Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    しおん

    @GOMI_shion

    クソほどつまらない小説をメインに載せてます

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 62

    しおん

    ☆quiet follow

    『致命症』#06

    ##致命症

    見てる叶汰の家族達に見送られ、春馬、エリフィナ、シュアンは、先日同様休校中の学校に向かっていた。空は晴れており、太陽が出ている。そして辺りでは何匹もの蝉が、今は夏だと言うことを伝えるかのように鳴いていた。ここ数日それほど暑くない日が続いていたため、久々に感じる真夏の暑さに慣れない。夏の暑さと共に、この世界に来る前のことを思い出す。そういえばここに来る前も、ちょうど同じような一番熱いであろう昼間に、叶汰と電話をしながら走って学校に向かっていた。それから学校で誰かが飛び降り自殺したって話を聞いて…。そんなことを思い返しているうちに、学校の校門に到着していた。
    「じゃ…僕はたくみの代わりに来たから…離れすぎないくらいの…遠くに行く…。」
    そう言ってシュアンは、生きているかのように動く蔓を使って先日の拓海のように物置小屋の屋根に乗る。
    「気をつけてね〜!!」
    エリフィナが笑顔でシュアンに手を振るが、シュアンはそれに気づいていないのか無視をしているのか、振り返りもせず去ってしまった。
    「はるまお兄ちゃん!あたしたちも行こ!」
    「うん、行こっか!そういえばこれってどこまで見に行けばいいの?」
    「まずはお外をぜーんぶ見た後に、校舎の中も見るよ!それで何もなかったら帰るの!あとね、いつもなら帰った後、夜にまたお散歩しに行く人達に昼間の状況を説明するよ!でも今日は説明しなくてもいいって!」
    「夜にも来ることがあるの?」
    「あるよ!いつもはね、拓海お兄ちゃんとシュアンくんの2人が、夜のお散歩してるんだよ!」
    この世界に来たばかりの時、初めに夜の学校であの二人に会ったことを思い出した。
    「あー!なるほど!だから夜にあの二人が居たのか!」
    「え!?夜は危ないから拓海お兄ちゃんとシュアンくん以外学校に入っちゃダメなんだよ!」
    はるまお兄ちゃん入ったの!?と、少し怒ったように心配した表情を春馬に向けた。
    「入ったというか、起きたら叶汰とそこに居たんだよ。」
    「学校で寝てたの?」
    「違う違う、こっちの世界に来る時に、学校の屋上から飛び降りてさ、飛び降りたところから丁度真下の所に居たから…」
    「飛び降りた!?危ないことしないのー!!」
    エリフィナは先程より更に怒ったような表情をしていた。
    「ご、ごめん、でもそのおかげで今の俺と叶汰はフィナに会えたんだよ?」
    春馬がそう言うと、エリフィナは今まで怒っていた顔を明るい笑顔に変えた。表情がコロコロ変わる子だな。
    「そうだね!前のはるまお兄ちゃんも好きだったけど、今のはるまお兄ちゃんも大好き!だから会えてよかった!…でもなんで飛び降りようと思ったの?」
    エリフィナにそう聞かれた瞬間、あの時飛び降りた屋上から視線を感じた。屋上を見上げると一瞬、自分ではない男子生徒の姿が見えた気がした。
    「…はるまお兄ちゃん?」
    「あぁごめんごめん、なんて言ったんだっけ。」
    「なんで飛び降りようと思ったんだろうなぁって思って!」
    「それはね〜、俺らより先に飛び降りた人の遺体が見つからなかったから、もしかしたら異世界行けるんじゃね!?っていうノリ。」
    「の、ノリ…?怖いと思わなかったの?」
    「今思うとあの時の俺やばいと思う。」
    そんな話をしながら、春馬とエリフィナは学校の1番端にあるプールへと向かった。

