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    zo_ka_

    @zo_ka_
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    zo_ka_

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    大いなる厄災との戦いで石になったはずのネロが、フォル学世界のネロの中に魂だけ飛んでしまう話1

    #ブラネロ
    branello
    #小説
    novel

    俺は確かに見た。厄災を押し返して世界を守った瞬間を。多分そう。多分そうなんだ。
     だけど俺は全て遠かった。
     ああ。多分、石になるんだ。
    『ネロ!』
    『石になんてさせない』
     ぼんやり聞こえてくる声。クロエと、後は、ああ……。
    『しっかりしろ、ネロ!』
     ブラッド。
    『スイスピシーボ・ヴォイティンゴーク』
    『アドノポテンスム!』
     はは、元気でな、ブラッド。早く自由になれると良いな。囚人って身分からも、俺からも。
    『ネロ……‼‼』
    「……」

    「なあ、ブラッド」
    「何だよネロ」
    「今日の晩飯失敗したかもしんねぇ」
    「は? お前が?」
    「なんか今日調子がおかしくてよ。うまく言えねぇんだけど、感覚が鈍いような……」
    「風邪か?」
    「うーん」
     おかしい。俺は夢でも見てるんだろうか。ラフすぎる服を来たブラッドがいる。それに、若い。俺の知ってるブラッドより見た目が若い。傷だって少ない。
     何より俺の声がする。喋ってなんてないのになんでだ?
    「ちょっと味見させてくれよ」
    「ああ、頼む」
     体の感覚はない。ただ見ているだけだ。
     若いブラッドが目の前の見たことのないキッチンで、見たことのない料理を味見する。
    「んー、美味い」
    「そうか?」
    「気にしすぎだろ」
    「なら良いけどよ……」
     若いブラッドが俺の方を見る。正確には俺には見えない俺。
    「具合は悪そうだな。今日は早めに寝とけ」
    「……そうする」
     視界が動く。頷いたんだろうな。
     体の感覚はないのに、意識だけがはっきりしている。もしかしてこれが石になった後の世界?
     賢者さんはそういうのがあるって言ってたけど、俺はあんまり信じてなかった。
     でも、悪くないかもしれない。少なくとも平和そうなブラッドを見ていられるのが良い。
     ここがどんな世界なのか分からないなりに、俺は穏やかな気持だった。
     この世界では何もできないけれど、見てるだけってのも良いのかもしれないな。楽だ。どうせ石になっちまったんだし、心配することなんてなんもねぇよな。
     ああ、でも、俺が生きていた世界のブラッドはどうなっただろう。厄災は世界を滅ぼさなかった。少しは恩赦が増えただろう。
     あいつとどうなりたかったのか分かんねぇ。だけど、そうだな……、間違いなく好きだった。
     だから、幸せになって欲しかったと思う。長く生きて欲しかったと思う。
     石になったからこそ素直に思えることだ。
    「なあ」
     誰もいない部屋。真っ暗な視界。俺じゃない俺の声が響く。
    「俺の中、誰かいるのか」
     もしかして、俺のことか?意思疎通できないか試してる?
     俺はもとの体を思い出して声を出そうとした。
    『あんたは誰だ』
     声が出た。俺じゃない俺は驚いた気配を見せる。
    「声が、俺だ……」
     俺も驚いた。声を出せば意思疎通ができるし、俺じゃない俺の感情は伝わってくる。
    『俺はネロ・ターナー。料理人で賢者の魔法使いだ。あんた、声がやけに似てるが何者だ?』
     しばらく動揺する感情が流れ込んできた。その後で、ようやく口を開いた。
    「俺も、ネロ・ターナー。フォールモント学園の2年生」
    『同じ名前?』
    「なあ、あんたは魔法使いなのか?」
    『ああ』
    「魔法で違う世界の俺の中に入って来たのか?そういう感じの本読んだことあるけどよ、まさかそうじゃないよな」
     違ってくれ。そう思ってるみたいだった。
    『俺も分かんねぇ。石になったと思ったら、あんたの中にいたんだ』
    「石?」
    『死んだってことさ』
     その途端、居心地の悪い空気が流れ込んでくる。
     まあそうだよな。死霊が自分の中に入ってたら俺だって気味が悪い。気持ちが分からないわけじゃねぇ。
    「なんで、死んだんだ?」
     しばらくして、声が響く。
    『俺たち賢者の魔法使いは大いなる厄災から世界を守る。その過程で大怪我してさ。意識が無くなって終わりだと思ったのに、気がついたらあんたの中で知らない世界に生きてるブラッドを見てた』
    「……ついていけねぇ」
    『はは、だろうな』
    「頭の中に、こうやって声が響くのも変な感じだ。でも、不思議と馴染むんだよな」
     ため息が聞こえた。
     不思議と馴染むって感覚は俺も分かる。
    「その、賢者の魔法使いってなんだ?」
     そう聞かれて、俺にとって当たり前だった世界の話をした。
     大いなる厄災、異世界からくる賢者、魔法舎での生活、魔法使いにとっての当たり前をいくつか。
     たまに質問されながら話していく。
    「マジであんたは死んだのかな」
    『そうだろ? だからこうやって魂だけになったんじゃねぇかな。まあ、魂が砕けても生きてたやついるけど』
    「魂が砕けた?」
     俺がムルの説明をしてやる。そこまで詳しいわけじゃねぇけど、俺じゃない俺はこの話も興味深そうに聞いていた。
     そして、少し考え込んでいる気配。
    「だったら、あんたも似たようなものかもしれない」
    『は?』
    「その、ムルと。魂だけ異世界に来たってことはないか?」
    『まさか』
    「でも、その方が俺は嬉しい。違う世界の俺でも、死んでるってちょっと嫌だし」
     そこが本音だろう。
     こうやって話している間にこいつとはだいぶ打ち解けた気がする。だからか、思っていそうなことがなんとなく分かる。
    「まあ、でもあんたのことは俺だけの秘密だな」
    『あー、誰かに喋っても変な目で見られるだろうしな』
     そうそう、とかすかに笑う気配。
    「ネロ、誰としゃべってんだ?」
     この世界のブラッドの声が響く。
     俺と俺なない俺の間の穏やかな空気が、凍った。
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    zo_ka_

