日向ぼっこ「南泉ー!」
「んぁ?どうしたんだ……にゃ」
「ジャージ貸してほしいな!」
縁側で胡座をかいて座っている南泉。声をかければ、ぴしりと動きが止まった。
――何かおかしなこと言ったっけ?
そう思いながら、南泉の前で手を振れば『何でだ……?』と呟いたのが聞こえる。そう思うだろうけれど、私にはやりたいことがあった。
「そのテロンテロンのジャージが着たくてね」
「は……?」
そう、私が着たいのは南泉が着ている光沢がかったジャージだ。いつも触り心地が良いのだろうかと気になっていたもの。ついに好奇心が勝ち、声をかけたわけだが、南泉は驚いた顔をするばかり。かと思えば手招きをされて、ふわりと感じた浮遊感。そのまま、気付けば南泉の胡座をかいた足の上に座っていた。
「え⁉え⁉何で…?」
「良いから、大人しくしとけ……にゃ」
「わっ!」
急に肩に触れたものが南泉のジャージだと知るのは、驚いて触った時。滑らかな触り心地に思わず目をやり、いつも見ていた光沢が光を受けてきらりと輝く。
「やっぱり、綺麗だね……」
「そうかぁ?」
「うん、そうだよ。だって……」
そこまで言いかけて、言葉を止める。いや、続けられなかったのだ。私の前に回された腕、そして背中と肩に感じる重み。ちらりと見れば、視界の端に映るのはふわふわとした金色の髪だ。『南泉が私を抱き締めている』その事実に、身体が緊張して強張る。
「おい、力入れるなよ……にゃ」
「だ、だって……」
「日向ぼっこしてんのに……」
欠伸の音が聞こえる。
――そうか、南泉は日向ぼっこをしてるだけなんだ。
そう思えば、緊張しているのもおかしくて自然と力が抜ける。だからまさか、肩口に真っ赤な顔を埋めているだなんて、気付く由もなかった。
そんな、お昼のお話。