    狭い通路から柵越しにプールを覗くと、乾いた血痕が至る所にあるのが見えた。血痕の他にも、割られたガラスの欠片や折れた刃物のようなもの、切り裂かれた形の穴が空いた、血の付いている布切れが落ちていたり、シャワーがあった場所には穴が開いていたり、プールのすぐ横にある更衣室の窓が割れていたり等と、かなりボロボロになっていた。
    「ここ…すごい荒れてるね。」
    春馬がそう言うとエリフィナはチラりとプールの方を見て、すぐ前に向き直した。
    「…ここはね、院長先生が直接戦いに来たの。」
    そう言いながらエリフィナはどこかに指さした。そこには何か黒い物体が落ちていた。
    「あれ、昔院長先生が被ってた帽子。あの時からずっとボロボロだったけど…今はもっとボロボロ…。」
    エリフィナは悲しそうに帽子だった物を見つめていた。
    「院長さんが来るほどってことは、相当やばかったんだろうね。」
    「うん、その時もあたし…何も出来なかったの…。ただ逃げるだけで…。」
    泣きそうなエリフィナの頭を、春馬はそっと撫でた。
    「ちゃんと逃げて偉いじゃん。」
    エリフィナが顔を上げると、春馬は優しく笑っていた。
    「…うん!あたし偉い!」
    「ははは!そうそう!フィナは凄いんだから、もっと自分を褒めてこー!」
    「うん!!」
    「よーし!気を取り直して次行こっか!」
    2人はボロボロになったプールを後にし、中庭やテニスコート、グラウンド周りを見回ったが特に異常はなく、先日とは違って平和に時が過ぎていった。

    校内をまわろうと中央玄関に向かうと、いつの間に居たのか、リムのように気配なくシュアンが春馬とエリフィナの背後に来ていた。
    「…ねぇ。」
    「うわぁぁ!!いつの間に居たの!?」
    春馬が驚いている横でエリフィナはくすくすと笑っている。
    「…2人を……はるまを、見てる誰かがいる…。害は無さそうだけど…気をつけて…。」
    「え?誰かってどういう…」
    聞く間も無くシュアンはまた素早くどこかへ消えて行った。さっき屋上から感じた、あの視線を送ってきた本人がどこかにいるのだろうか。
    「見た目の特徴くらい教えてくれたっていいじゃん…。」
    そうグチグチ言っていると、エリフィナはまた笑った。
    「シュアンくんはそういう子だから!仕方ない仕方ない♪」
    いつもシュアンにこういった冷たい態度を取られていて慣れているようだ。
    「う〜ん…そうかぁ…。なんかちょっと不満。」
    そう言いながら靴を脱いで校舎へ入った。

    校舎内は、通っていた時と全く変わりのない見慣れた景色をしていた。プールのように荒れている様子は無い。上の階から順番に見ていく事になり、5階まである階段を登っていく。昼間にここの階段を登るのは久しぶりだ。あの時とは違って今は体力がある為、すぐに5階に着くことが出来た。そして屋上に行くための階段には立ち入り禁止と書かれているのが目に入った。
    「あれ?屋上入れなくなったんだね。」
    「また飛び降りたかったのー?」
    エリフィナが冗談っぽく言う。
    「ちょっとぉフィナぁ〜ネタにしないでよ恥ずかしいじゃぁ〜ん!」
    「えへへぇ〜!」
    笑い合いながら5階の隅の教室から見て回る。この階は音楽室や防音室があり、音楽に関する部活の人が行き来することが多かった。音楽室にはピアノが1台と、椅子がいくつも綺麗に並んでいるだけで特に異常はない。防音室は鍵がかかっていて入る事も中を見ることも出来なかった。5階の見回りは終わり、次は4階へと向かう。4階は春馬と叶汰のクラス、2年3組がある。5階同様、隅の教室から順番に様子を見ていく。3組以外、特に変わった様子はない。3組だけが相変わらず窓が割れ、机や椅子はバラバラに散らばり、ロッカーはもう原型がないくらい歪んでおり、叶汰と春馬のロッカーだけ、この間シュアンが切り開いてくれた跡があった。
    「ここでは何があったの?」
    「ここのお話は聞いた事ない…。でも拓海お兄ちゃんとシュアンくんがここで悪い人と戦ったって聞いたよ!」
    そう言ってエリフィナは直ぐに教室を出て3階へ向かった。3階、2階、1階は全て異常は無く、変わり果ててしまったのは2年3組の教室だけだった。

