結界師は遠距離攻撃型
近距離戦に持ち込めばこちらのもの─────!
敵が隙をついて良守の懐に入り
よし、もらった!!
と渾身の攻撃をかました瞬間
良守はニカッと笑い
見切ったうえで空間を僅かに歪め躱す
「!」
敵は何が起こったのか分からず
もう一度、良守に突っ込んでいく
しかし良守は、敵が真っ向からきた勢いを利用し体術で投げ飛ばす
「!?」
「結界師なめんな!」
結界と拳のコンボでボコボコにされて地面に伸される敵
「ふん!」
手を払い、やり切った表情の良守
「お前、結界師が近距離に弱いって思ってたんだろ!んなのジジイの時代で終わってんだよ、ばーか!」
「な!」
「こちとらクソ兄貴に何年も扱かれて、接近戦慣れしてんだよ!まあ妖には意味ねえから使うことねえけど…人間相手ならこんなもんだろ」
残念だったな、と生意気な顔される敵
「近距離優位、スピードで勝った気になってたみたいだけど、結界師の懐に入るのは愚策中の愚策ってアドバイスしとくぜ」
さらにアドバイスまでされてしまう敵
ぐぬぬぬ
「とくに!坊主の結界師相手にするなら、やめたほうがいい。容赦なく塵にされるぞ」
「くっ、うるせークソガキ!つーかお前、さっき空間を移動しただろ…っ!なんだあれ!」
「勝手に喋るな。骨が肺に刺さっちまうから」
「情け無用、答えろ!」
敵に睨まれて、良守はため息をつく
「さっきの質問、厳密に言うと違う。俺はまだ母さんほど上手に空間移動は出来ないし…くやしいけど兄貴みたいにセンスでカバーも出来ねえ」
敵は焦り出す
こいつだけでも厄介なのに
こいつを育てた兄や母、他にもいるかもしれない強者の気配を感じて悪寒が止まらなくなる
良守に殺意がないこと
手を抜いていることも理解したうえで
結界師を狙ったことを後悔する
「あんまりこういう事、言わねえ方がいいのかもしんねーけど。あんた弱いし、邪気もないから助言しとく」
「なめ、やがって…!」
拳を振りあげようとして、容赦なく結界で固定される。
「暴れないでくれ。腕が引きちぎれる」
怖…
「結界師はさ、結界を張るだけじゃない。自分の世界を作れるんだ」
不気味な縞柄のピエロと戯れだす少年に、臓物が震えるほど恐怖する。
殺意も淀みもないということは、なんの心も躊躇いなく命を摘み取ることができるんじゃないか?
今の彼は、まるで人間味を感じない。
理不尽に人々の運命を決める、神のようにすら…
「わかった?結界師を敵に回しちゃダメだってこと」
無想顔で見下される。
震えながら頷くとニッコリ微笑まれて
「よかった。あんたを殺さずに済んで…本当によかった」
そんな天使の無垢な笑みを見上げ
敵は、恐怖が一瞬で恋に変わってしまう。
脳みそのキャパシティを超えたのだ。
天元を突破した恐れは愛だと勘違いしてしまう。
そしてザコ敵は良守様に生涯の忠誠を誓い
影で見守っていた坊主に塵にされるのであった
めでたしめでたハァ?🤪
あとでお兄ちゃんに
「調子に乗りすぎ」
ってポカンと頭を殴られる良にゃん
「くそー!」
良守は優しいけど、たとえば家族の命を狙った相手に何処まで情けをかけるのだろうか
兄貴が絶界で敵を消しちゃったら怒るのかな
敵が死んだことより兄貴の手を汚させてしまったことを嘆きそうで怖い
兄貴が人を殺すくらいなら俺がやるとか言いかねん
それじゃ、ダメなんだよ良守
人を殺めるなら、自分のためにやるんだ
だからたとえば俺が殺されて「殺されない」、例えばの話「やだ」話聞けよ「あにきしぬな」可愛い…じゃなくて、俺が殺されたときだけ復讐してくれないか「は?」それ以外の人殺しはダメ「お前、なにぶっそうなこと言ってんだ」とつぜんの正気
そういうところだぞ、墨村良守