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    Jeff

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    Jeff

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    hyunとまもの語とlar

    #ラーヒュン
    rahun

    Etranger がきゅ。
     朽木を折るような異音に、ラーハルトはびくりと覚醒する。
     目の前には、薄目を開けたヒュンケルの微笑。
     ぐぎ。
     ラーハルトはため息をついて、彼の寝言に耳を傾ける。
     
     疲労困憊でたどり着いた宿。
     二人して泥酔し、ベッドに倒れ込んだ夜だった。
     ヒュンケルが突如、奇妙な言葉で話し始めた。
     ……まもの語だ。
     モンスターたちだけが共有する、原始的ながら詩的な言語。
     ラーハルトは回らない頭で、聞き取りを試みる。
     くく。がぎゃ。
    「なんだって?」
     ぎゅ。
     ヒュンケルは幸せそうに笑って、ラーハルトの頬に触れた。
     ぐぐぐぎゃ。
    「?」
     ぐぐぐぎゃ。ががが。
     ラーハルトは必死に、以前学んだ文法を思い出す。
    『ねえ、君。素敵な模様だね』
     ヒュンケルはそう言っていた。
    『それに、すごくきれいな色をしてる』
    『まぞくなんでしょ』
     舌足らずな、幼い言葉。
     魔物に育てられた彼が、まだただの子供でいられた時の。
     人間に家族を殺され、感情を押し殺して復讐を誓う前の。
    『すごく強い。おれには分かる』
    『かっこいいな』
    『魔王さまみたいだ』
     少々心外だが、素直に褒められて悪い気はしない。
     ヒュンケルの思い出を盗み見ているようで、気が咎めなくはないが。
     と、機嫌よく聞き流していた時だった。
     ……ふ、しゅる。
     続く一言に、ラーハルトはがばりと身を起こした。
    「なんだって」
     
     ――おれ、同じ模様の人を知ってる。

    「お……おいヒュンケル、寝るな、おい」
     が、相棒はふにゃりと目を閉じてしまった。
     どんなに揺さぶっても、耳元で叫んでも、楽しそうな夢から帰って来ない。
     『あなたの痣が大好き。父さんそっくり』
     そう言って、母は笑っていた。
     『誇りなさい。一族の証なのだから』
     ――どういうことだ。どこで。なぜ。
     問いかけても、何も返って来なかった。
     安らかな寝息。
     ラーハルトは諦めて、眉間を押さえて再び倒れ込む。

     ――聞き間違いだ。きっとそうだ。
     
     もう、考える体力が残っていない。
     明日だ。明日あらためて問い詰めよう。
     そんな決心も、泥のような意識の沈んで消えゆく。
     翌朝覚えていられるか、賭けみたいなものだった。
     敗けたい賭けと言うのも、なかなか珍しいけれど。
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