    もう帰ろうと校門へ向かうと、シュアンが暑そうに帽子をうちわがわりに扇ぎながら待っていた。
    「……異常は…?」
    「「なし!!!」」
    「……帰ろ…。」
    シュアンは早足で帰りの方向に歩き始めた。それを追いつこうとエリフィナは走って行った。
    「元気だなぁ。」
    春馬は前を行く2人を少し後ろで歩きながら眺めている。
    「ねぇ、君。」
    突然男性から声をかけられた。
    「やっぱり!見間違えじゃなかった!」
    不意に掛けられた声に驚きながら振り返ると、黒いマスクを付けた紺色の髪の男性がいた。
    「えっと、誰すか?」
    春馬が問うと、男性はマスクを外して少し前髪を退け、にっこり笑う。その男性は、春馬がよく行っている猫カフェの店員だった。
    「あぁ!猫のお兄さん!こんなとこで何してんすか?」
    「よかったぁ覚えてくれてた!今出勤するとこだよ〜。そういえば頼みたい事があったんですよね。」
    そういうと男性はマスクをつけ直し、少し小さい声で言葉を続けた。
    「…“白雪りこ”っていう女の子、多分君と同じ学校の人だと思うんだけど知ってます…?」
    「え、知ってますけど…りこさんがどうしたんすか?」
    春馬がそう聞くと、男性はカバンから封筒を取り出した。
    「これ、その子に渡しといて貰えませんか?“桐野江 絢斗”って人に頼まれたって言えばあの子もすぐにわかると思います。それと…俺が猫カフェに居ることは彼女に内緒にしといてください。」
    「桐野江絢斗?」
    「あぁ、俺の名前です。」
    「じゃこれから桐野江さんって呼ぼ〜っと!あ!俺は野田春馬っす!これ渡すのは任せといてください!」
    「ありがとう春馬君!それじゃ、そろそろ行かなきゃ、店長に怒られちゃうから行ってきますね!」
    「了解です!行ってらっしゃい!」
    そう言って桐野江絢斗と名乗った男性は急いだ様子で猫カフェの方向へ去って行った。姿が見えなくなるまで見送っていると、先に進んでいたはずのシュアンが戻ってきていた。
    「…はやく……はるま、来てよ…。」
    「そーだよー!早く帰ろ〜!お腹空いたぁ〜!」
    エリフィナの声が聞こえると、シュアンは春馬の背後に隠れた。
    「もしかしてシュアンくん、フィナのこと苦手?」
    そう聞くとシュアンは無言で頷いた。
    「あの女……しつこいし声が大きい…うるさい…。」
    “あの女”と呼ぶほど苦手だそうだ。立ち止まったままの春馬を後ろから押しながらエリフィナとの間の壁になってもらおうと、前に出ようとしない。施設に帰り着くまで、春馬は二人の間の壁として使われた。

