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    しおん

    @GOMI_shion

    クソほどつまらない小説をメインに載せてます

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    しおん

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    『致命症』#05

    ##致命症

    癒えない傷「何故1人で勝手に行動したんです!!」
    暗いマンションの廊下で、心配した様子の男性の声が響く。その声に対し、全く反省していないような態度でもう1人の男性が答える。
    「別に悪くないだろう?それと、君に私を制限する権利は無いはずだよ?桐野江くん。」
    閉じていた瞼を薄く開き、深緑色の瞳を覗かせて心配する顔を睨みつける。
    「ですが…俺はただ雅楽様が心配で…!」
    「勝手な心配はしないでおくれ。まあ確かに、君があの場を見ていてくれなかったら私は死んでいただろうね。おチビまで呼んでくれて…君は本当に過保護だねぇ。」
    「誰がおチビだ!あの狼の代わりにボクが喰い殺してやるこの虫野郎!」
    突然殺意剥き出しの少年らしき声が2人の男性より少し離れた所から聞こえた。
    「レオン!お前、雅楽様に向かって虫野郎とはなんだ!」
    「うっせー猫カスクソ信者!まずボクが仕方なく助けてやったのに何お前が助けた気になってんだ!」
    「はぁ…桐野江くんもおチビも子供のような喧嘩はよしてくれないか。耳障りだよ。」
    「はぁ?元はと言えば自分の手で人間も殺せないくせに1人で戦おうとした貴様が…!」
    「レオン、もうやめて帰るわよ。雅楽ちゃん♡アナタは怪我が治るまでは安静にしてちょうだい、完治した完璧なアナタの方がアタシは好きよ♡」
    今まで黙っていた女性のような口調の男性がそう言うと、少年は拗ねたようにボソボソと何か呟きながらどこかへ帰って行った。
    「…雅楽様、それで今日はどうしてまたあの学校へ?もうあそこには用は無いと美晴さんから聞いたのですが…。」
    「ああ、偶然近くを通ったら懐かしい顔を見つけてしまってね。ついちょっかい出したくなったのさ。ふふ…あの私を見た時の悔しそうな顔は最高に面白かった…。さ、私達も早く帰るよ。」
    そう言うと美しい蝶を何匹かひらひらと辺りに纏う。それに見惚れるかのように心配していた様子の男性、桐野江 絢斗(キリノエ アヤト)は雅楽について行くように帰って行った。

    …………………

    ーコンコンッ

    深夜だと言うのに、春馬の部屋の扉がノックされた。偶然起きていた為、扉を開けるとそこには眠れなかった様子の叶汰がいた。
    「どうしたの?」
    春馬が優しく小声で問うが、叶汰は黙ったまま俯いていた。
    「取り敢えず入っておいで。」
    「…うん。」
    どこか落ち込んでいる様子の叶汰を座らせ、話し始めるのを待つ。ずっと下を向いたまま何も言わないし顔も見えない。きっとあの男、松雪雅楽との過去での出来事を思い出して落ち込んでいるのだろうと春馬は察した。
    「良いんだよ?俺は悪い気しないから気が済むまで言いたいこと言って。まあ何も言いたくないならそれでいいけど。」
    春馬がそう言うと、叶汰は下を向いたままゆっくり口を開いた。
    「春馬にも…話したこと無かったよね、昼間会ったあの人の事…。」
    うん、と春馬が静かに頷くと叶汰は顔を上げて言葉を続ける。叶汰の目には、微かに涙が浮かんでいた。
    「あの人は…詳しくは知らないけど、なんかの宗教の尊師なんだ。それで…父さんはそれの信者だった…。毎週高額のお金をあの男に払い、遂には宗教の為とか言って仕事を辞めて、母さんの貯金にまで手を出して…それが尽きると母さんのせいにして……。」
    そこまで言うと、叶汰は泣き出してしまった。「叶汰…。」
    何て言ってあげれば良いのかわからず、言葉が詰まる。叶汰はただ、今まで忘れようと塞ぎ込んできた過去を涙と共に流すかのように泣き続ける。
    「何もしてあげれなくてごめんね。」
    春馬はそれくらいしか言えなかった。そんな謝罪に叶汰は首を横に振る。
    「…謝るな……。」
    しばらくして、泣き疲れたのか叶汰はウトウトし始めた。
    「もう寝よっか。」
    春馬がそう言っても、返事がない。座ったまま寝てしまったようだ。春馬は、寝ている叶汰を軽々と持ち上げ、ベッドに移動させて布団をかける。
    「…おやすみ。俺の布団だけど…。」
    春馬は床に寝転がって目を瞑った。叶汰にも誰にも言えなかった過去があるんだ。そう思いながら眠りについた。

    ーねぇ春馬…。

    いつもの女性の声が、今日ははっきりと聞こえる。そして今回は、鏡にうつっていた女性の姿が目の前にある。

    ー春馬…思い出してくれた?

