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    KAYASHIMA

    @KAYASHIMA0002

    🌈🕒ENのL所属💜右小説置き場。
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    KAYASHIMA

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    8/28sh右 Web only/闇の帳が明ける頃
    展示しておりました作品です。
    ⚠マフィアボス💛と呪術良家の息女💜♀の話。💛の部下視点です。

    #lucashu

    【lucashu♀】このお見合いは運命です。

    カネシロファミリーの次期ボスを継ぐことが決定した、ルカさまは表社会に連れ歩くだけの「お飾りの妻」を娶ること、に首を縦に振ることはなかった。けれど、逃れられず「彼女とだけは会いなさい」と母君に強くいわれ、ジャパニーズスタイルの料亭に引っ張られ今に至る。ボディガードとして座敷の隅に、互いの右腕たる人物が控えていて、先方は未だ姿を見せない。居心地悪そうに、というよりも威厳を保とうと眉間に皺を寄せたルカさまは、恵まれた体躯を丸めて胡座をかいて頬杖をついていた。
    「ルカさま、行儀が」
    「平気だよ、こっち見る気配もない」
    多分、向こうも無理やりお見合いさせられるんだ。と唇を尖らせてルカさまは、目配せした先の目を閉じたまま動かない女性を観察して囁いた。高く結われたポニーテールに、紫が散る漆のように艶やかな黒髪を持つ、目鼻立ちの整った相貌に、淡い藤色の着物に、墨色の袴を着こなした女性だった。街を歩けば男女問わず振り向く美人だろう。その人が、赤いラインを引いた双眸を開いた。
    「(あ)」
    そこでようやく彼女が「誰か」を理解して、ルカさまへ耳打ちをする前に鈴なる凛とした声が響いた。
    「そうですね、私もそうです。貴方と同じ、無理やりここに連れられました」
    奇遇ですね、とロイヤルパープルの瞳を細めて微笑んだ彼女こそ、闇ノの御息女で、ルカさまのお見合い相手だった。カネシロが表にも裏にも言わずと名の知れたマフィアファミリーなら、闇ノは裏社会でその名を知らないものはいない、影の一族と呼ばれている。陰陽道に通ずる、妖術一族だと。噂で耳にした、次代の闇ノを継ぐものは逸材で、その力は誰もが欲しがるほどだと。ルカさまは、突然口を開いた、今まで気配さえ存在感さえなかった彼女の圧に、瞬いてそして赤面した。じわじわと、熱が頬を染めて、邪悪で恐ろしいボスは赤面していた。ルカさまの気持ちは分からなくもない。だって口こそ挟めないけれど、彼女は美しいの一言に尽きた。凛と立つ一輪の話のように、涼やかな勝気な双眸が、穏やかそうな口元から出る言葉の棘も含めて。きっと、ルカさまには刺さってしまっている。立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花。というジャパンにある美人を表わす言葉があるが、まさにそれだ。す、と音なく立ち上がった彼女は、長い黒髪を揺らして畳をすり足で滑り、袴を折ってルカさまの対面に腰を下ろした。伸びた背筋、つよい瞳がずっと、ルカさまを見ている。近づいた彼女に、ハッと我に返った我がボスはようやく威厳を取り戻したのか、肩を開いて背を伸ばし、胡座をかいた膝に拳を乗せた。咳払いをひとつ挟んで、目の前の女性を見据えた双眸は、曇りない真っ直ぐな藤色の瞳。それがルカさまに人が集まる所以だった。太陽のような、眩しさを放つ瞳。その双眸に、彼女が初めて瞬いて、そして薄く微笑んだ。
    「お互い、不自由ですね」
    「ああ、そう、だな」
    気まずい空気、が流れていると思った。けれど次の瞬間、空気が弾けたようにふたりは声を合わせて笑い始めた。
    「ん、ふふふ」
    「あははは!」
    何がなにやらと交互に、失礼にならないように視線を左右に振っても全く分からなかった。けれど、ふたりには何か「分かった」らしい。しばし笑いあって、涙まで拭う彼女がようやく小さな咳払いを挟んで笑みの残る声で、
    「初めまして。失礼をお許しください。私、闇ノシュウと申します」
    身を引いて、うつくしい所作での座礼にルカさまは不格好に頭を下げた。
    「カネシロの、次期ボスを継ぐルカだ」