    施設前まで着くと、どこかへ遊びに行っていた様子の叶汰とその妹2人が反対の道から歩いてきた。春馬に気づいた叶汰が駆け寄って来る。
    「春馬…!大丈夫だった?」
    「超大丈夫!今日は平和だったよ〜…暑かったけど…。」
    元気そうな春馬を見て叶汰は安心しているようだった。
    「かなたお兄ちゃんは、はるまお兄ちゃんの事が大好きなんだねっ!」
    そう言われて叶汰は照れたのか顔を隠した。エリフィナ嬉しそうにその様子を見ている。
    「大好きって…そういう訳じゃ…。」
    「そうだよ!お兄ちゃんはね!はるまくん大好きなの!」
    追い討ちをかけるかのように茶絵が言う。それに続いて愛梨花も口を開く。
    「お兄ちゃんね!今日もいっぱいはるまくんのお話してたよ!」
    「た、茶絵!愛梨花!もう辞めてくれ…!」
    叶汰は真っ赤になった顔を片手で隠しながら2人を止めている。
    「…ップwwはは!隠すこと無いぞ叶汰!俺もお前大好きだぜ☆」
    「う、うるさい…!!」
    玄関の前で騒いでいると、帰ってきたことに気付いたリムが扉を開けた。
    「エリフィナ、シュアン、春馬君…と、“春馬君が大好きな叶汰くん”と茶絵ちゃん愛梨花ちゃん、おかえり!!!」
    「な…!?聞いてたんですか!?」
    「聞こえちゃったものは仕方ないよねぇ〜!?!?!さあさあ、早く入っておいで〜暑かっただろう〜?」
    そう言いながら叶汰から順に施設に入っていく。叶汰は相変わらず顔を赤くしながらボソボソ何か言っている。それを揶揄うように周りは楽しそうに笑っていた。その様子を少し離れたところで見ていたシュアンも、微かに笑っている気がした。

    ーにゃあ。

    玄関の横の低木の下から猫の声がした。
    「……猫…。」
    「シュアン!早くおいで〜!!」
    「…………うん…。」
    シュアンは猫の声がした方を見ながらリムに着いて行った。

    ………………………………

    「…おい、うさぎ。」
    医務室のベッドに寝転がりながら、拓海はムーアに声をかけた。
    「なんでしょう。」
    「夜の見回り、行っても…」
    「良い訳ないじゃないですか。安静にしててください…頼みますから。」
    食い気味に答えられたのに、珍しく反抗はしない。
    「…じゃあよ…ちょっと頼んでもいいか。」
    「何を?私は見回り出来ないですよ?戦えませんし。」
    「…ったく、ちげぇよ。」
    そう言いながら拓海は痛む身体を無理矢理起こし、ムーアの隣に座った。ムーアはその行動に困惑しているのか固まっている。
    「右腕、昨日より少し痛てぇから診てくれ。あと…。」
    何か言いかけ、黙り込んでしまった。続きが気になりムーアは耳をぴこぴこと動かしている。
    「“あと”何ですか?」
    「っはぁぁ…さすがうさぎだな。聞こえてやがったか。」
    「そういうのいいですから、早く教えてください。」
    ムーアにそう言われ、少し考えている様子を見せてから拓海は口を開いた。
    「…………今日一日、オレに時間使わせて悪かったな…その……ありがとう。」
    いつもの拓海なら言わなそうな言葉にムーアは困惑しているようだ。
    「…とっ…!突然何なんですか!?本当に…貴方という方は…!!!そういうところですよ!?これだから狼はぁぁぁあ!!!」
    「るっせぇな急に…。悪いか?言いたいこと言って。」
    拓海は珍しく照れているようだった。気恥しそうにムーアと目を合わせない。
    「べ、別に良いですけど…。はい、一応腕の処置は終わりましたので、私は休ませてもらいます。」
    「おう、またなんかあったら頼んだぞ“ムーア”。」
    「い、今なんて言いました?」
    「さあ?」
    拓海は普段しないことをすると、ムーアは面白い反応をするということに気付き面白がってるようだ。遊ばれていることを察して、ムーアは悔しそうにしている。
    「…人で遊ばないでくださいよ…!それじゃ、私は本当の本当に休ませていただきますね。それでは“拓海”、また明日。」
    「は?おまっ…!」
    言い返す隙なく、ムーアは素早く医務室から出ていってしまった。仕返しされたらいつもは腹が立つが、今回は何故か少し気分が良かった。

