裏社会パロ1この世界には、表と裏がある。
殆どの人間は表に生まれ、表に生き、表に死んで行く。
しかしヒトならざるものは?その殆どに入れなかった者は?
これはそんな、表側から弾かれた、何処か不思議な者たちの御噺。
静かな裏路地。
学校から帰る途中の、剣持刀也はひとりため息を吐いた。
そしてくるりと振り返り、一言。
「…隠れてないで出てきたら如何です?」
何も無いように見える、その空間に声を投げた。
反響した声はアスファルトを転がり、コンクリートの壁に跳ね返る。
跳ね返った先にいたのはーーー柔和な笑みを携えた、天使の様にふわりとした青年。
「ありゃ、バレてたの?バレてないと思ってたんだけどなあ〜…」
「とか言って、隠れる気ほぼ無かったじゃあ無いですか。…叶さん。」
名を呼べば、彼は目を細めてその笑みを深めた。
叶。刀也はあまり自覚が無いが、彼はどうも自分を悪い道に引き摺り込もうとしているらしい。
一度『何で追いかけて来るんです』と聞いた所、『君にはソシツ?があるからさあ』といつも通りの笑顔で返された。
因みに刀也は唯の高校生だ。普通に高校に通い、友人もおり、家族仲も至って良好。剣道部である事以外これと言って特出すべき点は無い筈の極々普通の男子高校生。
その自分が何故彼に目を付けられたのかは解らない。友人と共にスタバでフラペチーノを飲んでいただけだったのだが、ある日突然彼に声を掛けられた。
『僕は叶。これから君のストーカーになります。君は気にせず日常生活を送ってて良いよ。』と言われた時は何だコイツ新手の変態か??と思ったが、視界に入る度入る度質問を繰り返して入ればどうも目当ては自分の顔では無いらしい。
曰く『君もワルにならないか?』と。上弦の参かよ。刀也はサブカル好きだった。
そうなってくるといよいよ不味いと考えるのが普通なのだろうが、どうもその時の自分はそう思わなかったらしい。
スッキリサッパリ『お断りします』と言った時から、叶は以前より楽しそうに自分を追いかけている。何故だ。解せぬ。
そんなこんなで彼は諦める事なく今日も自分のストーカーに励んでいる。
にこにこと笑みを浮かべるばかりの彼を一瞥し、刀也は帰路を急ぐのだった。
葛葉は困っていた。
最近相方が高校生の男の子に御執心で、いつまで経っても本業に戻らない。
まあそこまでは許そう。ウチはホワイトでアットホームな職場だ。お好きにやんなさい。
しかしその高校生をコチラに引き込もうとしてるとなりゃあ話は別だ。
葛葉と叶は所謂"裏"に住んでいる。
キマってない奴の方が少ない無法地帯の、比較的会話が成立しやすいエリア。
そこのまあ…会話が出来る奴を集めて、自警団的なモノを作って暮らしている。
出不精の元ホワイトハッカーに異世界から来たと言うヘンテコな3人組、キツネだか人間だかよく分からない大学生と表で名を馳せるNo.1ホスト。
その他にも悪魔だの獄卒だのとにかく何でもかんでもぶち込まれた闇鍋集団。
葛葉と叶はその一員だった。
その高校生はきっと普通に平和に生きてきた甘ちゃんだ。わざわざ死体を増やす意味なんざ何処の世界にもありゃしないだろう。
『そう言うところがお前は優しいね』と笑われるのが目に見えているので言いはしないが。
それにしても本当に気に入ってるな…仕事しろや…俺はせんけども…
「……あ。」
イヤホンを片耳に挿し、スマホをいじっていた叶がふと声を上げた。
「?どしたん?」
「…刀也さんがふわっちに捕まっとる…」
「はぁ????何で??」
「知らんけど、もしや僕をぶちのめしにとか?」
「草。行ってやれよ、その…トーヤサン?が黛に気付かれる前に」
「せやねえ、こっちに引き込む前に死なれるの嫌やし。よーし、いくぞお葛葉!」
「は??俺は行かんが???」
「いくぞお〜」
「ちょ、おま、お前!!??」
ズルズルと引き摺られてpcが遠くなる。
最悪だ。巻き込まれたく無いのに。
ところでお前、真逆とは思うが盗聴か?
何で場所わかるん?と聞けば、『ワハハ』と誤魔化された。
GPSかな。葛葉はケンモチトーヤ=サンに十字を切った。
登場人物
剣持刀也
地元の高校に通う高校2年生。
好きなものはロリといちごとプリン。
剣道部に所属している。
最近付き纏ってくるストーカーとこの間ゲーセンに行った。負けた。
叶
何かを知っていそうな青年。
裏の自警団のような組織に所属している。
ここにくるまでの記憶が無いらしいが、普通に昔の話もするのでそうでもなさそう。
不破湊
被害者。
表ではno.1ホスト。
組織のハッカーに若干執着されているらしい。
最近とある大学生と仲良くなった。
葛葉
叶の相棒の吸血鬼。
何かを知っていそう。
最近表の女の子と仲良くなった。
元は良いとこの坊ちゃん。