    知らない、お前の事なんて。

    ーでも…。

    知らないってば。俺にとってお前は、俺の夢に出てくる知らない女の人、それ以外の何でも無い。

    ーそう…、今の私は“夢”でしか貴方と話すことが出来ないから、ここに居る。

    突然何言ってるの?

    ーもう一度、貴方に謝らせて欲しい。

    やめて。

    ーごめんなさい。

    やめろってば…!!

    ーこんな事で許されるとは思ってないわ。

    じゃあなに?他に何かして今更許されようと思ってるの?

    ー違う…!

    は?なにが違うんだよ、許されたいから何回も謝ってくるんだろ?

    ー違う…!!

    だからなにが違うんだって聞いてるんだよ!鬱陶しいな!言わなきゃ分かんないだろ!

    ー私はただ…もう一度貴方と話したかっただけ…。

    俺は話したくなかった。思い出したくもなかったよ。

    ーそうよね…。

    守ってくれるかもしれないって希望を見せるだけ見せてきて、なにもしてくれなかったくせに、ほぼ毎日夢に出てきて嫌なこと思い出させてくんなよ。

    ーもうこれからはしないって約束するわ。

    じゃあ今すぐどっか行ってよ、“姉さん”。

    ー…わかった。嫌われようと、これからも愛してる、私の大切な弟…。

    なにが“大切な弟”だ…。

    あのいつもの女性…姉さんがどこかへ去ると、真っ白な空間は消え、真っ暗になった。

    午前5時半過ぎ、目が覚めた。昨晩は夜中まで起きていたので自分じゃ起きれないと思っていたが何故か起きることが出来た。床で寝たせいで体が痛い。ベッドの上を見ると、まだ叶汰は眠っていた。昨日の事を院長さんに報告する為に、記録帳に書こう。
    「えーーっと…昨日の何時だったっけ…。」
    取り敢えず、覚えていることだけを書き留める。松雪雅楽と名乗る男が突然攻撃を仕掛けてきたこと、病気なのかはわからないが口から虫を吐き出していた事等、思いつく限りの事をまとめた。
    (もう叶汰起こした方がいいのかな…。)
    そう思い、叶汰の眠るベッドに近付く。
    「叶汰〜……?」
    起こす気あるのか?ってくらい小声で叶汰を起こそうとする。もちろん叶汰は起きない。
    「か、叶汰〜!朝だよ〜!」
    声量をあげ、体を少し揺らしてみると、叶汰はゆっくり目を開けた。
    「…春馬……昨日はごめん。」
    「ははは!大丈夫だって、たまにはああいうのも大事だよ!」
    春馬は明るくニコッと笑う。昨晩泣きすぎたせいでまだ少し腫れている目を擦りながら立ち上がる。
    「うん、ありがとう。自分の部屋戻るわ。」
    そう言いながら微笑んで、春馬の部屋を出ていった。叶汰を見送り、部屋に1人になった春馬は2度寝してしまわないように、着替えて先日のように顔を洗いに洗面所へ向かった。

    洗面所につき、鏡を見る。昨日のように姉さんの姿が現れることは無い。落ち着いて顔を洗い、歯を磨き始める。今日はなんだが落ち着かない。きっとあの夢のせいだろう。そんな事を考えていると、春馬を探していた様子のリムが扉の向こうからひょこっと顔を出した。
    「あ、春馬君おはよう。ムーアから話は聞いたよ〜。」
    「んぁ、おはようございます。一応記録帳にまとめはしたんすけどいります?」
    「おぉ!勿論いるいる!後で書いたページ開いて僕の部屋の机に置いといてくれるかい?」
    「あーい。」
    適当に返事をして歯磨きを終え、そのまま一緒に食堂へ向かおうと誘いに叶汰の部屋へ向かった。