    ………………………………

    夕食を食べ終えた春馬は、学校から帰ってる途中に渡された封筒の事を思い出した。
    「そういえば叶汰、りこさんの部屋どこなのか聞いた?」
    「あぁ、聞いたよ。」
    「俺にも教えてくんね?りこさんに届け物したくて。」
    「届け物?じゃあ今から行った方がいいか。」
    食べ終わった食器を片付けて、朝とは違って静かな食堂を後にした。

    叶汰に案内して貰い、りこの部屋に到着した。
    「それじゃ、俺は妹たちの様子見てくるから。おやすみ。」
    「うん!ありがとー!おやすみー!!」
    りこの部屋の前で分かれ、早速扉をノックする。

    ーコンコンッ

    「はぁ〜〜〜〜〜い。」
    無駄に長い返事が扉の向こうから聞こえてきた。
    「俺っす!春馬っす!」
    「入ってもいいよ〜〜〜♪」
    扉を開けると朝飲んだ“いっぱい甘い飲み物”くらい甘い香りがした。部屋を見渡すと雲やペンギン、イルカなどのふわふわしてそうな可愛らしいぬいぐるみが沢山置いてあった。
    「りこちゃんに何か御用かなぁ〜?」
    「あ、はい!桐野江絢斗さんって人、知って…」
    「なんで?」
    先程までいつもと変わらないふわふわとした雰囲気だったりこの表情が変わった。
    「なんで、桐野江さんのこと知ってるの?」
    「え、えっと、知ってるというか、今日偶然会って…そ、そうそう、これ!その人からこれをりこさんに渡せって言われただけで、その人の事何も知らないよ!」
    「…何それ。」
    「わかんない…です。」
    普段と違ってりこからかなり圧を感じる。
    「桐野江さんは今どこに居るの?」
    「知らないです…。」
    「本当に?」
    「本当です…。」
    (やべぇ、拓海先輩より怖い…。)
    死んだような顔で無理矢理目を合わせてくる。その目は微かに発光していた。
    「じゃありこ、春馬くんのこと信じるよ〜♪お届け物、わざわざありがとね〜♪」
    突然今まで通りのりこに戻った。
    「あ、えっと、は、はい。」
    そう春馬が返事すると、微かに発光していた目の光が更に強くなった。
    「ゔぅ〜〜…おめめ光っちゃうよぉ〜…ごめんねぇ〜春馬くん〜〜りこ〜病気でおめめ光っちゃうの〜びっくりさせちゃったよねぇ〜〜…!」
    「だ、大丈夫ですか?」
    「おめめ閉じても眩しいよぉ〜〜でももう慣れっ子〜。」
    りこは“虹彩発光症”という、不定期に目が光ってしまう病を持っていた。発症する原因は不明で、光るタイミングを制御することは出来ない。そしてこの病は、光の強さが強ければ強いほど失明する可能性が高くなる。
    「今日ちょっと強いなぁ〜〜、もっと春馬くんとお話してたかったけど〜りこちゃんはムーアちゃんにヘルプミーしてくるね〜〜。」
    そう言って慌ててるようだがゆっくりと部屋から出ていった。部屋の主が居ないのにその部屋に留まるのはどうなんだ、と思い春馬もすぐに部屋から出ていった。
    (にしても…りこさんって意外と怖いんだな…。)
    そんな事を考えながら春馬は自分の部屋に帰った。

    自室につき、部屋着に着替えてすぐにベッドに寝転がる。今日からは快適に眠れそうだ。もうあの夢…姉さんが出てくる気分の悪い夢を見ることは無い。そう思って、春馬は安心して眠りについた。


    あれは…誰?

    神社のような景色、鳥居の真ん中に狐の尻尾と耳の生えた、同い年くらいの少年が背中を向けて立っている。

    その少年は独りで、寂しそうに境内を眺めている。


    『誰?』

    確かにこちらを向いてそう言った。その少年から向けられた視線は、今日屋上から感じた視線と似ていた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💒💒❤💖💒❤☺🙏☺👏💗💴
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works