尾杉「セレブじゃん……」
杉元は初めて入るオートロックのマンションに思わずポカンと口を開く。今日は親がいないから1人なんだ。と同じ中学のクラスメイトで友人の尾形の呟きに思わず絆された金曜日の夜、杉元は尾形の自宅である高層マンションへとやって来た。
ごく平均的な日本家屋の平屋に住んでいる杉元には所謂タワーマンションの部屋は新鮮だった。
「お前、金持ちなの!?」
「……俺が金持ちな訳じゃない」
「や、まーそうだけど」
だだっ広い廊下を抜けると自分の四畳半とは比べ物にならない尾形の部屋にこれまた目を輝かせながら辺りを見回す、尾形は普段と変わらぬ表情の見えない顔で杉元を見つめていた。
「……食いたい物、ある?」
「あ、晩飯?俺なんでも食えるけど…」
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