    「叶汰〜いる〜?」
    叶汰の部屋の扉の前で返事を待つが、何もかえってこない。
    「叶汰ァ〜?」
    先に行ったのだろうか?そう思い扉を開けると、
    「………え?」
    「あ。」
    またムーアの部屋と間違えてしまった。
    「ちょっと!2回目ですよ!叶汰さんの部屋は向かい側です!!って…」
    突然慌てた様子でムーアは首元を両手で隠した。そういえばいつも付けているマフラーをしていない。
    「…見ました?」
    「え…?見てないです…。」
    本当は見ました首から下は不自然なくらい人間らしかったのを。
    「な、なら良いんです。叶汰さんに用があるんでしょう?早く行ってきたらどうです。」
    「そうだった、また間違えたらごめん。」
    「次やったら未知の薬ができた時実験体になってもらいます。」
    ムーアはそう言って春馬を睨みながら、扉を開けられたついでに廊下に出て食堂へ向かった。気を取り直して叶汰の部屋の扉をノックする。

    ーコンコン。

    「はい。」
    「俺!準備終わった!もう行ける!」
    そう言うと部屋の扉が開き、準備が終わった様子の叶汰が出てきた。まだ申し訳なさそうな顔をしている。春馬はそんな事も気にせず、叶汰に対して明るくにっこり笑いかける。
    「行こーぜ!」
    「うん……!」
    そして2人はいつも通り食堂へ向かった。

    食堂に到着すると、何故か食堂の扉の前にりこが1人で立っていた。
    「りこさんおはよ!なにしてるんすか?」
    春馬が元気に挨拶をする。
    「あらぁ〜〜、おはよう〜春馬くん〜叶汰くん〜ちょっとねぇ〜聞いて欲しいね〜お話があるんだよぉ〜。」
    そう言ってりこは無理やり春馬と叶汰の腕を掴み、食堂内に入っていった。
    「あの〜…りこさん…?話って…。」
    叶汰が困惑した様子でりこに問う。
    「ま〜だっ、お話しないよ〜、まだまだ待つんだよ〜。ふ〜んふんふん〜♪」
    ご機嫌な様子でりこはスキップしながら食堂の出入口から1番遠くの席まで2人を案内した。
    「さぁ〜おすわりだよ〜♪」
    「えっと、何かありました?」
    叶汰がもう一度話を伺うと、りこがにんまり笑った。
    「今日のりこちゃん、起きてるのすごいと思わない〜?」
    確かにいつも、朝は拓海におぶられたまま寝ている。
    「ほんとだ!いつも拓海先輩に起こされてるのに…って、そういえば拓海先輩は?」
    「たくくんはね〜昨日したお怪我の毒がね〜まだ全部抜ききれてなくてね〜少し悪化しちゃってね〜医務室でおねんねしてるの〜、だからね〜りこちゃんね〜朝起こしてくれる人が欲しいの〜。」
    起こして欲しいなぁ〜という期待に満ちた視線を春馬と叶汰に向ける。
    「わ、分かりました。僕が起こしに行くので後で部屋教えてください…。」
    「やったぁ〜♪叶汰くん優しいねぇ〜よしよし〜♪」
    「な、撫でないでくださいっ…。」
    叶汰は顔を真っ赤にしてりこの手を退ける。
    「ッぷwww」
    「コラ春馬ァ!何笑ってんだ!」
    「こら〜春馬ぁ〜♪」
    春馬と叶汰が仲良くしている所を、りこは嬉しそうにニヤニヤと見て、何か思い出したかのように口を開く。
    「そ〜だ〜!りこが毎朝飲んでるあまぁ〜いものをおふたりにも飲ませてやろう〜!」
    そう言うと席を立ち、スキップで何かを取りに行った。
    しばらくしてりこは泡立った牛乳のようなものを人数分持ってきた。
    「はぁ〜い、りこちゃん特製“いっぱい甘い飲み物”だよ〜♪」
    ぱっと見何の変哲もないし変わった匂い等も特にない。叶汰と春馬は同時にそれ口に含んだ。
    「「あっっっっっっっっっま!?!?!?」」
    「おいしいでしょ〜?」
    一口しか飲んでいないのに、これ以上口に入れたくないくらいくどい。甘い物が好きな人でも飲みきれなそうな甘さだ。
    「ゲホッ…な、何を入れたら…こんな甘くなるんですか…。」
    叶汰があまりの甘さにむせながら、りこに作り方を聞く。
    「えっとね〜、まず牛乳をね〜温かくしてね〜お砂糖をい〜〜〜っぱい入れるんだよ〜〜、その後にね〜あまぁ〜いバニラアイスを入れて〜温かい牛乳で溶かすの〜そうするとね〜牛乳も熱くないしね〜表面にあわあわがいっぱい出来てね〜見た目がもこもこふわふわぁ〜ってして可愛くなるの〜。」
    「これを毎朝飲んでるからりこさんはふわふわなんだ…。」
    「何言ってんだ春馬…。」
    せっかく作ってくれたので残すのも勿体ないと思った2人は、時間をかけて“いっぱい甘い飲み物”を飲み干した。…もう一生飲まないと心に誓った。

