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    wonka

    とりあえずマシュおいとく用
    ステ新規/アベとアビ左右不問

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    wonka

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    アビスくんのお誕生日がわかった記念日

    7月5日

    「アビス、君の誕生日はいつ」
    「誕生日、ですか。7月の5日だったかと」
    自身の生まれた日を告げるには不審な答えにアベルは少し訝しむ。
    「それは君の、誕生日だよな」
    問い直すとアビスは少々気まずそうに答えた。
    「え、あ、はい。そうです……すみません、誕生日というものにあまり馴染みがなくて」

    アビスの言葉を咀嚼しなるほどな、と思う。普通の幼少期を送ってこなかったということは通常子供のうちに経験する経験が乏しいもしくは皆無ということだ。そういった経験と共に自覚していく『誕生日』というものに馴染みがないもの頷ける。

    「今年のその日、何か予定は?」
    「いえ、ありませんが」
    きょとんとした、という表現が似合う顔でアビスは答えた。先約がないことに肩を撫で下ろす。
    「そのまま空けておいてくれないか」
    「はい、大丈夫ですが、何か……」
    先程から頭上に疑問符を浮かべたようなアビスは未だに意図がわからないと言った顔をしていた。
    「つかぬことを聞くけれど今までの7月5日はどう過ごしていた」
    「いえ、特になにも……他の日変わらずですよ」
    「家族に祝われたことは」
    あ、とアビスは小さく声を漏らした。
    「私の記憶のなかではないですね。この目が発現したのは物心ついた頃ですし、生まれてこなければと思ってしまった子のその日を呪うことはあれど祝うものでもなかったでしょうし」
    アベルの質問の意図を幾分理解したようなアビスはそれでも淡々と悲壮感を滲ませることもなく答えた。それが逆にアベルにとっては少し悲しかった。
    「そうか……」
    「アベル様?」
    黙ってしまったアベルを心配するようにアビスは顔を覗き込む。逡巡のうちアベルは口を開いた。
    「君と恋人になってはじめての誕生日だ。二人で過ごしたいと思っていたけれどその前に七魔牙の皆でお祝いをしようか」
    「えっ、いやそんなことをして頂くことは」
    「いや、君が生まれてきたことは祝われるべきことだよ。それを君に知ってほしい」
    そう言いながらも大袈裟だろうか、と思ったけれどアベルにとってアビスと出逢えたことは何よりの僥倖であることは間違いない。それに畏怖の対象である悪魔の目を持っているにも関わらずアビスを慕う者は多くいる。今まで一度もその生を受けたことを祝われたことがないというアビスに身を持ってその価値を知ってほしいと思ってしまった。
    「嫌、だろうか……」
    自身の気持ちだけで押し切ろうとしてしまったが、目の前で戸惑うアビスの様子にいつもの謙遜ではなく本当に拒絶であったら、と少し不安になる。あれだけ母に相手の気持ちを考えるよう言われたのに。
    「いえ、嬉しいです」
    ぽつりとアビスからこぼれた返答にアベルは心から安堵した。なんだか恥ずかしいですね、とはにかむアビスに今からどんな祝いを用意しようかとアベルは考えを巡らせる。

    望まれぬ生だと彼自身が思って過ごしてきた今までの分、これからたくさん君が生まれてきてくれたことに祝福と感謝を贈ろう。
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    wonka

    PROGRESS
    「[[rb:悪魔の目 > イヴルアイ]]」
    「あ……」
    咄嗟にアビスはすでに包帯で隠れているのにも関わらず左目を隠すように手で覆って俯いた。
    「すみません。包帯は基本的に解きません。目を直接合わせなければその、効果はないはずなので」
    今日からルームメイトになるその相手の顔をろくに見ないまま焦るあまり捲し立てる。
    「気になるなら私出て行きますので……」
    「まだ何も言ってねえよ」
    今までのルームメイトとのことを思い出して先回りしてそう告げたアビスにワースはそう返した。
    「あの人が決めた部屋割りだ。よっぽどのことがない限りは別に変えてもらう気はない」
    そういって自分のスペースに帰っていくワースの背をアビスはただ見送った。今までのルームメイト達は大抵そのまま荷物を持って出て行って帰って来なかった。自分が出て行くべきなのにその交渉を打診されるまでもなく去って行った彼らにいつも申し訳なさだけが残っていた。この人は出て行かないのだ、と漠然と思った。出て行けとも言われない。このままこの部屋にいていいのだろうか。元々大した私物もない。出て行くことになればすぐにそうできるようにアビスは荷物を広げることもなくベッドの隅に体を横たえた。今回はいつまで持つんだろうと今までのように相部屋が解消されるまでのことを漠然と考えていた。
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