    REHABILI大いなる厄災との戦いで石になったはずのネロが、フォル学世界のネロの中に魂だけ飛んでしまう話1俺は確かに見た。厄災を押し返して世界を守った瞬間を。多分そう。多分そうなんだ。
     だけど俺は全て遠かった。
     ああ。多分、石になるんだ。
    『ネロ!』
    『石になんてさせない』
     ぼんやり聞こえてくる声。クロエと、後は、ああ……。
    『しっかりしろ、ネロ!』
     ブラッド。
    『スイスピシーボ・ヴォイティンゴーク』
    『アドノポテンスム!』
     はは、元気でな、ブラッド。早く自由になれると良いな。囚人って身分からも、俺からも。
    『ネロ……‼‼』
    「……」

    「なあ、ブラッド」
    「何だよネロ」
    「今日の晩飯失敗したかもしんねぇ」
    「は? お前が?」
    「なんか今日調子がおかしくてよ。うまく言えねぇんだけど、感覚が鈍いような……」
    「風邪か?」
    「うーん」
     おかしい。俺は夢でも見てるんだろうか。ラフすぎる服を来たブラッドがいる。それに、若い。俺の知ってるブラッドより見た目が若い。傷だって少ない。
     何より俺の声がする。喋ってなんてないのになんでだ?
    「ちょっと味見させてくれよ」
    「ああ、頼む」
     体の感覚はない。ただ見ているだけだ。
     若いブラッドが目の前の見たことのないキッチンで、見たことのない料理を 2283

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    cross_bluesky

    DONEエアスケブひとつめ。
    いただいたお題は「買い出しデートする二人」です。
    リクエストありがとうございました!
    中央の市場は常に活気に満ちている。東西南北様々な国から商人たちが集まるのもあって、普段ならばあまり見かけることのないような食材も多いらしい。だからこそ、地元の人々から宮廷料理人まで多種多様な人々が集うという。
     ちなみにこれらは完全に受け売りだ。ブラッドリーはずっしりと重い袋を抱えたまま、急に駆け出した同行者のあとを小走りで追った。
     今日のブラッドリーに課された使命は荷物持ちだ。刑期を縮めるための奉仕活動でもなんでもない。人混みの間を縫いながら、目を離せば何処かに行ってしまう同行者を魔法も使わずに追いかけるのは正直一苦労だ。
    「色艶も重さも良い……! これ、本当にこの値段でいいのか?」
    「構わねえよ。それに目ぇつけるとは、兄ちゃんなかなかの目利きだな。なかなか入ってこねえモンだから上手く調理してやってくれよ?」
     ようやく見つけた同行者は、からからと明朗に笑う店主から何か、恐らく食材を受け取っている。ブラッドリーがため息をつきながら近づくと、青灰色の髪がなびいてこちらを振り返った。
    「ちょうどよかった、ブラッド。これまだそっちに入るか?」
    「おまえなあ……まあ入らなくはねえけどよ。せ 1769

    フルヤヒロキ

    DONE小話
    ニルとイヌミのハロウィン2018
    乾御山神社で神様を続けて千数百年。神様として畏れられたのは十数年だけだった。その後は神業を持ってしても、素が狸だと知られると軽蔑の目で見られている方が多かった。寧ろ今もそうだ。
    正直大きな事はなかった気がする。俺がいる理由はわかるが、俺が必要だった試しはない。ある意味街角のAEDのような存在でAEDほど活躍もできてない。地域に根付いてる心霊は結構いると聞いて、何年間か試したことはあったがいずれも不器用すぎて断念した。
    ともかく人間だろうが神様だろうが不得手はなんだって不得手なのだ。そう思い悩むことも辞めて、器用さが上がればいいなとおまじない程度にリズムゲームを楽しんでいる。ゲームの進化はすさまじい。車とかもすごいって思ったが、今ではこんなハイポリキャラが同時に歌って踊ってもラグらないんだからすごい。とにかくここでハイスコアを出せれば10連が引けるんだ。何度かフルコンボ出来てるが評価が足りずハイスコアには至っていない。さっきからなんだかドアが引っかかれているようだ。無課金勢にはきついイベントだああああ
    襖の障子部分からズボーと漫画みたいな音をたてて一対の腕が生えた。なんとなく気づいていた 1333