厨房令嬢と強面旦那様(おまけ)「マジか……」
ブラッドリーは隣ですやすや寝ているネロにため息を吐いた。
気配には敏感なたちだ。隣の部屋でバタバタ音がして、何事かと飛び起きた。別に起こされたことに不服はない。ないのだが……。思わずブラッドリーは苦い表情を浮かべた。つい先ほどの会話が思い出される。
『襲われても文句言うなよ?』
『言いません』
ネロはそう言い、ブラッドリーの胸元に丸まった。
はっきり言って、そういう意味なのだろうと解釈した。だがこっちを見ないな、などと様子を見ていたらこの有様だ。ブラッドリーは何度目かのため息を吐いて、ネロの髪を撫でた。奥様は気持ちよさそうに眠っている。
料理の腕前は言わずもがなだが、気が利くところ、意外にも胆っ玉が座っているところなんかをブラッドリーは気に入っている。自分に自信がないところはたまに傷だが。
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