裏社会パロ3三枝明那。
彼はごくごく普通の夢見る大学生である。
成績もそこそこ、特別モテる訳でも友達が沢山居るとかでもない、本当に普通の。
特出するなら歌が上手いことぐらいだろうが、それでもプロには及ばない。
そんな彼がバチクソに顔の良いホストのお兄さんと知り合ったのは、それこそ奇跡だっただろう。
明那が湊に出会ったのは、あるくだらないいつも通りの日常が終わりそうな真夜中だった。
明那が住んでいるアパートは、あまり大声を出すと隣から元祖壁ドンが飛んでくるタイプのアパートだ。
だから大学が終わってから数時間は、人の通らない路地で歌の練習をするのが明那のルーティンだった。
いつもの様にいつもの場所へ行った明那は、そこで目をまァるくした。
大変顔のよろしい青年が、仰向けにぶっ倒れていたのである。
マジでびっくりした。多分心臓がアホな動きをした。
『エ゜!!!????』と奇声を上げたが、大声で歌ってもクレームのひとつすら無いこの場所で声に気付くヤツなぞ一人もいない。強いて言ってもその辺を蠢いている虫ぐらいだ。
馬鹿デケェ声をあげても起きる気配のないお兄さんに、明那はそっと近寄る。
呼吸を確認したところ安定はしているので恐らく大丈夫だとは思うが、それにしたって寝心地が悪そうだ。
ちょっと悩んで頬をペちぺち叩いてみる。が、何の反応もない。
うーむ。どうしたもんかしら。
家に連れ帰ろうにも男性にしては華奢めな明那では持ち上げられないし、かと言って放置して死なれても寝覚めが悪い。
悩みに悩んで空が暗ァくなって、それでも起きないのでとりあえずいつも通り歌の練習をすることにした。
だってどうにもできんし。しゃーない。
今練習しているのは、好きなアーティストのバラード。
静かな曲調とは裏腹に、世界への不満をぶちまけるような、強い曲。
自分もこうなりたいだとか、そういうお綺麗な理由じゃないけれど。
でも何だか雰囲気が好きで、自分でも歌いたくなった。
スマホから音源を流して、自分の声に負けないようにイヤホンで音量を最大にしてイントロを聞く。
Aメロと同時に吸った息を盛大に吐いて、兎に角腹から声を出す。
バラードだからとか、そんなことは考えない。
ただただ気持ちよく、好きなように。
朗々と歌って、一回目のサビを終えて息を吐いた。瞬間。
「上手いね、お兄さん。」
あはは。
さっきまでグッッッッッスリ寝ていらっしゃった大変顔の宜しい男が、後ろで拍手をしていた。
「………ヒョ……」
死んだ。
羞恥とかその他で死んだ。
起きてたなら起きたと言ってくれ。まあ言われた時点で死んだけど。
一周回って冷静になった明那は、取り敢えず間奏の終わってしまった曲を切った。
ブツンと音を立てて消えた伴奏の音源は、コンクリートのクソ狭い道に反響して散る。
「…いつから」
「Aメロで目ぇ醒めた。お兄さん歌上手いね、名前なんて言うん?」
つまり最初からじゃねえか。
ニッコニコ笑顔でシンプルに名前を訊いて来た男に、『…明那…』と後退りしながら呟く。
さっき迄は寝こけていたからわからなかったが、随分不思議な目をした人だ。
二つの色が混ざったようなピンクっぽい瞳。
燻んだブルーグレーの様な明那の目とは対局みたいなモノだ。
キラキラした銀の髪に二色のメッシュ。
高そうなスーツは皺がついてしまっているけど、それでも上等なのが伺える。
何かこう…夜の人感が溢れていらっしゃるな。
「ふーん、アキナ…じゃあアッキーナやね!」
「なんでそんな急に…別に良いですけど…」
「良いんやww…なあアッキーナ。」
太陽のような笑顔をうっそりとした微笑みに変えた男は、そのまま片手をスッと差し出した。
「友達にならん?」
「…は???」
三枝明那
巻き込まれただけの一般通過ショタコン。
このあと普通に仲良くなるし『まゆゆ』サンがやばいことを知る。
不破湊
やばい自覚が無いホスト。
アッキーナの話をするとまゆの機嫌がいい事に気づいた。