    朝食(ほぼ飲み物)をとり終えた叶汰と春馬は、リムに頼まれた記録帳を届けにリムの部屋を探していると、いつの間にか施設内で迷子になっていた。今いる場所が何階なのかすらわからない。それにいつもと同じ施設内なのに、今いる場所は雰囲気が違い、少し不気味だ。薄暗く、電灯が所々付いていなかったり点滅していたり。進んでいるとたまに見かける部屋の中は全て実験室のようだった。
    「春馬、絶対この階じゃないって。一旦部屋戻ってそこからマップ見て来ようよ…。」
    「まあそうした方が良いんだろうけどさ、なんか雰囲気楽しいじゃん!?」
    お化け屋敷気分ー!!と春馬はいつも通りはしゃいでいる。そのまま楽しそうに進んでいると、突然聞きなれた声が耳元で囁いてきた。
    「しー…ここでは静かにしなきゃ駄目だよ…。」
    振り返るとそこには、いつものように気配を消して近付いてきたリムの姿があった。だが、いつもと違って口元の見える仮面を付けている。
    「院長さん!俺ら…」
    春馬がまた大きな声で喋ろうとすると、リムは口元にそっと人差し指を立てた。
    「…それで、どうしたんだい…?」
    小声で優しく聞き直すリムに少し近付いて春馬は喋り直しす。
    「俺ら、迷子になっちゃって…院長さんの部屋どこかわかんなくなっちゃった。」
    「あぁ…そういう事か。なら直接案内しよう…。それと、今の時間は“多分”居ないけどこの階は危険な実験体がいる事があるからあまり来ちゃいけないよ…。もしなにが用があってくる場合は、静かに通らないと彼らに刺激を与えてしまうから気をつけなさい。」
    そう言うと後ろを振り返り来た道を戻る。リムが振り返る時におきた風は、微かにどこかで嗅いだことのある花の香りがした。

    見慣れた景色の施設内に戻り、リムの部屋へ向かう途中、リムが突然立ち止まった。
    「1回医務室に行ってもいいかい?」
    顔全体を隠すペストマスクを付けていないせいでいつもよりはっきりと聞こえる声に一瞬どきっとしながら、春馬と叶汰は頷いた。
    「ありがとう、拓海の事が心配でね。」
    「りこさんから聞きました。毒がまだ残ってるんでしたっけ。」
    叶汰がそう聞くと黙ったまま頷いた。
    「あの子、強がりなところがあるだろう?だならみんなの前では辛くても我慢するんだ。」
    そんな話をしている間に、拓海が眠る医務室についた。
    「君たちはここで待っていてくれ。1人以上の相手から寝ているところを見られるのを嫌うんだ。」
    すまないね、と言い残し、リムは医務室に入った。

    ……………………

    「失礼するよ。」
    「あぁ。」
    医務室に入ると、拓海はベッドに横たわりながら退屈そうにスマホで動画を見ていた。ベッドの横にある椅子に腰掛ける。
    「…アイツらはいいのか。」
    「誰だい?」
    「アイツらだよ。春馬と拓海が廊下で待ってんだろ。匂いで分かんだよ。」
    「おや、さすがイn…狼だね。彼らは大丈夫だよ。ボクのワガママに付き合ってもらってるだけさ。」
    リムがそういうとフン、とまた動画を見始めた。
    「それじゃ、ボクはこの辺で失礼するよ。ちゃんと!怪我完治するまで戦いに出ちゃだめだよ。」
    「わかってるわタコ。」
    「せめてカラスにしない?」