    ❈以上回想❈

    衝撃的な出会いから数ヶ月。ボスはシュウさんとの交流を続けていた。あんなにお見合いは不要だといっていたのに、本人は無自覚だけれど完全に、シュウさんに一目惚れしてしまっている。恋愛初心者のEVIL MAFIA。ファミリーにからかわれるように密かにそう呼ばれていることにも気づいていない。まるでティーンのように、頬杖を付いて窓の外をぼんやり眺めたり、チャットでやり取りをする中で知った彼女の好きな花を何度か買ってきては、渡されることなく部屋の花瓶に活けられたままになったり。表向きは流したことになったお見合い、となっているらしいが、ルカさまの母君は縁談を破棄をしていない。つまり、有効のままふたりは逢瀬を重ねていることになる(ことをルカさまは知らない)。幾度目かのデート(というとルカさまはデートじゃない!と声を上げて真っ赤になりながら否定するのがおかしくてやめられない)前夜。
    「なあ、これでいいかな」
    「いいんじゃないでしょうか。というかあなたはセンスがあるので我々に聞かずとも」
    「だ、けどさ……ほら、ダサかったらメンツがさ!お前たちもイヤだろ?は?」
    慌てたような我がボスに、夜な夜な明日のデートファッション会議に付き合わされて寝不足な我々と、朝からジョギングをこなして爽やかな風を感じるほど晴れやかなボス。ブルーに鮮やかな夏の花をあしらったシャツに浅い色のジーンズ。開いた胸元にサングラスを差して、逞しい胸筋に入る墨さえアクセサリーに変える。どこからどうみても、ハンサム以外の何物でもないボスが愛車に乗り込んだのを見送って、昨晩へまき戻る。



    「ねえ、聞いていいかな 」
    スピーカーから聞こえる微かな声は我がボスの意中の花、シュウさんである(これがバレたらきっと、命はないかもしれない)。ボスのファッションショーを他の部下に任せて、レストルームに引き込もって連絡をときおり寄越してくる彼女の話し相手をしている。
    「なんでしょう」
    「あのね、ルカってその……どういう服装が好きなのかな、私、あんまりオシャレに興味がなくて着物ばかりで」
    という相談を受け始めてはや数ヶ月である。素材の良い美人なのに、私服に頓着がなく、身内から泣く泣く着物をといわれるほど、ファッションに興味がないて聞いた日には座った便座からひっくり返りそうになった。ルカさまと「友だち」となってから、ボスが驚くほどオシャレだったからと、目が合った自分を掴まえて「連絡先を教えてくれない?」と言われた日を忘れない。
    とはいえ、ルカさまの好み、は我々も手探りで、シュウさんにはとにかくデートのたびに(デートというと本当に分かっていないような顔で首をかしげられる)、「服装の好み」を聞いてみては?と進言したとおり、シュウさんは真面目なのか日に日に磨かれていった。
    「明日、ルカはどんな感じ?夏だからアロハとか着てそう」
    からからと、初対面のキツさがまるで幻だったように喉を鳴らして笑うシュウさん。ニアピンですと伝えると、「柄シャツかあ。うん、似合いそうですね」
    くすくすと、愛らしいと呼べるほど密やかに笑ったシュウさんを、今すぐルカさまに見せたいのに、と歯がゆさに身悶えながら、明日ボスが纏めそうな服装を伝えて通話を切った。



    弛んだ顔で居眠りをするルカさまの手に握られたスマートフォンの画面が、チラリと視界に入って、思わずにやけてしまった。きっと先日のデートだ。
    白いタートルネックのノースリーブニットに、藤色のストールを肩にかけて、黒のナロースカートがシュウさんのスタイルの良さを際立たせていた。どこでお願いしたのか、人の手で撮られたピクチャだった。
    海の見えるカフェでもいったのだろうか。ウッドデッキに海を背景に、お互いに何がおかしかったのか、顔をくしゃくしゃにして、肩を腰を抱き合って笑っているワンシーンだった。あまりにお似合いな、カップルにしか見えなかったので。
    「(早く付き合わないかなあ。いや、早く結婚しないだろうか)」
    と、心底思うばかりの、毎日である。



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    Replies from the creator

    KAYASHIMA

    DONEIsアンソロに寄稿しましたお話です〜。
    第2弾もまたあるぞ!楽しみだ〜。
    【💛💜】衛星はホシに落ちた『衛星はホシに落ちた』







     僕は恋を知っている。
     僕は自覚も知っている。
    「恋を、自覚したから」、知っている。
     ルカという男に恋をしてから、僕は彼の周りをつかず離れられず周回する軌道衛星になった。決して自分から、形を保ったまま離れられないけれど、ルカの持って生まれた引力には逆らえずに接近してしまう、どうしようもない人工物。それが今の僕。近づきすぎたところで大きなルカには傷一つ付けられないで、きっと刹那的に瞬く塵になるソレ。そんなことは望んでいないし、そもそも自覚したところで、ルカという数多に愛される男を自分のモノにしたいなんて、勇気もない。それに、そうしたいとも思わなかった。百人のうち、きっと九十人がルカを愛するだろう。僕には自信があった。そのくらい、魅力に溢れている。だから、誰かのものになるのはもったいないと、本気で考えてしまったから。まあ、どう動けばいいのか分からなかった、ってのも、あるんだけれど。何を隠そう、右も左も分からない、僕の初恋だった。心地のいい存在。気負いしなくていいし、持ち上げなくてもいい。危なっかしいのに頼りになる。幾千の星に埋もれない。ルカは僕にとって一等星だった。
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