず現実を見直してそう叫んだ九条は悪くないと思う。




    九条夏樹(♂)
    勧誘すんな!!
    思わずシリアスになろうとした空気をシリアルに変えてしまった犬っころ。
    転生者で逆行者という訳分からん立場なくせに精神年齢は14歳児。

    ゴムボール(白)
    なんで投げ返すんや!!!
    てめぇふざけんなよ!!!?

    佐野真一郎(♂)
    夏樹!夏樹!!俺と一緒に不良の世界で生きような〜!
    って心が極まりすぎてすげぇシリアスを産んだ。短髪姿を家に帰って思い出した自宅ベッドの上でヤムチャになった。
    「だげおみぃ〜!!なづぎの!!なつぎのがみがぁぁぁあ!!!」

    東卍
    俺たちは一体何を見せられてるんだ状態。なっちゃんが日本一のお犬様なのは周知の事実。


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