    ……………………

    しばらくすると、リムが医務室から出てきた。
    「遅くなったね。行こうか。」
    リムが優しくニコッと笑う。そういえばリムの口を見たのは初めてだ。
    「ねーねー院長さん、今日はなんでペストマスクじゃないの?」
    「あぁこれかい?何となく変えてみただけさ。それにこの仮面だと食事がしやすいんだ。」
    「じゃあこれからはその仮面にするの?」
    「いいや、明日からはまた戻すよ。」
    お気に入りだからね。と言い、いつの間にか到着していたリムの部屋の扉を開ける。
    「さあ入って。」
    「「失礼します。」」
    リムの部屋に来るのは、初めてこの施設に来て以来だ。あの時はよく見ていなかったけど、色んな種類の仮面やマスク、少年漫画から難しそうな本、大量の記録帳や孤児たちに関する資料等様々なものが置いてあった。
    「記録帳を渡してもらうついでに、今日して欲しい仕事を伝えてもいいかい?」
    「はい!もちろんなんでもどうぞ!」
    春馬が元気に返事しながら、記録帳のページを開いて渡す。
    「ありがとう。…さて、仕事なんだけど今日は春馬君だけに頼みたい。」
    「え?どうして僕は…?」
    「叶汰くんは、昨日辛い思いをしただろう?心の調子を整えるために今日は好きなことをしなさい。妹さんたちと遊んだりね。」
    「あ…はい。」
    少し寂しそうに返事をし、叶汰は黙り込んでしまった。
    「それで、春馬君。君はもう一度学校の様子を見に行って昨日と変わった場所や見れなかった場所を見てきて欲しい。あの学校に通ってた君なら違いにすぐ気づけるはずは今までない。比較的安全なはずだ。もしもの時のためにエリフィナとシュアンも連れて行ってくれ。きっと守ってくれる。」
    「待ってください!もしまた攻撃されたらっ!」
    「エリフィナとシュアンが守ってくれると言っているだろう?ボクの愛する子供たちの事を信じられないのかい?」
    そう言われ、叶汰は再び黙り込んだ。相当春馬の事が心配なんだろう。
    「根拠はないけど大丈夫だよ叶汰!ただ見てくるだけだし、また危なそうだったら今度こそ逃げれる!まさか忘れたんじゃないだろうなぁっ俺の足の速さをっ!」
    春馬は自信に満ちた表情をしていた。それを叶汰は不安そうに見つめている。
    「なぁんだよ、そんなに心配?なるべく隠れとくからさっ!俺の心配より自分の心の傷を塞ぐことに専念してほしいなぁ〜。」
    「わ、わかったよ…ほんとに…気をつけろよ。」
    2人の様子を見て、リムはうんうんと頷いていた。
    「それじゃ、春馬君は行ける時に行きなさい。叶汰君、妹さんたちはいつも君の話をするんだ。今日はいい機会だから遊んでやってくれ。」
    「「はい!」」
    2人揃って元気の良い返事をし、各自準備に取り掛かる。春馬は正直心のどこかで不安に思っていた。だが、叶汰に心配されたくない。きっとそんな考えは叶汰には見透かされていただろう。

    準備を終え、シュアンとエリフィナが来るのを玄関で待っていると、叶汰が妹2人と母を連れて見送りに来てくれた。
    「たえ、はるまくんがいつも通りニッコリで帰ってくるの待ってるよ!」
    「えりかも!はるまくんは何にも負けないって信じてるよ!」
    「茶絵ちゃん、愛里香ちゃんありがとう!春馬くん頑張っちゃうぞ〜!」
    叶汰の妹たちと少し話しながら叶汰の方をちらりと見ると、まだ心配そうな顔をしていた。
    「叶汰!」
    春馬は突然名前を呼ぶと、叶汰すこしびくりとした。
    「んな心配そうな顔すんなって!帰ったら茶絵ちゃんたちと何して遊んだか教えてくれよ〜?」
    「う、うん…!」
    そんな話をしていると、エリフィナが嫌そうな顔をしているシュアンを引きずるように引っ張ってきた。
    「はるまお兄ちゃん!アタシたちはもういつでも行けるよ!ね!シュアンくん!」
    「………ゔぅ……。」
    本当に行けるのか…?と思いながら靴を履く。
    「そんじゃ、行ってくるわ!」
    「行ってきまーす!」
    「………。」

    行ってらっしゃい。
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